コメント
1件
di視点
9月1日
この日は、自殺をする学生が多い日。
俺は、重い足を引きずり、学校に向かっていた。
「行きたくないな、」
俺は昨日、夏があけると同時に命をたとうとした
まぁ、不運にロープがちぎれて死にきれなかったんだけどな。
だから俺は、この始業式を乗り越えたら死んでやる。
どうせ俺が消えても、誰も何も思わないのだから
どんな死に方がいいかな。楽に死ねるのがいいな。薬で死ねないかな。
そんな他の死に方を考えていると、赤い光が俺を照らす。
「…なんだ?」
ふいに横を見ると、そこにはある神社の鳥居があった。
少し錆びた赤の鳥居に太陽がてらてらと反射していた。
あの赤い光はこれか…
俺の町は田舎だから、神社があるのは当たり前だけど、こんな神社見た事あったっけ?
鳥居にはこう書いてある
【獣赤神社】
聞いたことない…
しかも、奥は霧がかかっていてよく見えない…
いつもなら不気味で入るわけないけど
どうせあんな所に行くくらいなら
俺はいつの間にか、鳥居をくぐっていた。
鳥居の奥は長い階段が続いている。
先は全然見えない。
「登るしかないか」
何十段もある階段を登り終えると、そこには大きな建物があった。
この建物も古びていて、少し乱暴に触れれば壊れてしまいそうだ。
注意して中を覗いてみると、奥には神様のようなものがまつられ、保管されている。
獣の耳をつけ、大きくふわふわした尻尾をつけている。口には牙のようなものがある。
その神様も、もう何年も手入れされていないのかとても古びている。
ここの神社は、動物に関係のあるところなのか?
でも、いくら捜索しても、ここの神社にまつわることはなにも書いていなかった。
なんだ、結局何も無いじゃないか
こんなことしている暇があるなら、コンビニでアイスを買って公園でゆっくりしよう
そう思いここから立ち去ろうとした。
その時だった。
俺の横に何かが横切った気がした。
ふと後ろを見る。
…誰もいない
きっと見間違えだろうな
さぁ早くこんな不気味なところから出よう
『ちょっと!なにどこか行こうとしてるのさ!』
……
………
…………?
今、声が聞こえた??
いや、ここには人の気配なんて…
『ちょっと〜聞こえてんの?』
声のする方へ振り向くと、そこには
獣の耳をつけ、大きくふわふわとした尻尾をふり、口には牙をつけた人間…??がいた
あの神様にそっくり…
「君…だれ? まず人間?」
『うーん…まぁ”元は”人間だったね』
「元は?」
『うん、君たちと同じ人間』
『まぁあの日の事件に未練を持ちすぎて、こんな姿のまま生きてるんだけどね〜』
へらへらしながらそんな話をする獣
元は人間?あの日の事件?
分からない。何の話なのか何も分からない。
でも、これだけは分かる。
笑顔で笑う彼?の顔は、少し引きつっていて
この話を思い出したくないって顔をしてたこと。
でも、深く追求するのもよくないよな。
『ねぇ、君』
『名前は?』
「俺は…」
「おさでい」
『ふーん。じゃあでいって呼ぶね!』
「え?…まぁいいけど」
『ねぇでい、またいつでもここに来てよ』
『またたくさんお話したいし、でいのことも知りたいからさ』
俺の事…
「俺のことなんて知っても、きっとつまらないだけだよ?」
何も面白くない。色が抜けた俺の人生
そんなもの、ただつまらない、無駄なものでしかないんだから。
『それでもいーの。俺の楽しみはそれくらいしかないし』
「…じゃあ、明日にでもまた来るよ」
『ほんと!?楽しみにしてるね』
「じゃあ、またあした」
『うん!またあした』
俺は神社を出た。
今日は不思議なことがあったけど、学校より楽しかったな。
あいつが誰なのかも。何があったのかも。なんの神社かも分からないけど。
きっとあいつなら、俺のことを話しても…
…まだ、話せないかもな。
もうあんな記憶、思い出したくもないから
俺の人生から色を奪った出来事
あんな記憶なんて、もう消してしまいたい…
俺はアイスを食べて家に帰り、そのまま布団に身を任せた
今日はいい夢見れそうだ。
『後悔、しないでね』
『君のこと、少しはわかる気がするから』
『大事な人をこの世から奪われて、それで自分の人生を壊されたおさでいくん』
『いつか話せる時が来たら、信頼できたら』
『また話してね』
『待ってるから』
暗く霧のかかった森の中から、そんな声が聞こえた気がした。