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三文小説
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篝火

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おその★
17,840
※初めての作品なのにいきなり女体化になります。
9人での収録を終えた後の楽屋。
「あべちゃん、おつかれ!」
メンバーの声に笑顔で手を振る。
「お疲れ。また明日。」
そう返したものの、身体は鉛のように重かった。
風邪を引いたのか熱っぽい。
ここ数週間、休みはほとんどない。ラジオ、テレビ、雑誌、新曲の振り入れ――アイドルとして忙しい毎日は嬉しいはずなのに、帰りは一歩歩くたびに足がふらついた。
ようやく自宅マンションへたどり着き、玄関のドアを閉める。
「……しんど……」
靴を脱ぐのもやっとだった。
バッグを片付ける気力もなく玄関に置きそのままリビングへ。
ソファに身体を預けると、それだけで少し楽になった気がした。
「少しだけ……寝よう……」
上着のポケットでスマートフォンが震えている。
『めめ』
画面には恋人の名前。
忙しい日でもこまめに連絡をくれる、大切な人。
「……ごめん。」
そう呟いたところで、意識は闇へと沈んでいった。
___________
「……ん。」
朝日がまぶしい。
身体は驚くほど軽かった。
「あれ……熱、下がった?」
そう思いながら起き上がろうとした瞬間、違和感が全身を走る。
腕が細い。
髪が肩へ触れる。
胸元に、今までなかった重みがある。
「……え?」
震える手で自分の身体を確かめる。
何かがおかしい。
慌てて洗面所へ駆け込み、鏡を見た。
そこに映っていたのは、知らない少女。
長い髪。
小さな顔。
大きな瞳。
けれど、その驚いた表情だけは間違いなく自分だった。
「……なんで。」
何度目をこすっても、鏡の中の少女は消えない。
頬をつねる。
痛い。
夢じゃない。
「……俺、女の人になってる。」
その言葉を口にした瞬間、足から力が抜け、その場に座り込んだ。
どうしよう……
ピコン。
スマートフォンが鳴る。
『マネージャー』
続けて通知が並ぶ。
『今日の入り時間は午後に変更。確認できたら返信ください。』
さらに、その下には——
『めめ』
『あべちゃん、おはよう。昨日寝落ちした?』
『体調、大丈夫?』
『電話していい?』
阿部は画面を見つめたまま固まる。
返信したい。
声が聞きたい。
会いたい。
でも、この姿でどう説明すればいい。
「信じてもらえるわけない……。」
涙が一滴、画面へ落ちた。
アイドルとして仕事を休むこと。
メンバーに迷惑をかけること。
そして、何より——大好きなめめを心配させてしまうこと。
そのすべてが胸を締め付け、不安だけが静かな部屋に積もっていった。
___________
女になってから三日が過ぎた。
元に戻らない。
鏡を見るたびに映るのは知らない少女。
けれど、その中身は紛れもなく阿部だった。
「……どうして。」
答えのない問いを繰り返しても、部屋は静かなままだった。
マネージャーやメンバーには高熱が続いていると伝えた。
『病院には行った?』
『無理しなくていいから、ちゃんと休め』
優しい言葉が届くたび、胸が痛んだ。
本当は病院へ行くことすらできない。
診察を受けたところで、なんと言えばいいのだろう。
『朝起きたら女になっていました』
そんな話を誰が信じる。
だから阿部は部屋に閉じこもるしかなかった。
食欲が無く、カーテンを開けることも減っていく。
スマートフォンだけが、外の世界とつながる唯一の窓だった。
――めめ。
『あべちゃん、大丈夫?』
『電話くらいできない?』
『声だけでも聞きたい。』
届くメッセージを読むたび、涙が滲む。
返信はいつも短かった。
『まだ熱ある。』
『ごめん。』
『もう少し休ませて。』
それ以上は書けない。
書いてしまえば、嘘が崩れてしまう気がした。
コメント
1件
第1話読了~~!!😭💕 主人公・阿部ちゃんのアイドルとしての忙しさや疲労感がリアルで、そこに突然の女体化という衝撃が重なる導入、めっちゃ引き込まれたよ…! 鏡を見た瞬間の呆然とする感じ、めめからの連絡に泣きそうになりながら短い返事しか送れない切なさが胸に刺さる。これは続きが気になりすぎる…!! めめとの関係がどうなっていくの? 早く次が読みたい〜🌸