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――学園の卒業式と、ダンスパーティーの日がやって来た。


帝国に行っていた間に、カリーヌは沙織のダンスパーティー用のドレスをオーダーしてくれていた。

用意されていたのは、シュヴァリエの髪色のよう素敵なドレスだった。


「カリーヌ様! このドレスにアクセサリー、とっても素敵です!」

「ふふっ、喜んでいただけて嬉しいですわ。今回は、イヤリングをお揃いにしてみました!」


魔石が埋め込まれた、品の良いイヤリング。


「実はですね……」と、カリーヌは悪戯っ子のように微笑んだ。

いつも突然、危険な所に行ってしまう沙織を心配し、イヤリング型の通信魔道具を、ステファンに作ってもらったらしい。


(うーん。……本当のチートは、私よりステファンなのでは?)


そんな疑念を持ってしまう。


肝心のエスコート相手は決められず……結局、沙織はガブリエルにお願いしたのだ。



式典も終わり、ダンスパーティーの準備が始まった。


皆それぞれに、エスコート相手を待ったり、迎えに行ったりするのだが。沙織は約束の時間まで、ここでガブリエルを待つことになっている。


――ふと、ホールの外が騒がしくなった気がした。


何かあったのかと思い、沙織も慌てて外へ出てみると……上空には何と青龍の姿があった。


「……ふぇっ!? ……シュヴァリエ?」


沙織は起こっている事態に混乱する。

青龍は、学園に向かって下降してくると……途中で人の姿になり、沙織の目の前に降り立った。


「ど、どうして?」


ダンスパーティーに相応しい、正装に身を包んだシュヴァリエは、格好良すぎだ。

その上、あまりにも衝撃的な登場で、注目の的になってしまっている。


「サオリ様、ご卒業おめでとうございます。どうか、私にエスコートをさせて下さい」

「は、はい!」


ドキドキして、思わず返事をしてしまったが……。

はっ!と、ガブリエルの事を思い出してキョロキョロする。


「アーレンハイム公爵は、あちらです」


シュヴァリエの指した方を見ると――カリーヌとステファンが微笑み、ガブリエルとミシェルは苦笑していた。


(え……まさか、お義父様)


シュヴァリエが来ることを、事前に知っていたみたいだ。

けれど、青龍で現れるとは、思ってもみなかったのだろう。


「申し訳ありません。もう少し早く、到着する予定だったのですが……」


シュヴァリエは何かを取り出すと、跪く。


「どうか、私に……これから先、一生をかけてサオリ様を守らせてください。そして、ずっと私のそばに居てください。こちらを、受け取っていただけますか?」


それは、綺麗な箱に入った、指輪だった。


「はい……、ずっと……シュヴァリエと一緒にいさせてください」


嬉しさで声が震える。

シュヴァリエは破顔し、沙織の左手の薬指に指輪をはめた。


「今度、あちらの世界のご両親にも、ご挨拶に行かせてくださいね」


耳元でそっと囁かれたシュヴァリエの言葉に、思わず抱きついた。


「シュヴァリエ、ありがとう! 大好き!!」


祝福の嵐の中、シュヴァリエにエスコートされた沙織は、ダンスパーティー会場へと向かった。




◆◆◆◆◆




その日――。


千裕は高校から帰ってくると、何となく引き出しを開けた。


「えっ? うそ……!?」


そこには、ある筈の物が無かった。


『乙女ゲーム』のパッケージ、更にはゲーム本体や保存しておいたスチルも全て、真っ白になっていた。


千裕も会った、あの見目麗しい美男美女が全て消えていたのだ。


「もしかして――沙織?」


沙織は、向こうの世界を現実だと言った。

それなら、同じ世界がゲームの中に存在するのは変ではないかと、千裕は漠然と思っていたのだ。


(だって……)


ゲームは作られた世界で、現実では無いのだから。

つまり、現実ではない方。世の中から、このゲームそのものが消えたのだ――。


「このゲーム結構人気あったから……こりゃ、荒れるなネットが」


いや、もしかしたら――。


(最初からゲーム会社まで架空で、全部が無かった事になっちゃってたりして。まあ、ゲーム会社はさておき……)


明日になったら、誰もゲーム自体を覚えていないかもしれない。多分だが、千裕はその予感が当たりそうな気がした。


「あはっ! きっと沙織が、向こうの世界を現実にしちゃったのね!」


沙織ならやりかねない。


「まあ、私は絶対に沙織のことは忘れないけどね! おーい! たまには、こっちに帰って来いよー!」


千裕は何も無い天井を見上げて叫ぶと、にっこり笑った。

悪役令嬢は良い人でした

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