テラーノベル
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小型の監視カメラから送られてくる映像に、光一と美香の姿が映り、音声もクリアに聞こえてくる。
「お前、まさか、結婚してすぐに殺す気じゃないよな」
「ちょっと声が大きい」
光一と美香は辺りを見回して、誰もいないことを確認する。
だが、いくらなんでも家の中に本人がいるのに、殺す殺さないの話しを扉を隔てた場所でするなんて、バカ過ぎる。
こんな奴らが、自分の夫と妹なのかと思うと、清香こそ穴があったら入りたい心境だ。
しかも隣に高塚がいて、一緒に話しを聞いている。これは一体、どんな罰ゲームなのか。
「清香さん、僕は気にしてないので、こんな人達のせいで、傷付かないで」
うつむいて足元ばかり見ている清香に、この人は気にしてない、大丈夫だと繰り返してくれた。
「でも、あの2人が高塚さんに、何かしてこないか心配です」
思い詰めた目が、瞬きも忘れて高塚を見つめる。
「大丈夫。あの2人は、僕が結婚するまで手を出したりしないはずです」
「あ」
「そう、あの2人が欲しいのは僕の財産だから、僕と妹さんが籍を入れるまでは、僕は安全なはず」
高塚の予想は正しいだろう。でも、こんなドラマみたいな恐ろしい展開は考えても見なかった。
「チュウ、ペチュウ」
スマホから卑猥な音が聞こえてきて、清香と高塚はスマホの画面に目を向ける。
光一と美香がこれ以上ないくらい体を絡み付かせて、お互いの唇に吸い付いている。
存分にお互いの舌を吸いあった後で、ゆっくりと体を離した光一と美香は、離れがたいと言うように、お互いの指を絡めている。
清香はスマホに送られてくる監視映像を見るのを止めた。
「録画してありますか」
「勿論です」
バタン
扉が開いて、光一と美香が戻り、玄関で靴を脱ぎ部屋に入ってくる。
「なんか、取り乱しちゃってすみません。こいつは実の妹みたいなものなので」
恥ずかしげもなく戻ってくる2人に、高塚も清香もあきれるしかない。
「そう言うことなんですね。構いませんよ」
「それで、結婚を前提と言ってたのは、いつ頃になりそうですか?」
10分前には結婚と聞いて血相を変えていたのに、財産の話しを聞いたら目の色が変わった。
「おい、どうしたんだ、ボーッとして?妹の結婚なんだから、お前も張り切らないとな」
「ご祝儀奮発してね」
「うん、任せて」
「お義兄さんと美香さんが、そんなに結婚を急いでいるなら、僕は来月でも構いませんよ。その前にご両親にもご挨拶して、顔合わせもしないといけませんね」
「わあ、嬉しい」
美香は大喜びで、高塚に抱きつく。
完璧な計画を練って、死ぬ方がマシって目に合わせてやる。
◇◆◇
1ヶ月後の友引
ラグジュアリーホテルのスイートルームを思わせる落ち着いた雰囲気だが、実は高塚の友人の別宅を借りて飾り付けている。
美香にとっては高塚との待ちに待った結婚式の会場。
「ねえ美香、新郎の人、すごく素敵ね。モデルみたい」
新婦の控え室で、友人たちが順番に写真を撮っている。
「いつの間に、あんな人つかまえたのよ」
「知り合いの紹介なんだけど、美香の写真を見て是非にって言われて会ったの」
「素敵ね」
友人たちを羨ましがらせることに成功した美香は、得意満面である。
ウエディングドレスは、膝より上のミニスカートが三段のフリルで飾られている。
ノースリーブに胸元が露な大胆なカットで、お前は芸能人かと突っ込みたくなる。
多くの人に高塚との結婚式を見せびらかしたい美香は、親戚一同に小学校から短大までの友人、ちょっとした知り合いまで結婚式に招待した。
新郎の服装は、レンタルで借りてきた安物だが、上背もありスタイルの良い高塚が着ると上等の服に見えるから不思議だ。
高塚物産の三代目にしては、招待客が少ないのは、全員がエキストラだから。
来ている友人と言えば、この邸宅を貸してくれた小野一人。
両親への感謝の言葉、花束贈呈を経て、祝辞が次々と述べられていく。
高塚サイドは、会社の部下からも祝辞が届いていないようで、美香が無理矢理書かせたような美辞麗句が紹介されていく。
「それでは、新婦の美香さんと一番仲の良いお姉さんご夫婦にお祝いの言葉をいただきましょう。まずは、お姉様である秋山清香さん、お願い致します」
清香が前に出てマイクを手に持つ。
「妹の美香は、子供の頃から欲しいものはどんなことをしても手に入れる子でした。今回も高塚さんをゲット出来て喜んでいます。美香のことをよろしくお願いします」
「覚えてなさいよ」
姉の清香の祝辞に不満なのか、美香が目の前の割り箸をバリンと折っている。
「はい、交代」
清香が、光一にマイクを渡した。
「僕は、美香ちゃんを本当の妹のように思ってきました。だから高塚さんとも弟のように仲良くしたいと思っています」
光一のスピーチの途中で、後ろの巨大モニターに動画が流されていく。
動画◆◆◆動画
美香「高塚さんのことを好きかって?お金持ちだから結婚相手としてはね。恋人は別だから」
美香が、清香の質問に答えた言葉だが、そこだけを抜粋して動画が流された。
光一「清香はブクブク太って醜いのに、美香はいくつになっても女子高生みたいだな」
美香「それって女子高生が好きってこと?」
光一「まあ、女子高生が嫌いな男はいないだろう」
美香「じゃあ、今度、高校のセーラー服着てあげようか?」
光一「マジで?じゃあ、俺は高校の数学教師な」
美香「きゃははは、何それ、変態」
動画◆◆◆動画
「何よ、これ。消して。止めて」
美香がモニターを背に向けて両手をあげているが、モニターは隠せていない。
「最低だな」
高塚が、侮蔑の表情を美香に向けている。
「高塚さん待って。これは何かの間違いよ。嫌よ。絶対に金持ちと結婚するんだから」
親戚や友人は口を開けて動画を見ている。
「美香、あんたお姉ちゃんの旦那と、何てことを」
「何よ、お母さんは何も知らないでしょ。お姉ちゃんが女として終わってるから、お義兄さんが私を好きになっただけじゃない。恋愛は自由でしょ」
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