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〜霧島くんは普通じゃない〜
登場人物
日向美羽・・・中1の普通の女の子。好奇心が強い!?
霧島セイ・・・中1。超イケメンの転校生。どこか普通じゃない!?
霧島コウ・・・中3。セイの美形のお兄ちゃん。女の子をモノとしか思ってない?
霧島レン・・・中二。セイの二番目のお兄ちゃん。女の子みたいにきれいだけどこわい!?
アモル・・・謎の黒いミンク。ヴァンパイヤの使い魔!?
だれもいない夜の学園で、ピアノの音が聞こえる。
そうせいセレナイト学園の生徒たちの間でうわさにされるようになったのは、6月の梅雨に入ってすぐの頃。
私の名前は日向美羽。
肩までの真っ黒な髪と、真っ黒な瞳の中等部一年生だよ。
本を読むのが好きで、性格は好奇心が強いかな。
それから結婚勘がするどいって言われるよ。
予知能力ってわけじゃないけど、なにかトラブルが起こりそうな気配を感じたり、誰かが困ってたりすると、何となく分かるんだ。
それで困っている人を助けてあげたいって思って行動して、失敗しちゃったりもよくあるんだけどね。親切と余計なおせっかいって紙一重なんだって。それでも私の性格はかんたんには変えられないし、知りたい気持ちも抑えられない。
だからうわさのことも、すっごく気になってるの!
だって夜の学園でピアノの音がするなんて、なんだかロマンチックじゃない?
同じクラスの風花ちゃんは不気味だって怖がってるけど、弾いてるのが亡霊だとしても、恋人を思って、、とかね。
なにか理由があるんじゃないかと思うと、どうしても知りたくなっちゃう。
けれどクラスのみんなが、今一番気になっているのはそのことじゃなくて、、、
「転校生、やっぱりこのクラスの入るんだって!」
今日から転校してくる転校生のことなんだ。
クラスの話題は朝からずっと、そのことでもちきり。
やっぱりっていうのは朝からあ私の席の隣に、一つ新しい机が増えていたから。
みんな転校生がここに座るんじゃないかって、うわさしてる。
私の右隣で、廊下側の一番後ろ。
隣に知らない子が座るのかあ。ちょっと緊張するかも。
「美羽ちゃん。転校生が丘の上の洋館に、引っ越してきたって知ってた?」
前の席の風花ちゃんが、振り向いてこっそり、情報を流してくれる。
風花ちゃんとは小学校違って、同じクラスになってから、仲良くなった友達。
ふわっとしたロングヘアで、しゃべりかたもゆっくりていて、優しい女の子。
「丘の上の洋館って、あの!?」
思わずテンションが上がっちゃった。
丘の上の洋館はずっと空き家で、すごく大きくて豪華な建物だけれど、年代物って感じで、何なら幽霊とか出ちゃいそう。
壁にはツタが絡まりついて、うっそうとした雰囲気をかもしだしている。
あの古い洋館にまさか、引っ越してくる人がいるなんて!
「どんな子だろう。男の子?女の子?」
がぜん興味がわいちゃう。
女の子だったら友だちになって、家におじゃまできるかもしれない。
洋館の中が、どんなふうになっているか気になる、すっごく。
「男の子らしいよ。しかも年子の三兄弟。各学年にひとりづつはいるんだって。」
「男の子かあ」
ちょっとがっかりした。
風花ちゃんは、
「かっこいいのかな」
っていってるけれど、わたしにはピンとこない。
アニメや漫画の中では、こんな男の子が彼氏だったらなあって、思うことはあるけど。
でも現実の男の子って、そうじゃなくない?
私にとって現実の男の子といえば、からかってきたり、掃除をサボったりする、ちょっと困った存在だ。
「そろそろ先生来るよ。転校生もいっしょかな?」
風花ちゃんはそういうと、前を向いて姿勢を正した。
転校生が男の子でもみんなで仲良くなれば、洋館に遊びに行ったりできるかもしれない。
私は期待に胸を膨らませて、先生を待った。
ガラリ。
教室の扉が開いて、担任の堀田先生が姿をあらわたした。
その後、先生に続いて入ってきた男子の姿に、クラス全員が息をのんだ。
すっごく整った顔立ちの男の子だったから。
ふわっとした黒髪で、長めの前髪の下にある切れ長の瞳は、真っ黒で、黒曜石のようだった。それから、すっと通った鼻筋にきれいな形をした薄い唇、とがったあご。
すべてがととのっていて、わたしたちとはまるで違う存在に見えた。
顔も小さいし、まるで芸能人みたいだなあ。
転校生はむっつりと口を一文字に結んでいるけれど、それすら絵になってる。
ぽかんとしているわたしたちをみて、堀田先生も苦笑していた。
「転校生を紹介するわね」
先生がホワイトボードに黒いペンで、名前を大きく書いていく。
霧島 星
「霧島星くんです。霧島くん自己紹介は?」
「・・・べつに、ありません」
霧島くんは先生の言葉に、真っ向から逆らった。
これには堀田先生もびっくりしていた。もちろんわたしたちも。
だって霧島くんは恥ずかしそうな態度でもなければ、緊張している様子でもない。
普通っていうか、むしろ不機嫌そう?
こんなふうに先生を逆らうような生徒って、うちのクラスにはいない。
霧島くんってもしかして不良なのかな?
