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くるくると俺の身体がしなやかに動く時、観衆は驚いた顔をする。
まるで氷の上で精霊でも見ているように _。
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突然だが俺はとても地味だ。ありきたりな黒髪。タレ目に泣きぼくろは長い前髪に個性を潰されている。そのくせ身長だけはやけに高くて185cmもある。何も誇るとこがない男子高校生だ。
そのはずだったのに………
何故か今、傘を持ち、ローラースケートを履いている奇抜なファッションの男性に声をかけられている。
???「お前、伊都氷介だな?」
いやいや、たしかに俺は伊都氷介(いと ひょうすけ)だけれども…なぜその名前を知っているのか、いささか疑問だった。なにか怪しい人なのでは…?
氷介「そ、うですけど…なんでしょうか…」
うわ、声が裏返ってしまった。ダサい。
???「…こういえば少しはわかるか?“冬麗恋太郎”くん」
恋太郎「……へ?」
冬麗 恋太郎(ふゆうらら れんたろう)これは俺がフィギュアスケーターとして活躍していた時の本名だ…
恋太郎「なんで知ってるんですか?あなたがそれを…」
???「どうだ?少しは話を聞く気になったか?」
恋太郎「待て待て、そもそもあんた誰なんです…」
無陀野「失礼した。俺は無陀野無人。君に話を聞きたくてここに来た。」
恋太郎「とりあえず人のいないとこへ行きません…?」
無陀野「分かっている。あの裏路地へ行くぞ。」
無陀野という男が指さしたところまでゆっくりと足を運ぶ。俺はとても緊張していた。ずっと蓋をして大事にしまっていた秘密をこの男が知っていたからだ。
恋太郎「……で、話を聞きたいってなんなんです?」
無陀野「お前鬼だな?」
恋太郎「…鬼?なんの事だか……」
嘘だ。俺は知っていた。自身が鬼の力に覚醒した時から「桃太郎」とかいう奴らが邪魔をするせいで氷上を去ることになったのだから。
こいつももしかしたら「桃太郎」なのではないかと思うと少し緊張した。その緊張や動揺を必死に隠そうとするが彼にはきっと全てお見通しだと目を見て思った。
無陀野「安心しろ。俺は味方だ。」
その言葉を聞いて少し安堵した。また俺を殺しに来たのではないかととても不安だったからだ。でもそうだとしたら、なぜ彼は俺を訪ねて来たのだ?
無陀野「お前を羅刹学園の生徒として相応しいか審査しに来た。」
恋太郎「羅刹学園?なんですそれ…」
予想外のことばかり起こるせいで頭がパンクしそうだった。そもそも自身が鬼なのは知っているが、「鬼」がどんな生物なのか俺は自身のことを全然わかっていなかった。
そんななか審査と言われましても……
無陀野「鬼を鬼機関の精鋭に育てるための学園だ。お前はそこに入学してもらう。」
恋太郎「急だなおい!?!?」
あまりに驚いたため本音が出てしまった。まずい、大人に不敬だ。
恋太郎「ん”ん”!…………失礼」
あの男がじっとこちらを見つめている。
………悪かったって…。ごめんて……。
無陀野「……まずは羅刹学園まで着いてこい。お前の能力を見せてみろ。使えないやつは要らない。」
いやいやいやいや、急に押しかけといてそれは無いだろう…。なんか腹たってきたな……!?
だが彼からは何故か逃げられない、そんな気がして仕方なく従った。
続く