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「お前らはカエルの卵でも食っとけ〜!w」


看守はどこから取り出したのか、カエルの卵を持っている。


「うわぁぁぁ!気持ち悪!!」

「しんちゃん食べて〜!!あお達気持ち悪くて食べられない!」

「えぇぇぇ!?無理なんですけど!!気持ち悪い気持ち悪い…!」

「文句言うなー!ほら食えー!」


看守達はよくとんでもない無茶振りを俺に押し付けてくる。

看守は剣を持っていて、食べなければ切られるだろう。


「うぅ…っ!」


俺は息を止めてカエルの卵を一気に飲み込んだ。


「えっちょ、ガチ!?」

「ぉえ…まっず…」

「よぉし食ったな!それじゃあ食事の時間は終了だ!房に戻るぞ!」


俺は口を抑えフラフラと食堂を出た。

何が気に入らないんだ…?看守は何度も剣を振ってくる。


「おい、しんどうじ顔色悪いぞ〜?」

「だい…っじょぶです…」

「そうか?じゃあ早くついてこい!」



「それじゃあ、静かに寝るように!おやすみ!!」

「おやすみ〜、看守〜」

「よし…今日は進展がたくさんあったな!」

「そうだね、今日のしんどうじさんのカエルの卵を食べるところはびっくりしたよ〜」

「…あはは…、明日もギャグやらないととか最悪…」

「wwwどんま〜い」

「それじゃあおやすみ〜!」



「うぇ…っ…おぇえぇっ…げぇ…」


口からどんどん出てくるタピオカのような黒い粒々。探索中にあおいちゃんからもらったパンのかけらも一緒に出てきてしまった。

気持ち悪い…目の前がグルグルする。

カエルの卵食べちゃってたけど大丈夫かな?

明日は普通にご飯食べられるかな…

あ、ギャグをしないともらえないのか。

どんなギャグをしようか…?そんなことを考えていると、突然睡魔が襲ってきて、俺は深い眠りへとついた。


「ん…っ…朝…か……っ!ぉえぇっ…!げぇっ…げほっ」


起きて間もなく、吐き気が襲いかかる。

もちろん昨日全部吐き出したので、えずいたとて何も出るものはない。

ずっとえずいていると看守もぷっちー達も起きてしまう。

俺はベットに横たわり、口元を押さえながら目をぎゅっと瞑った。

眠れ…眠れ…眠れ眠れ眠れ…!



「おぉ〜い、朝だぞ〜起きろ〜!」

「看守おはようございまーす!」

「おはまーす!」

「…っ…ぇう…」

「?おーい、しんどうじ〜?」


ぷちぷち看守がどれだけしんどうじの名を読んでもしんどうじは目を瞑り荒い呼吸をしている。


「おーい!しんどうじ!起きろ!」


ぷちぷち看守はしんどうじの体をゆする。

するとしんどうじはゆっくりと目を開けた。


「んぇ…あ、看守…おはようございます…」

「全く、びっくりしたんだぞ!お前、大丈夫か?顔色悪いぞ?今日は医務室で休むか?」

「…いや、大丈夫です…今日はとびっきりのギャグするので…、楽しみにしててください…!」

「…あ、あぁ…それじゃあ、朝礼を始める!今日は___」




「自由時間だ!脱走するなよ?」

「しませんよーん!」

「するのはしんちゃんくらいですって!」

「し、しないわ…!」

「おーおーわかったから、すんなよ〜!」

「よし…看守いったね?」

「それじゃあ探索行こう!」


不味い、目の前がグルグルとしている。

この状態で探索なんていけない。


「…今日は俺が看守見張っとくよ…2人とも、行ってきて…」

「わかった!」




「はぁ、はぁ…気持ち悪い……お腹すいた…」


何かご飯を食べれば少しは元気が出るかもしれない。必死でポケットを漁るが、食べられそうなものは何一つない。


「食べ物…何か食べられるもの…!」


フラフラと自由広場を彷徨っていると、目の前に焼いた肉がある。

肉の持ち主は看守だった。


「食べたいか?」

「食べ…たいです…」

「やっぱ、とびっきりのギャグ次第だよな〜!!」

「っあ…」


そうだ。俺は朝、とびきりのギャグを見せると言った。だから看守は期待してるんだろう。

つまり、この苦しみから解放されるのはギャグをした後、食事の時間だ。

食事の前には必ず労働をする。こんな状態で働けと言うのか…?


