※アルミン目線
ウォール・ローゼ内の開拓地
数万人の避難民に揉まれながら
荒地の開拓に周る日々
そんな中で、ミロアは重度の負傷者としてあの日からずっと医者に看取られている
避難船に乗れて一緒にあそこから逃げ出せた事は嬉しかったが
ミカサがこの前言った通り
僕達はまだ生き残った訳じゃないんだ
それに、ミロアも肉親を失ってしまった
心身ともに不安定だ
ここで死んでしまうなんて、冗談じゃない
「アルミン…やっぱり、ミロアは」
「絶対大丈夫だって!生きてるよ…!」
ずっと負傷者用の部屋の前で待っている僕に対し
エレンは見兼ねてそんなことを言う
確かに、望みは薄い
だけど
僕の中のミロアの顔は
船の上で見た、
血液が足りなくて真っ青になった時のままだった
「(…早く、元気になった君の顔が見たい)」
その一心で
僕は待ち続けた
そこから、2つ程、夜を明かした頃だったか
午後8時、暗くなった硬い地面の上を
今日も駄目だったと思いながら歩いていると
『アルミン?』
その声と共に
ゆらり、と影が揺れるのが見えた
僕には声の主がすぐに分かった
「ミロア…!だいじょ…」
嬉々として声を掛けるが、
僕が彼女の姿を認識した時
「っ…!」
思わず息を呑んで言葉を失った
ミロアは包帯を耳を隠すように頭の上からぐるりと巻いていて
その隠れている耳の部分には明らかに耳の膨らみが無かった
僕でも分かる
耳を
“切断”したんだ
「あっ、ちが…ごめん。少し驚いただけで…」
『大丈夫だよ。驚いて当然。お医者さんがね、もう全部右耳は取っちゃったほうが良いんだってさ。血が悪くなってたとかって…でも死ななかっただけ良いよね』
「…耳、聞こえる?」
『うん。大丈夫』
その後、君は”久しぶりだね”と一声かけてから
少しだけ人の少ない所に移動して
2人並んで、地面へ座った
「君のこと、ずっと待ってたよ」
『知ってるよ。部屋から帰っていくアルミン見えた。ありがとうね』
「そうだ、エレンとミカサにも…」
『ううん。今日はもう遅いから明日にしよう』
「…うん」
こうして話すのは、約1週間ぶりぐらいか
決して長くはない
だけど、僕にとっては短くもなかった
「……」
君の、ほんのり血色の戻った顔と
瞳に反射する星空に惹かれて
喉に引っ掛かっていた言葉が
ついに出てしまった
「君は…これからどうするの」
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