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「ねえ」
放課後の屋上。
彼女が、僕を呼んだ。
風が少し強くて、
彼女の髪がふわっと揺れる。
「どうしたの?」
僕が聞くと、彼女は少しだけ笑った。
「もしさ」
「好きな人とキスできるとしたら」
「どうする?」
いきなりの質問に、僕は少し固まる。
「え、なにそれ」
「いいから」
彼女は、じっと僕を見る。
夕日が当たって、
目がきらきらしていた。
「……たぶん、する」
僕は正直に言った。
好きな人とキスできるなら。
普通は、そうすると思う。
でも。
彼女は、少しだけ寂しそうに笑った。
「そっか」
沈黙が落ちる。
僕は、ずっと前から知っていた。
自分が彼女のことを好きだって。
友達としてじゃなくて。
もっと特別な意味で。
でも。
言えない。
絶対に。
「ねえ」
彼女がもう一度言う。
「もしさ」
「今ここで、私がキスしていいよって言ったら?」
心臓が、ドクンと大きく鳴った。
そんなの。
ずっと夢みたいに思ってた。
でも。
僕は首を横に振った。
「……しない」
彼女はびっくりした顔をする。
「え?」
「なんで?」
僕は少し笑った。
「だって」
「君には、好きな人いるだろ」
彼女は黙った。
それだけで、答えはわかる。
僕はずっと知ってた。
彼女が好きなのは__
僕じゃない。
僕の親友だってこと。
「もし僕がキスしたらさ」
僕は空を見上げた。
「たぶん、君は困る」
「それか、後悔する」
「……」
「そんな顔、見たくないんだ」
風が吹く。
しばらく、誰も何も言わなかった。
やがて彼女は、小さく言った。
「……優しいね」
僕は苦笑いする。
優しいわけじゃない。
ただ。
好きだから。
本当に好きだから。
自分の気持ちより、
君の気持ちを守りたいだけ。
だから僕は__
キスしちゃいけない。