「肉じゃなくてもいいので…、何か食べ物をくださいっ…」

「うーん、じゃあこれならやる!」


看守はそういい、腐った肉を渡してきた。

腐った肉、これを食べたらまた吐いてしまうだろう。でも食べなくちゃ。


「ぁぐっ…ぉえ、…ぅぐっ…ぇっ」


美味しくない、この世の終わりのような味がする。でも食べなきゃもう死にそうだ。


「そんな腹減ってんのか?しゃーねぇな、リンゴもやるよ。」

「ありがとう…ございます。」


リンゴは今食べると吐いてしまいそうだからポケットに入れておいた。

看守がいなくなり、俺が座り込んだ直後、お腹が痛くなった。

吐き気も酷い。吐いたらバレる。どうしたらいいか?

一つ案を思いつき、俺は砂場へと移動する。


「うぇっ…!げぇっ…ごほっごほっ…!ごぼ…おぇ〜っ…」


砂場に吐きだし、砂を上からかける。

これならバレないだろう。噴水の水で軽く口元を洗い、りんごを少し齧った。

もう少しで自由時間も終わるだろう。

先程よりは体調もマシになった。労働もきっと上手くいくはずだ。


「はぁ…っ…はぁ…、あ、れ…?」


さっきから呼吸が安定しない。なんだか世界がグラグラしてる?


「は、はぁ…はぁっ…ひゅーっ…はぁ、ぅ…っ?」

「っ…は、ぁー…ひゅっはーっひゅ…うぇ…っ…ぅ…」


まずい、息が苦しい。吸っても吐いても肺に酸素が届かない。

口を一度塞ごうとしたとき、俺の体はバランスを崩し、少し固い芝生に倒れ込んだ。

そしてだんだんと瞼が下がっていく。


「…ぁ…」



その頃、あおいとひなこは満足げな笑みを浮かべ、水路を泳いでいた。


「よーし、ひなこちゃん!なんか不思議な水路見つけたね!」

「しんどうじさんにも教えてあげよー!」

「そういえばここって自由広場の真下の水路だよね?」

「そうだけど?」

「しんちゃんの声聞こえなくな〜い?」

「確かに!もしかしてサボってんじゃねーの?」

「うわー、よくないね〜」

「しんどうじさ〜ん!って…しんどうじさん!?」

しんどうじはぐったりとしていて、瞼は重く閉じられていた。




「…ん…あれ、ここ…医務室…?」

「起きたか?お前自由時間にぶっ倒れたんだぞ!?」

「…そうだったんですか…じゃあ…今は刑務作業ですか…?」

「そうだが…今は休めよ?」


ただでさえ探索で迷惑をかけているのに…?

仕方ない。


「…はい」

「それじゃあ、私は見回りに行ってくる。安静にしてるんだぞ!」

「…はい」


「…行ったかな…」


医務室を見渡し、誰も居ないことを確認する。

俺は近くにあった作業台で鉄の剣を作る。

そして腕に当て、勢いよく横に引いた。

血がぶしゃっと噴き出るが関係ない。


「足手纏いにならないように…いじられ役で居られるように…」


何をしても誰にでも迷惑をかけてしまう自分への罰を込めて。たくさん腕に傷を刻む。

時計を確認し、適当な塗り薬を塗り込む。仕上げに包帯をぐるぐる巻きし、 作業服を被せた。これでバレないはずだ。

見られたとしても、点滴を打ってもらったとでも言えば信じてもらえるだろう。

そして医務室を漁り、包帯と塗り薬をポケットに入れた。


「おーい、しんどうじ〜、回復したか〜?」

「…はい!もうピンッピンですよ!」

「おー、それはよかった!それじゃあ飯の時間だー!」

「ギャグ楽しみだな〜?w」


そういえば、お昼はギャグをしないといけなかったっけ。昨日少しだが考えてきた。

あおいちゃんに少し手伝ってもらおう。


「あおいちゃん…〜〜…〜〜?」

「えぇっ!?ガチでやんの!?わかったけど〜…」

あおいちゃんは渋々OKしてくれた。

「じ、じゃあ行きます…。じゃんけん…」

「グー!!」

「ぐはぁっ…!いや、じゃんけんの域超えてんだろー!!」

看守たちの反応はどうだっただろうか?

___成功だ。看守達は頰を真っ赤に膨らませ、肩を振るわせていた。


「ちょっ、wwやっぱしんどうじが怪我するギャグっておもろいな、ww」

「じゃあしんどうじ!今日は食事ありだ!」

「!ありがとうございます…!」


看守達は俺が怪我したりするギャグが好きということか。コツを掴めた。

…でも、これって本当に俺なのか?

違う…俺はこんなイジられ役なんかじゃない…

このイジられ役の定位置でいないと俺は生きていけない。あぁ、苦しいな。


「…もう…疲れたよ。」


小さく呟いた声は食堂に響く声の主達にの耳に入ることはなかった。

イジられ役はもう疲れた。

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