コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『恭香ちゃんだって、あなたが御曹司だから近寄ってるんですよ。女なんて、みんなそうなのに…そんなこともわからないんですね』
違う…
恭香は違う。
声をかけて、無理矢理引っ張ってるのは俺の方なんだ…
なのに、なんだ…この不安な気持ちは。
恭香は、俺が御曹司だから…
いや、冷静になれ。
あいつは…山本さんとは違う。
恭香は、素直で優しくて笑顔が素敵な可愛い女性だ…
お金目当てなわけない。
俺は、不本意にも少しの不安を抱えてしまった。
それでも、仕事に手は抜けない。
クライアントとの打ち合わせが始まり、俺も山本さんも完全仕事モードに入った。
今後の予定やCMなどの内容について、細かな調整が進んだ。
上手くまとまりそうだ…
クライアント先を出て、会社に戻って、チームとミーティング。
温泉地への下見については、俺と一弥君で行くことになった。
実際にCMに出てもらう旅館を予約して、1泊することにした。
会社に戻って、俺は一弥君に声をかけた。
『一弥君、ちょっといいかな』
『何?本宮君』
『仕事中悪い。今度の下見だけど…森咲も一緒に…いいか?』
『…え…恭香ちゃんを誘うの?』
『ああ、みんなには内緒で』
『僕は…嬉しいけど』
一弥君はあまり驚かなかった。
俺は、3人でいることで、恭香の気持ちがハッキリするんじゃないかと…
そう思ったんだ。
笑顔の奥に隠した悩み。
恭香の苦しむ顔、見たくないから。
それで、もし俺がフラレたら、恭香の気持ちを受け止めなければならない…
わかってるつもりだ…
でも、俺は…
やっぱり、恭香を失いたくない。
ずっとそばにいたい…
だから…
一弥君には負けたくない。
それでも、恭香が一弥君を選んだら…
俺にとって、これ以上つらいことは無いだろう。
そんな気持ちを女性に対して抱いたのは、生まれて初めてだった。
それなりに付き合った女性はいたが、本当は、恋愛なんてめんどくさいって、ずっと思って生きてきたから。
今、俺は恭香を愛してる。
本気で…恭香がいつも隣にいる人生を望んでいるんだ。
ただ、恭香の中には、俺と同じくらい一弥君がいる。
その答えを、きっと恭香も探し出したいはずだから…
『森咲には俺が話すよ』
『うん。また詳細はメールして』
『わかった』
一弥君も、何か感じたんだろう。
3人で一緒に行く意味を。
俺は、夜になって、恭香にそのことを話した。
ためらってるのはわかったが、恭香も承諾してくれた。
休みも何とかなったし、追加で部屋も押さえた。
その日が来るのが楽しみのようで…少し怖かった。
大丈夫だ、大丈夫だと自分に言い聞かせる。
恭香は、いつもこんなにそばにいるのに…
どうして俺は不安になるんだ?
不安を消すために、無理矢理、恭香を押し倒すことも出来るのに…
いや…絶対に出来ないだろ?
出来るはずない。
そんなことは何の解決にもならない。
恭香は、とても優しい顔をしてる。
半端ないくらい可愛い。
この子を…
絶対に泣かせたりしない。
俺が、一生…
守るんだ。