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(イベント……クリア……?)
目の前に表示されたクリアの文字を私は二度見した。
そうだった、コレはアルベドと星流祭をまわるってイベントだったんだと、私は瞬きをする。
(それにしても矢っ張り15%プラスっていうのは大きいわね……)
最後に見たアルベドの好感度が55だったので、今回のイベント報酬を合わせると70にもなる。やはり、これはメインイベントだったんだと私は改めて思った。それと同時に、そんなエトワールストーリーのメインイベントとである星流祭を攻略キャラとまわるというものでアルベドを選び、無事達成してしまったところを見るとアルベドルートに入ってしまったのではないかと不安にもなった。
私は、未だに誰かを攻略しようとかは頭にないのだ。
ここまでずるずると……というと、言い方が悪い気がするが、どのキャラも良い感じに好感度を上げてきた気がする。悪役のストーリーだと身構えていたが、思いの外トントンと上がったことに驚きしかない。
けれどゲームで見るのと、現実で見るのは全然別物だった。
本当に、この世界にこれたとしたら、勿論狙いはリースで、攻略もリースに絞るつもりでいた。そんな妄想をしていた。
でも、実際リースの中身は別れた元彼で、その彼は未だに私を思い続けているという衝撃の事実を受けた。
そうして、他のキャラを見てみようと思ったとき、関わっていく内にその攻略キャラのバックや汚いところまで、人間くさいところまで見えて私はどうしようもなくなった。いや、ゲームだから幻想、理想を抱いていたんだろうが、彼らも生きていたのだ。
綺麗な部分だけじゃない。
そんな風に誰が良いとか決めれずここまで来たせいで、攻略が進んでいないのかもしれない。
でももし、コレがエトワールストーリーの最後のイベントだったとしたら?
私は正確に、本物の聖女、つまりヒロインが来る時期を把握していない。だからこそ、慎重にならなければならなかったはずなのに……
(でもでも! 仕方ないじゃん、誰が良いとか決められなかったんだし!)
そんな風に頭を振っていると、アルベドがまたどうした?というような顔を私に向けてきた。まあ、もうその目も慣れてしまったわけだが。
「俺の顔に変なもんでもついてたか?」
「頭に」
「頭?」
いけない、思わず本音が。
と、私は口を塞ぐ。アルベドは自分の頭に手をやったり、上を見上げたりしたが勿論何もないし、彼には見えない。私にしか見えない、彼の好感度。
70にもなれば、多少恋愛感情も交ざってくるか……と思いつつ、私は恐る恐る口を開く。
(聞いておいて、違うって言われれば其れまでのことだし、別にアルベドに好きになって欲しいって思っているわけじゃないもん!)
彼は、作中きっての危険人物で、マイナスまで下がった男だったのに。だから、こそここまであがる何て思いもしなかった。
「ねえ、アルベドは―――」
そう、口を開いた瞬間だった、花火も終わり漆黒の闇と静寂が戻った夜空でピカッと白い何かが弾けた。
その眩しさに、思わず目を細める。
そして、その光は地上に降り注ぐように流れ星となって夜空をかけていく。
「流れ星……?」
「ああ、始まったな。今年は誰だろうな」
アルベドはそう言って、ニヤリと笑った。
何が始まったのかと、アルベドを見ればアルベドは、私の方を見てフッと微笑んだ。
夜空には薄緑色の線が何本もでき、それが消えることなく降り注いでいる。
それは、まるでこの世界の何処かに落ちたかのように、一定の間隔で落ちている。
そして、それを合図にしたように次々と光が放たれた。それは、今まで見たことのない光景だった。
(綺麗……こんなに一杯見えるなんて……)
そんな風に、流れ星に見とれているとアルベドの言葉をふと思い出し、私はアルベドに尋ねた。
