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こんなに泣いたの初めて(良い意味)
『貴方想い、散りゆく恋』〜身分違いの恋だとしても〜
第陸話 残酷な報せ
『あの2日でフィンレイ様と別荘か…。楽しみだな。』
『……。』
食堂でご飯を食べながら嬉しそうに主様はニコニコしている。
『主様。美味しいですか?』
『うん、美味しいよ。』
『そうですか。良かったです。』
『ロノ、この人参貰ってもいいか?馬にあげたいんだ。』
『あぁ。余ってるから別にいいぞ。』
『ご馳走様でした。ロノ、ありがとう。』
『どういたしまして(*^^*)』
キッチンにて。バスティン・ロノ
『ロノ、元気がないな。』
『仕方ねぇだろ。主様があんなに嬉しそうにしてたら…辛ぇよ。』
『…そうだな。俺達は執事…主様にこんな想い本来なら抱いちゃいけない感情だ。』
((分かってるんだ。俺じゃダメだってこと位――。)
地下執事部屋にて。ラト・フルーレ
『……。』
『フルーレ、その服は……。』
『主様に頼まれたんだ。新しい服を作って欲しいって。』
『…フルーレはそれでいいんですか?』
『……ぅん。主様が嬉しいなら…それでいい。』
((私\俺にしか出来ないことってなんなんだろう…。\なんなんでしょう。)
庭にて。アモン・ラムリ
『……薔薇を育てている意味が分からなくなってきたっす。』
『…主様のためでしょ?』
『まぁ、そうっすね。好きな人に…喜んで貰えるっすから。でも、今は…育てれば育てる程。辛いっす。』
((俺が\僕が弱いから…選んでくれないのかな。\くれないんっすかね。))
ワインセラーにて。ルカス・ミヤジ
『ルカス。お前は知ってたのか?フィンレイ様の気持ちにも、主様の気持ちにも。』
『…うん。主様が教えてくれた。私はフィンレイ様と交流があるし。フィンレイ様はその…わかりやすいし。』
『……止めないのか?』
『…私が何を言っても、もう……。』
『…それもそうだな。』
((2000年以上生きてきたけど\がこれ程辛い気持ちになったことはない。))
コンサバトリーにて。ベレン・ベリアン
『ベリアン。あと2日だけど、このままでいいの?』
『……伝えられるものなら、もう伝えています。だけど、主様を困らせることだけはしたくないんです。だって……。』
『私は執事ですから。とでも言うつもり?』
『…っ。』
『執事だからダメなの?執事だから…主様を好きになっちゃいけないの?』
『それは……。』
『…なんて、偉そうなこと言ったけど、俺も人の事言えないか。ふふっ。』
((長く生きてると…感情というものが分からなくなる\なります。特に――『恋愛感情』))
別邸1階にて。ハナマル・シロ
『なぜ我がお前と。』
『いいだろ?寂しいんだよ。1人酒。』
『我は飲まん。紅茶を飲む。それに、昼に飲んで後でユーハンにどやされるぞ。』
『…そうだな。でも、今は全部流したいんだ。主様のことも…俺の気持ちのことも。』
『……戯けが。酒を寄越せ。付き合ってやる。』
『あぁ。…ありがとな。』
((流したいのにどうしても流れない。
俺は\/我は…悲しくないのか…??))
