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コメント
2件
最高ですね…… 続き楽しみに待ってます!
何も見えない。もう俺は死んだのか?
ひと目でいいから会いたかった。
「おとうさん…」
「誰がテメェの父親だ?」
返ってくるはずのない声に目を覚ます。いつの間にか俺の首から隊長の手が離れていた。
真澄「クソ、だいぶ弱ってるな…このままじゃ死ぬぞ。」
真澄「おい一ノ瀬!そのままこいつ担げ!」
四季「了解!」
グイッと体を引かれてまた担がれた。離れていた体温をまた感じて安堵する。四季の声が横から聞こえる。
四季「真澄隊長マジありがとう!」
そうか、真澄隊長が助けてくれたのか。
俺は助けられてばかりだな。
京夜「四季くん!こっちこっち!」
四季「チャラ先!やばいんだ!早く治してくれ!」
京夜「任せて!四季くん抑えててね。」
体内に大量の血が入ってくる。苦しさに悶え体が暴れ出す。するとどんどん失われた両腕に感覚が芽生えてくる。
両腕が生えてきてそれを動かせるようになった。
恋太郎「すごい…あなたは…?」
京夜「俺は花魁坂京夜だよ。本当なら羅刹にいたんだけど、会う機会なくてね。」
恋太郎「そうだったんですか…」
京夜「しんどいだろうから、今は寝てて。」
彼の言葉を聞いて自然にまぶたが降りていく。
忘れていた大切なこと。俺の母親が死んでいたこと。スケートをはじめたきっかけ。
彼の鮮やかな
「青」
京夜「あれ、目覚ました?」
恋太郎「京夜先生…?」
京夜「よかった。体痛いだろうから寝たまま聞いてね。」
京夜「実は恋太郎くんの脳にある細工がされてあったんだ。記憶を操作するものだと思う。多分だけどご両親の記憶ごっそり抜けてるでしょ?」
恋太郎「はい。あ、でもひとつ覚えてることがあって…」
言葉を発しながらふと窓に目線を向ける。
光が反射して自身の姿が顕になる。
少し不格好なカットの黒髪、優しげな印象を与えるタレ目、そして澄んだ青の瞳。
まさに父親そっくりだ。
その時、なにか熱いものが頬を伝う。
それが涙だと気付いた時にはもう止まらなくなっていた。次々に溢れ出すそれはきっと寂しさから来るものだろう。
行き場のない気持ちをどこにぶつければいいかわからない。
恋太郎「うぅぅ……」
京夜「えっ?!どうしたの?!」
嗚咽する俺を見て何を思ったのか落ち着いた表情をする。
京夜「…ゆっくりでいいよ。ゆっくり話してみてよ。」
彼の温かさに身を任せて子供みたいに泣いた。自分の大好きな青は呪いになってしまったな。もう忘れることさえ許してくれない。
でも前を向かなきゃ。
いつか貴方と会えたとききっと笑って迎えられるように。
京夜「なるほど…“好きなことをしろ”っていう別れの言葉は覚えてたんだね。」
恋太郎「はい。でもおかしいですよね。なんでこれだけ覚えてたんでしょう?」
京夜「これは俺の推測に過ぎないけどさ」
京夜「お父さんは君に自由に生きてほしかったんじゃないかな。例え命が短いと思っていても大切な人には幸せになって欲しいものなんだよ。」
恋太郎「大切…おれが…」
また目尻が熱くなる。溢れそうになる涙を必死にこらえる。
恋太郎「先生ありがとう…」
京夜先生は微笑みながら俺の背中を摩ってくれた。暖かい手がただ心地よかった。