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翌朝は日が昇る前から忙しく働くスリーマンセルの姿を見ることが出来た。
具体的には、レイブは水を汲み終えるとそのまま猛ダッシュ、近場の森に向かって食料となるモンスターを狩り始め、タイミングを同じくしたギレスラは岩山の岩窟より遥か高地に点在する、山頂付近の岩塩を集めて回るのであった。
孤独に岩窟に残されたペトラも小さな体でフル稼働、囲炉裏(いろり)の設(しつら)え、レイブの糊作りの為の竈(かまど)を造営、他には収穫されるであろうモンスター肉を干し肉にする為の干し場の準備などに費やしていた。
揃って休む、だとか、サボる、を知らない真面目な働き振りである。
太陽が真上に昇る少し前には、レイブとギレスラが申し合わせたかの様に岩窟に戻って来て、一人きりでせっせと働いていたペトラに声を掛けるのであった。
「ただいまペトラ、おお! 随分綺麗に整えたじゃないかぁ! 凄いよっ! 僕の方はイマイチだったんだぁー…… 半日近く動き回ってマッドベア一匹とダークウルフを三匹、後はフォレストウルフ一匹きりしか取れなくてねぇ~、ごめんよぉ~」
『タダイマァー! ア、レイブ、モイタカー! ガンエントッテキタヨォ! モンスターノホシニク、スウトウブンカナァ?』
揃って言う兄達を迎えたペトラの声も明るい物である。
『お帰りなさいお兄ちゃん達ぃ! モンスター五頭に岩塩数匹分ってぇ…… 今日の収穫だけで二、三十日分の補給が出来ちゃったじゃないのぉ~! やっぱりお兄ちゃん達って凄いわね♪ ペトラ大感激だわぁー』
「えっへん!」
『エッヘン!』
『うふふ♪』
そんな会話を交わすと、ペトラとギレスラは午後中を収穫の解体に費やして、お馴染みの干し肉作りに費やし、レイブ一人はこの辺りに隠してあったおやつ、ドングリの回収と糊作り、そうして夕暮れを迎えるのであった。
当たり前の事ではあるが昼食なんか食べはしない。
一日二食、それが魔術師の常識なのだ。 ※里の人間は普通に三食食べています。
夕食用の干し肉と干草、瘤芋(こぶいも)、それに途中で拾ってきたグラス類を煮込みながらレイブが言う。
「今日で随分備蓄の準備が進んじゃったからさ、今夜は穴ぐらへの通路の拡張作業、明日は例の『魔力回路』の高速循環訓練に当てようか? 乾燥し切れていないほぼ生の干し肉を食べればすぐに僕は石化、ギレスラは鱗の硬質化、ペトラも体が膨張して爆ぜそうになるだろうからさっ! グルグル訓練で無効化する練習に費やそうと思うんだけど…… どうかな?」
ギレスラはいつも通りだ。
『ンガッ、リーダー、ハ、レイブ! イウトオリニスルヨッ!』
『うん、アタシも異論は無いよぉ! がんばろうね♪』
ペトラも否は無いようだ。
スリーマンセルの同意を得たレイブは満面の笑みでシチューを平らげ、腹ごなしもそこそこに、石砕きのハンマー、ビシャンと石抉りのノミ、ハツリノミを両手に穴ぐらの奥に繋がる通路に向かい、勢い良く鼻息を鳴らしたのである、フンスッ!
応援の声も威勢を伴っている。
『頑張ってレイブお兄ちゃん!』
『グガグガッ! レイブッ! ブッコワセェッ! ガァーッ!』
「ふんすっ!」
一声、鼻息と全く同じ気合の声を発したレイブは、冬篭り前の昨秋に、首が嵌(はま)ってスリーマンセルの二者を怒鳴り散らす事となった忌まわしい通路へと、腹這いで頭から潜り込んで行くのある。