書庫にて。ハウレス・フェネス
『ハウレスは…主様のどこが好きなの?』
『…いきなり何言い出すんだ。』
『気になるから。聞かせてよ。』
『……。そうだな…。お優しい笑顔だ。辛いことがあっても元気になってしまう。』
『そっか。俺もだよ。失敗したとき…笑顔で俺のことを励ましてくれるから。』
『そうか…。』
『でも、俺たち2人とも振られちゃうんだね。』
『…そうだな。』
((もっと強く、強くなって、主様をまめりますから。どうか、俺を――。))
裏庭にて。ボスキ・テディ
『こんな時に模擬戦か?』
『はい。このモヤモヤした気持ちを…無くしたいんです。』
『……感情に任せた戦いはお前を弱くするだけだ。』
『…なりません。主様の気持ちは弱くなることはありません。』
『……そうだな。俺もお前も。同じ人を好きになった。そして…お互いに振られちまった。』
『そう、ですね…。でも、諦めてませんよね?』
『ふっ。当然だろ?』
((お願いだ。\お願いです。俺の主様の気持ちは誰にも負けない。\負けないです。だから…傷付けないでくれ。\ください。))
3階執事部屋。ナック・ユーハン
『これが東の大地の刺繍ですか。面白いですね。』
『えぇ。全体的に和のイメージが強いので…。椿や、牡丹等が主流です。』
『なるほど。美しいですね。是非これは主様にあげたいですね。』
『えぇ。でも……叶いません。我々は執事…そして、唯一好きになった女性は……。私たちのものにはならない。』
『えぇ…残念です。』
((私なら…最後の最後まで大切にします。どんな時でも貴方を…愛します。))
グロバナー家 本邸――。
『……。』
『フィンレイ様。これはもう決定事項です。貴方とて覆すことは不可能だ。』
『…あぁ。分かった。従おう…。それが…世の秩序というものなら。』
(こんなことになるとは。私の一方通行な気持ちがこんな結末を――。)
私は雪華をグロバナー家庭園に呼び出した。
――――――――――――――――――――
『呼び出してすまない。悪魔執事の主。』
『…!』(どうして、名前を呼んでくれないの…?)
『……。』
(分かってくれ。雪華。)
『悪いが、2日後の別荘の件…白紙にしてくれないか。』
『――え……?』
『実は…。君が私の婚約者…というのが気に入らないらしい。貴族の大半が。』
『そんな、なんで……。』
数時間前――
『フィンレイ様。悪魔執事の主とは婚約を破談にすべきかと。彼女は悪魔執事の主ですよ?我々にどんな被害が及ぶかわからないですよ。』
『その通りです。相手はあの悪魔執事の主ですよ。俺らと同じ低俗で汚い人間ですよ。』
『…彼女のことを侮辱するな。並びに、悪魔執事の彼らも低俗で汚い人間などではない。彼らは我々グロバナー家の為に尽力してくれている。彼女もだ。』
『それはグロバナー家の駒だからでは?雇っている我々に従うのは当然のはず。』
『いずれ寝首をかかれますよ。悪魔執事にも。悪魔執事の主にも。』
『そうだ!あいつらは悪魔だ!』
『天使を狩るためのただの道具だ!』
『……はぁ。』
ガタッ
私は椅子から立ち上がる。
『彼女は私が見初めた女性だ。意義は認めない。』
『それは困りますな。フィンレイ様。』
『何…?』
『街の人々の意見は反対しています。フィンレイ様は貴族で…悪魔執事の主は平民と言っても言い過ぎなくらいな身分です。貴方様とは釣り合いません。』
『っ…。』
『人々の意見に応えることこそ貴族というものでは?より良い政治を気付くためには……。悪魔執事の主とは破談にした方が良いと言っているのです。』
『それは……。』
『よくお考え下さい。貴方はグロバナー家の当主であり…貴族だ。街の人々の意見を尊重するか。悪魔執事の主のことを切るか…どっちを取れば利益は大きくなるか。聡明な貴方なら――。お解りのはず…。』
『…分かった。彼女には私から話そう。そらでいいかな。』
『懸命なご判断でございます。』
そして今に至る――
『君と別荘なんて行ってるのがバレたら私の立場も君の立場も危うい。』
『……。』
『貴族のみんなに反対されたんだ。何を言ってもあれやこれや言われて…。貴族の私と…君では釣り合わないと。街の人々の意見と君のを切る…どちらの方が利益が大きいか。聞かれてね。』
『そんな…。』
『悪魔執事の彼等も今より酷いことをされる。だから…。』
