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第71話「光と闇の王」
神と悪魔の軍勢が激突する中、天空の神殿奥深く――
ただ静かに、異様な気配が降り立った。
「……久しいな、アダム」
その声は、空間ごと震わせるような闇の圧。
姿を現したのは、漆黒の王冠を戴いた“闇の王”サタンだった。
黄金の光を湛える大広間の中央に、静かに立つ男。
白銀の髪、穏やかなまなざし。
神々の頂点、最高神アダムは、来訪者を迎え入れた。
「……ようやく姿を見せたか、サタン。
和解のために来た、とは言わないだろうな」
サタンは笑う。
「当然だ。交わす言葉など、とうに捨ててきた。
この宇宙は、“混沌”によって再編されるべきだ。
お前の“秩序”と“光”は、もう不要だ」
アダムは静かに手を組む。
「この宇宙は、まだ未完成だ。
自由を望んだルシフェルのように、進化を信じる者もいる。
だが、お前はそれすら奪うのか?」
「違うな、アダム。俺は“決定”を下す王。
意思すら必要ない。支配の下、すべてが安定するのだ」
そして、サタンは懐から漆黒の宝玉を取り出す。
その中には、深淵すら閉じ込められたような虚無の闇が渦巻いていた。
「これは……!」
「“闇の宝玉”。全ての混沌を凝縮した、封印と吸収の神具。
そして今、貴様を――取り込む」
サタンが地を踏みしめる。
瞬間、大地がねじれ、空間が闇色に染まった。
アダムは咄嗟に神杖を掲げ、神域の光で応じる。
「させはせん!」
激突する光と闇――
だが、サタンの力は予想を超えていた。
先ほどまでの悪魔たちの力とは、まるで異質。
空間ごと飲み込む闇の奔流が、アダムを覆っていく。
「――封印せよ、《闇の宝玉》」
アダムの周囲に無数の魔陣が浮かび、
彼の身体が動きを封じられたかのように硬直する。
「……っ、まだ終わっていない!」
アダムは神力の極光を放つも、サタンはそれをすべて呑み込むように笑う。
「光も、秩序も、希望も――
全て俺が“支配”する!」
そして――アダムの姿は、闇の宝玉に吸収された。
神の王、封印――
世界が一瞬、息を止めたかのようだった。
サタンの身体に、黄金の光と漆黒の闇が混ざり合う。
その姿は、王を超え、**“光と闇の最強の存在”**へと変貌していく。
サタン「これが“完全なる王”の姿だ……」
彼の目に、もはや恐れも迷いもなかった。
ただ“支配”への確信だけが、そこにあった。
――神なき今、誰がこの暴走を止められるのか?
次回、第72話
「希望なき支配」
全宇宙の運命が、大きく揺らぎ始める――