「何が始まったのよ」
「何って、あれだよ。あれ」
「あれって何?」
ほら、あれだよ。とまたアルベドは繰り返し、此奴本当は分かっていないんじゃないかと私が疑いの目を向けてやれば、紅蓮の髪をかきむしってアアッ! と地団駄を踏む。
そして、彼はこう言った。
「流星群」
「いや、見れば分かるのよ」
「星流祭のイベントってまだ残ってただろ? ほら、星栞の」
そう言われて、やっと私は理解した。
そういえば、星流祭の最後に星が降ってきて、櫓に灯り無数の星栞の中から一つだけ願いが叶うとかなんとかの奴。
私が、口をあんぐりと開けてその言葉を聞いていると、アルベドはピシッと私の額をこついた。
「痛っ! 何すんのよ!」
「ん? いや、随分間抜けな顔してたからなぁ。叩いてもいいのかと思って」
「女の子に叩いても良いかって!? ダメでしょ!」
そう言うと、何故かアルベドは少し嬉しそうな顔をしていた。いや、嬉しそうと言うよりかは、馬鹿にしたような、してやったりとでも言いたげな顔で。
「ほら、降ってくるぞ。あれで最後だ」
と、アルベドは白と緑で彩られた夜空を指さした。
私が空を見上げると、光の塊のようなものが夜空で生成され、それらは今にも弾けそうな勢いで大きくなっていた。先ほどの衝撃よりも、遥かに大きな光の球。
パチッパチッと、音が聞えてくるような気がする。
そして、次の瞬間、パンっと音を立てて、光の球が弾けたかのようにおもわれたが、光の球はそのまま一直線に地上へと落ちていった。おそらく、城下町の方へ。
私はその光景をただ呆然と眺めることしか出来なかった。だって、また弾けて流れ星になるものだと思っていたからだ。
そんな風にあっけにとられていると、私の肩をアルベドが叩いた。
「ひげがやああ!」
「何つー声出してんだ」
突然のことに驚き、私がどこから絞り出したのか分からない悲鳴を上げると、アルベドもまた驚いたような呆れたような表情を私に向けた。しかし、すぐに彼は視線を空に向け、そして何かを確認するように首を傾げた。
どうやら、もう既に流星群は終わり、また空に静かさが戻ったようだった。
「落ちたみたいだな」
「えっと、さっきの光の……星の塊みたいな奴?」
「ああ、あれが、叶星だ。あの星が櫓に落ちて、そこで星栞の中から一つだけ願いが選ばれる」
「そんな、落ちたって……雷みたいに」
縁起の良いものではないのかと思いつつ、さきほどの塊はやはり櫓に落ちたようだった。
ここからじゃ、城下町の方へ落ちたと言うことしか分からなかったが、確かに、あれは櫓に落ちると言っていたので多分そうなのだろう。
(じゃ、じゃあ、誰かの願いが既に叶ったとか?)
私はそう思い、そわそわしていると、そのそわそわに気づいたのかアルベドは不思議そうに私を見た。
そして、私の考えを読んだかのように口を開いた。
「いや、安心しろよ。きっと、お前の願いが叶ったわけじゃねえから」
「酷い! 別に、叶ったとか叶って欲しいとかは思っていないから! って、アルベドだってその様子じゃ星栞に書いた願い叶ってないみたいじゃん」
「そうだな。やっぱり、あんだけある中から一つなんて、選ばれるわけねえよな」
と、アルベドは少し残念そうに言った。
私だって、期待していたわけじゃない。だって、どれだけあそこにつるされていたか分かっていたから。だから、初めから叶うなんて思っちゃいない。
そう、肩を落としていると、フワッと私の前に温かい白い光が舞い降りてきた。
(ほたる……?)
そう思って、手をかざしてみると、その光は私の指先に触れた瞬間パンッと弾けた。その粒子は私の身体へ流れ込んでくる。
【隠しクエスト:星流祭の星栞に願い事を書こう! クリア!】
(ええ―――ッ!?)
いきなり表示されたそんな文字に、私は心の中で驚愕の悲鳴を上げることしか出来なかった。