『ま、待ってください。そもそも婚約者って言うのはフリであって…。』
『あぁ。そうだったな。でも、婚約者のフリを頼んだ今日から今まで……ご苦労だった。貴族の彼らの前では上手く取り繕うしかなかった。今日をもって…君との関係は終わりだ。』
『…っ。フィンレイ様…は、もう、私の事好きじゃないんですか…?』
『……。あぁ。 』
聞きたくなかった。言いたくなかった。
愛した貴方に\愛した君にこんなこと――
『ん……っ。』
私は涙をこらえる。
『……。』
(解ってくれ…雪華。私は今でも君を愛してる。だけど…仕方ないんだ。)
『酷いです…フィンレイ様…。最初から私は…ただの捨て駒ですか…?』
『…そうだ。君を利用しただけだ。そもそも……貴族の私からの名例なら最初から断れないだろう?』
『…!』
そうだ。私を憎め。怒って憎んで、嫌いになってくれ。
『全部……嘘、ってことですよね?あの時のパーティも。2人でご飯食べに行った時も。好きって言葉も。キスしたことも…全部全部…っ!!』
『……あぁ。全部嘘だ。』
『……。』
私は静かに涙を流す。
『話は終わりだ。帰ってくれ。』
『…。』
私は泣きながらグロバナー家から去る。
『ん、うっ、ひっ…っ。う、うう…っ。』
『……それでいい。私のことを嫌いになれば君のことが好きだったことも。全部忘れられる。これでいいんだ。』
私は拳を握り締め、グロバナー家へ戻った。
コツコツ……。
夕日が差す道を歩く。
『全部…全部…嘘…か。私は利用されてた、だけ…。』
(あの時の言葉も。笑顔も…。)
『好きだったんだけどなぁ…っ。っ、う、ううっ…っ。』
私は足取り重く、デビルズパレスに帰った。
デビルズパレス エントランスにて
ギィィ……。
『!おかえりなさいま――。』
『……っ。』
『主様…!?如何なさいましたか?どうして泣いて……。』
『ぅ、ベリ、アン……っ。私、わたし、もう…やだ…っ。』
『何があったのですか…っ?』
『う、うっ、うぁぁぁぁっ……!!』
私はベリアンにもたれかかって、崩れ落ちながら泣き叫ぶ。
ベリアンは執事のみんなを食堂に集めて、私に紅茶を出してくれた。
『う、う…っ。』
『落ち着きましたか…?』
『…ぅん。』
私は紅茶を飲む。
『何があったんだ?主様。』
『街の奴らに何かされたんですか?』
『……。』
『主様。間違っていたら申し訳ございませんが…フィンレイ様ですか?』
『……!』
私はこくんっと頷いた。
『なんと…フィンレイ様が主様を…っ?』
『はぁ?有り得ないんだけど。フィンレイ様が僕の主様泣かせたの?』
『主様。ゆっくりで大丈夫です。話してくださいませんか?』
『うん…実は…。』
私はゆっくり事の経緯を話した。みんなはしっかり聞いてくれた。
数分後――
『はぁ?ふざけてんのかよ。主様はただ、利用されただけってことか?貴族ってのは本当にクソだな。』
『フィンレイ様も所詮は貴族なんだな。主様のことをなんとも思ってない…。』
『本当に…身勝手だね…。主様のこと弄んで……。』
『辛かったっすね…主様。』
俺は主様の涙を拭う。
『フィンレイ様なんてやめちまえよ。主様。好きでいても傷付き続けるだけだぞ。』
『えぇ。主様のことを利用していたんです。許されることではありません。』
『大事は主様を傷付けたんです。俺、許せません。』
『みんな…怒ってくれてるの?』
『当たり前です!\だろ!\ですよ!\だ!\だよ!』
『主様が怒らないなら俺達が怒るよ。ね?』
『あぁ。我はお前の執事だ。言っただろう?困った時は頼れと。』
『みんな……ありがとう…。』
『よし、そしたら今日は主様の好物を作りますよ!楽しみにしててくださいね!』
『ロノ、俺も手伝うぞ。』
『あぁ、ありがとな。』
『主様。目が腫れています。3階執事部屋へ行きましょう。目を冷やさないと……。』
『ありがとう…。』
私はルカスに支えられながら階段を上る。
『……。』
さよなら――愛した人――。
次回予告
主様を傷付けられて黙ってはいられない。と、意を決した執事達はグロバナー家へ
総出で向かうことに――。
『主様の気持ちには……気付いていたのにどうしてこんな……。』
『……こうするしか、なかったんだ。彼女を守る為には――。』
『え……?』
次回
第漆話 偽った想い