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8 - 二人の関係

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2025年09月30日

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ルイから預かっていたひまわりの栞を無事に岸田さんへと届けることができ、僕は一安心していた。

岸田さんから感謝の言葉と優しい笑顔を向けられ、男の僕でも少し照れ臭くなり奢ってもらったソフトドリンクを一口飲み込んだ。 岸田さんはというと、嬉しさと悲しさや悔しさ?のような感情が入り乱れているような、読み取るのが難しい表情を浮かべながら栞を大事そうに見詰めていた。 きっとルイと岸田さんが並んでいると物凄く絵になるのだろう…と下らないことを想像していると、岸田さんが顔を上げ口を開く。


「そういえば、僕とルイのことを聞いてたけど、気になる?」

「はい。教えて下さい!」


僕とルイは出会ってまだ半年も経っていない。きっと僕よりも前からルイと出会い、深い関係にある岸田さんからルイのことを教えて貰えれば、今よりもルイのことが知れるかもしれない。ルイは何も話そうとしないし。


岸田さんはルイとの関係を詳しく話してくれた。 まず、岸田さんとルイは小さい頃からの友人で何かあれば迷わずなんでも相談し合える仲だったそう。そして、中学から高校一年生まで岸田さんは軽いいじめのようなものを受けていたらしい。直接暴力や暴言を受けたりは無かったものの、会話に混ぜて貰えなかったり面倒な物事を押し付けられたりしていたとのこと。それを見兼ねたルイがその生徒達を問い詰めたところ、あらぬ噂を広められたりと、岸田さんに向いていた矛先がルイに向けられたそう。


「気にするなって、そんなの無理でしょ。今考えても…」


岸田さんは独り言のように呟いた。その表情が全てを物語っているように感じた。

その後もルイへの嫌がらせは日に日に悪化するばかりで、ルイの笑顔も共に減っていったそう。 今のルイからも想像できるように、人には自分の弱さを見せたがらない。それにより一人で全てを背負い徐々に耐えられなくなり、限界になったことがあったらしい。それからは取り返しがつかなくなる前に誰かに相談する。ということを岸田さんとルイの間で決めていたらしい。


「でもルイの奴、こっちから聞き出さないと絶対吐き出そうとしなかったんだよ。今思えばあれって意味あったんかね?」


話しながら呆れたように笑っている。思い出話をしているせいか、岸田さんの口調が砕けてきている気がする。 ルイもそうだったが、片方の話をしている時はとても優しく楽しそうに話す。それだけいい関係だったのだと思わされる。


「きっと今のルイもそんなに変わらないんだろうな」

「…どうして岸田さんはルイの元へ会いに行こうとしないんですか?」


岸田さんだけじゃない、ルイもそうだ。 どちらも相手のことを想っているのに直接会おうとしない。 今回の件だってルイ本人が渡しに来ればいい話。僕を一度経由する理由が見当たらない。


「そうだねぇ…僕も何度か会いに行こうとしたんだけど、来るのが早いって叱られそうだったから」

「叱られる?ルイにですか…?」

「うん。あいつ意地っ張りなとこあるし」


それには同感する。前に食の好みの話題になった時も頑なに僕の意見を聞き入れようとしなかった。岸田さんからも意地っ張りという単語が飛び出し、昔から変わらないのだと知り少しだけルイの理解度が深まった気がして何だか嬉しく思う。


その後は僕の緊張も程よく解け、ルイの趣味や岸田さんに関しても聞くことが出来た。

岸田さんがここで勉強をしている横でルイはいつも決まってカフェラテを飲んでいたらしい。勉強をしていることは無かったらしいが…

そんな二人が喧嘩をした際は、互いの好物でもあるメロンパンを謝罪代わりに手渡していたと言う。僕があの時それとなく手にしたメロンパンは選択ミスだったのかもしれない。

岸田さんと話せば話す程彼のことが大好きなのが痛いほど伝わってくる。一緒に居ないのが不思議なぐらい。


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