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会場を支配するのは、眩いばかりのクリスタル・シャンデリアの光と


それに群がる羽虫のような貴族たちの薄汚い喧騒。


私は、手に馴染んだ扇をゆっくりと、儀式のように開いた。


絹の隙間から覗くのは、獲物を定める猛禽の瞳。


今日の標的は、領民の血税を吸い上げ、その金で豪奢な服を新調したばかりの侯爵令息、ロバート。


「あら、ロバート様。そのネクタイピン……サファイアの輝きが、あなたの冷徹なまでに理知的な瞳を際立たせていますわ」


私はわざとらしく視線を伏せ、彼の腕に、絹糸でなぞるような微かな力加減で指先を滑らせた。


吐息が彼の耳朶をかすめる。


「えっ、あ、ああ。エカテリーナ嬢、君のような美徳の塊にそう言ってもらえるとは光栄だ」


(ふっ、笑える。美徳? この男、私が裏で自分の父親の不正を握っているとも知らずに、よくもまあそんな白々しい言葉を吐けるものね)


彼は鼻の下を伸ばし、征服者のような笑みを浮かべる。


その浅ましさがたまらなく滑稽で、私の嗜虐心をそそった。


私は扇をパサリと閉じ、彼を誘導するように会場の隅……


重厚なカーテンが夜の闇を遮る、死角へと誘い込んだ。


「……ねえ、ロバート様。そんなに肩を強張らせて。わたくしが、何か恐ろしいことでも申し上げましたかしら?」


私は、逃げ場を失った小動物のような彼を、至近距離で見つめた。


指先を彼の胸元へと滑らせる。


上質なシルク越しに、彼の心臓が早鐘を打っているのが指先にまで伝わってきた。


私はわざとらしく、その波打つ鼓動の真上で指を止め、少しだけ爪を立てるように力を込める。


「ひ、酷いな。君に見つめられると、呼吸の仕方を忘れてしまいそうだ……」


「あら。でしたら、わたくしが教えて差し上げますわよ?」


私は豊かな髪をさらりと肩へ流し、首筋を露わにしながら、彼の耳元へと唇を寄せた。


私の纏う香水の、甘く、それでいてどこか刺すような官能的な香りが彼の鼻腔を突き


理性を直接掻き乱すのがわかる。


私はわざと言葉を途切らせ、湿った吐息だけを彼の肌に這わせた。


「……っ」


ロバートの喉仏が大きく上下する。


彼の手が、私の細い腰を抱き寄せようと、理性を失いかけた手つきで彷徨う。


それを許すかのように、私はわずかに体を密着させた。


ドレス越しに伝わる男の不躾な体温。


押し当てられた私の柔らかな曲線の感触に、彼の瞳はみるみる混濁していく。


「ここには、目が多すぎますもの。もっと……静かな場所でなら、例の件の話、もっと深く、ねっとりと……伺えるのに」


私は、熱を帯びた彼の耳朶を、扇の先端で愛撫するように、執拗になぞった。


もはや、彼の中に「事業」や「不正」の警戒心など残っていない。


ただ、目の前の毒婦を組み伏せ、その蜜に溺れたいという、浅ましい獣の欲望だけが剥き出しになっている。


「あ、ああ……。空き部屋があるんだ、そこでゆっくり休憩しながら話そうじゃないか。なあ?」

悪役令嬢と悪役令息、地獄行きのディストピア

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