むねがどきどきしてきた。
堀田先生は、
「得意な科目は?」
とか、
「好きなスポーツは?」
とか話しかけていたけど、何を聞いても霧島くんの答えは、
「べつに、ありません」
だった。
「じゃああそこの空いている席について」
最後にそういった堀田先生の顔は、完全にムッとしていた。
あーあ、先生の機嫌損ねちゃった。
霧島くんは先生のこと怖いって、思わないのかな?
真新しい制服を着た霧島くんが机の間の通路を通ってこっちに向かってくる。
クラス全員が、彼に注目している。もちろん私も。
転校初日からこんな悪い態度を取る転校生って、普通じゃないもん。
どんな子なんだろう。
ゆっくりと歩いて私の横を通りすぎたとき、ふわっといいにおいがした。
かすかだけど、花のようなさわやかで甘いにおい。
どこかでかいだことがあるような、でもどこにもないような。なんとも言えない香りだ。
「わ。いいにおいがするね」
思わず口に出しちゃった。
自分の席に座ろうとしていた霧島くんは、びくっと驚いたように私を見た。
私も霧島くんの顔を見ていたから、当然のように目が合う。
その瞬間、体の中に電気が走ったみたいにビリッとした。
、、、、、、、え!?
普通じゃない。霧島くんには何かを感じる。
霧島くんのくっきりとした目がわたしをまっすぐにとらえていた。
目をそらせない。きれいな瞳に吸い込まれちゃったかのように。
教室の中だというのに、周りの存在も忘れて、私はただ霧島くんと見つめ合っていた。
霧島くんも同じように動かない。まるで時間が止まっちゃったみたいだった。
先に動いたのは、霧島くんの方だった。
はっとしたように霧島くんは、私から視線をそらして席についた。
それで私もわれにかえった。
(やだ。わたし、どうしちゃったんだろう)
そう思いながらも、まだ私は、霧島くんのことを目で追っていた。
近くで見ても、男の子なのに肌もすべすべだし、くっきりとした二重の目はほんとにきれいだなって思った。
だけど霧島くんのことが気になるのはそれだけじゃない。
うまくいえないんだけど、なんか気になるんだ。すっごく。
だけど霧島くんはさっきと違って、私の視線に居心地が悪そうに顔をゆがめて、つぶやいた。
「こっち見てんじゃねーよ」
「は?」
(態度悪い!)
私はかちんと来てしまった。
「霧島くんだってみてたじゃん」
小声で反論すると、霧島くんは前を向いたまましらっと、
「おれにかまうなよ」
と私にしか聞こえないようにつぶやいた。
その言葉に目がまんまるになった。
(なんか私、すっごい嫌われてない!?)
できれば仲良くなって洋館に招待されたい、なんてあわい期待は、しゅーっとしぼんでしまった。
あんなふうに言われたらもう、ぐいぐい話しかけれないよ。
あきらめるしかないかあ。
(もう霧島くんに関わるのはやめよ・・・)
そう思って先生の話に集中することにした。
「今週は読書習慣だから、読書記録のプリントを配ります」
列の前からプリントが回される。
「美羽ちゃん、はい」
前の席の風花ちゃんが、私の名前を呼びながらプリントを渡す。
「ありがと」
受け取ろうと手を差し出したとき、ピットプリントの端が、指の腹をかすめた。
「いたっ」
小さく鋭い痛みが指に走る。
ああ、やっちゃった。
顔をしかめて人差し指と見ると、赤い線が走って、そこからぷっくりと、血が盛り上がるのが見えた。
うわ、切れてる。
反対の手で指を押さえようとしたとき、視界ににゅっと別の手が伸びてくるのが見えた。
「へっ?」
私が小さく声を上げると、霧島くんが私の手首を掴むのとが、同時だった。
そのまま霧島くんは、血がちょこっとだけでた私の指を、自分の方へとぐいっと引き寄せ、、、
パクっと口にくわえた。
「えええええっ!?」
自分の指を切っちゃったことに、自分でくわえることは、まあ、ある。
だけど人の指だよ!?
しかも初対面の!
(一応)女子の指を!!
なめたっ!!!
私はバッと、自分の指を霧島くんの口から引きぬいた。
なめられた指を、隠すように反対の手でおおう。
心臓がどっ、どっ、どっ、とすごいいきおいで鳴っている。
「こら、日向さん。どうしたの?」
突然大きな声を上げた私に、堀田先生が声をかけた。
前の席の風花ちゃんも、ななめ前の席の佐野くんも、不思議そうな顔で私を振り返っている。
霧島くんが私の指をなめたところは、誰も見ていなかったみたい。
チラッと隣を見ると霧島くんは素知らぬ顔で、廊下の方に顔を向けている。
(なんだったの、いまの!?)
「、、、、なんでもありません」
そう言うしかない。
だって霧島くんに指をなめられましただなんて、恥ずかしくて言えない。
きっと言っても、だれにも信じてもらえない。
私だって、信じられないもん。
だけどあの感触は、たしかに指をなめられた。
男の子に指を、、、、。
わあああああ!
想像したら恥ずかしくなって、私はジタバタしたい気持ちを、必死でこらえた。
先生は普通にホームルームを進めて、さっきのことはもう誰も気にしていないみたいだった。
そっと隣の霧島くんを盗み見ると、頭を抱えるようにして、うつぶせている。
、、、、、、、体調、悪いの?
(意味分かんないんだけど)
そのとき、霧島くんが小さくつぶやいたのを、私は聞き逃さなかった。
「やっちまった、、、、、」
霧島くんはたしかにそういったんだ。
霧島くんが転校してきたその日は、空は暗くて、しとしと雨が降っていた。
、、、、普通じゃない日々がはじまる。
そんな予感にふるえたんだ。
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