「紹介が遅れたね。僕はドズル。こっちはMENだよ。」
上司っぽい人……いや、ドズルさんは、俺たちに自己紹介をしてくれた。
おらふくんは、ゆっくりと会釈をした。人見知りが出てるなぁと思う。
「1個聞きたいんだけどさ……。」
ドズルさんが、申し訳なさそうな表情をしながら口を開いた。
「奇病があるって………本当…?」
それを聞かれるだろうと思った。誰かから聞いたんだろう。
おらふくんがビクッと跳ね上がるのが、視界の端に映った。
「だからなんですか。俺たちを世界の研究科に突き出すつもりですか。」
俺はドズルさんに反抗するように睨んだ。ドズルさんは「いやいや…。」と首を横に振った。
「その……余計なお世話かもしれないけど、もしかしたら奇病の治し方が分かるかもしれないからさ……!」
俺はドズルさんの話に食いついた。雪女病をどうしても治したい。ドズルさんは「分かった。」と言った。
「僕たちと仲がいい、ぼんじゅうるっていう情報屋がいるんだ。調べれるか聞いてくるよ。」
そう言って、この場から離れていった。
「おんりー、本当に、治るのかな……?」
振り返ると、おらふくんはその場で体育座りをしてうずくまっていた。
「大丈夫だよ。俺がきっと治してみせるよ。」
「おんりーが俺の奇病を治してくれるなら、俺がおんりーの奇病を治してあげるね。」
おらふくんは、へにゃっと効果音が付きそうに可愛らしく笑った。
「ちょ、ちょっと待て……。」
そこで、外からMENの焦る声が聞こえた。
2人で「どうしたの。」と聞くと、MENは顔を真っ青にしながら
「2人とも奇病持ちなのか……?」
と震えながら呟いた。
「なに。上から聞いてないの?」
「聞いてない‼‼俺は、おんりーが奇病持ちってことしか伝えられてないぞ……‼‼おらふくんも奇病持ってるのか…!?」
俺は確実に警察に奇病のことを言った。何もないところから剣が出せることも、おらふくんを守るためなら瞬間移動できることも。
おらふくんの方を見ると、おらふくんは「俺はちゃんと言ったよ…?」と言う。
…冷や汗が流れてきた。……そう、俺は気づいてしまったのだ。
「早く、ここから逃げないと……。」
「え…?どういうこと?おんりー?」
「何に気が付いたんだ!?」
俺の奇病は、おらふくんがいないと役に立たないようなものだ。だけど、おらふくんの奇病は、雪だるまくんがいることでなっている奇病だ。研究するにはうってつけの奇病。ということは。
「おらふくんは、狙われてるかもしれない……。」
「えっ……どうして!?」
おらふくんは戸惑いながら言う。俺は、俺が考えたことを伝えた。
おらふくんは白い顔をさらに白くして、「嘘だ…。」と呟いた。
と、そこでドズルさんが1人の男を連れてきた。
ドズルさんは、真っ青な俺たちを見て、何があったのか聞いてきた。俺たちは、必死に今まであったことを伝えた。
「そんなことが……。俺は今からそのへんを調べてくる。だから、そのうちに奇病について調べておいて。」
ドズルさんは戻ってきてすぐ、出ていってしまった。
「こんにちは。情報屋のぼんじゅうるです。ここにくるまでに、ドズルさんに全部聞いたから。」
そう言って、手に持っていたノートパソコンをパカッと開いた。
「じゃあ、まず雪女病から調べよう。」
ぼんさんは、カチカチとキーボードを鳴らしながら調べ物をしていく。
雪女病。
体温が雪のように冷え、触れた人は低体温症になってしまう。酷い場合は死んでしまう。もしくは、触れた箇所の切断。
物には通用せず、哺乳類のみに影響が与えられる。
雪女病にかかっている間は、雪だるまの形をした妖精が、体にまとわりつく。
髪の毛は、自然と雪色に変化し、目は氷色になってしまう。
太陽に直接当たると、皮膚が焼けて、火傷を負う。
「切断……っ!?」
おらふくんは、ぷるぷると震え始めた。
「大丈夫。被害者……いや、加害者は切断までは至らなかった。そんな重症じゃないそうだ。」
ぼんじゅうるさんは、おらふくんにニコッと笑いかけた。
凄い対応力に感動してしまう。
「じゃあ、次は騎士病だね。」
「はい、お願いします……。」
正直、騎士病について調べられるのが嫌だった。
俺は騎士病も雪女病も知ってるけど、おらふくんは騎士病のことについて、今日詳しく知るはずだ。
騎士病
何もないところから、剣を出すことができる。
大切な人が傷つくと、騎士病にかかっている人は、死に一歩近づく。
大切な人の傷が癒えても、騎士病にかかっている人は一歩近づいたまま。
大切な人を守りきれなかった場合、大切な人を殺した人は、騎士病の呪いを受ける。その呪いは、常に死の淵に立たされること。
大切な人は、1人だけ選ぶことができる。
騎士病の説明を聞いた途端、おらふくんの雰囲気がガラッと変わるのが分かった。正直、ゾワッとした。
「おんりー‼‼死に一歩近づくってどういうこと!?」
おらふくんは、泣きそうな顔で叫ぶ。
「おんりーは知ってたの!?なんで教えてくれなかったの‼」
だめだ、俺のせいでおらふくんが傷ついてる。
「ねぇ、答えてよ‼知ってたの!?」
「………知ってたよ。騎士病になったときからね。」
おらふくんは、ワッと泣き始めた。
「ごめん、おんりー……。俺のせいでおんりーが死んじゃうなんて嫌だよ……‼‼ぼんじゅうるさん、騎士病の治療法はないんですか…!?」
ぼんじゅうるさんは、もう一度カチカチとキーボードを叩く。
「……雪女病も、騎士病も、何も書いてないよ。ブログだと、雪女病も騎士病も、死ぬまでずっとかかっている人が多いそうだ……。」
ぼんじゅうるさんは、また泣きそうなおらふくんを見て「力になれなくてごめん。」と力なく言った。
コメント
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おんりー... おらふくんに心配かけないために言わんかったんやろうなきっと... 不治か...治す方法があるけど、難関すぎて“普通の人”は手が出せないって事であって欲しい...