今、俺たちは外にいる。ドズルさんとMENに許可をもらって外出している。
俺たちの後ろから、ドズルさんとMENが着いてくる。監視係だから。
「見て、おんりー‼」
おらふくんが指さした先には、大きくて綺麗な満月がある。
「今日は、地球に月が近づく日なんだ。」
ドズルさんは、満月を見て微笑んでいた。MENは、瞳をキラキラさせている。
「あ、そうだ。」
MENは何かけば思いついたかのように、ドズルさんに何か耳打ちをした。
ドズルさんは「そうだね。」といって、こっちを見た。
「せっかくだから、2人きりが良いよね。僕たちはここにいるから、2人で好きなとこ行っておいで。」
俺は、親切な2人にお礼を言って、おらふくんと歩きだした。
俺たちが向かったのは、月がよく見える丘。
「昔、2人でこうやって月見てたよね。」
おらふくんが、月を見ながら思い出話をし始める。俺は、それに「うんうん。」と相づちをうつ。
「昔は2人べったりだったけどさ、今は奇病のせいで、なんか距離ができちゃったような気がする。」
俺がそういうと、おらふくんは「うん……。」と言いながらポロポロと涙を流し始めた。それにつられて、俺も涙を流してしまう。
おらふくんは「あはは。」と笑って、俺の方に手を伸ばしてきた。
その行動に固まってしまう。おらふくんは、奇病を忘れているのかもしれない。………でも、それは違ったようだった。
俺とおらふくんの涙は、月光に照らされていた。輝く俺の涙に、おらふくんが手を触れたら瞬間。俺の涙は、一瞬で凍ってその場に落ちてゆく。
そして、雪だるまくんが、満月の方へと移動していき、ゆっくりと溶けていった。雪だるまくんからは、小さな雪だるまくんの人形が生まれた。
俺は、もしかして、と思い、おらふくんの涙を拭った。
俺の手は、温かいままだ。
そして、おらふくんが静かに大粒の涙を流し始める。
「治ったの……?……治ったよ、おんりー……‼」
そして、おらふくんが俺に飛びついてきた。温かいおらふくんの体温が伝わってくる。
俺は、その場で手を広げた。剣は出てこなかった。
「おらふくん……っ‼……俺も、俺も治ったよ……‼」
おらふくんは、涙で潤った目を見開く。そして「よかったぁ…‼」といって笑う。俺も、嬉しそうなおらふくんに微笑む。
多分だけど、雪女病の治療法は、満月に照らされた大切な人の涙に触れることだ。その大切な人は、俺にとっておんりーだ。
そして、おんりーの騎士病の治療法は、俺の悩みが無くなったことだと思う。
俺はずっと、雪女病のせいで、おんりーに迷惑をかけてるんではないかと悩んでいた。でも、雪女病が治ったことで、悩みが無くなって、おんりーの騎士病も治った。
本当に治って良かったぁ……。
「ドズルさん‼MEN‼」
おらふくんは、2人を見つけて元気よく声をかけた。
そして、さっきあったことを説明すると、2人はパァアっと目を輝かせた。
ドズルさんはスマホをだして、ぼんじゅうるさんに連絡をする。
すぐに返信が来て、そこには喜びと祝福のメッセージが書かれている。
その文に、みんなで笑みを零す。
「本当に、良かったぁ……。」
おらふくんは、その場にへにゃりと座り込んでしまった。
「本当に、良かったね。」
俺は、精一杯の喜びを含む声で言った。
後から分かったことだけど、おらふくんの奇病がMENたちに伝わっていなかったのは、雪だるまくんに価値があるからだそうだ。
その雪だるまくんは、とても珍しい個体であるため、悪い噂でいっぱいだった警察は、流石に目がくらんでしまったんだそう。
その警察はちゃんと捕まったし、おらふくんの奇病は治ったから、もう意味はないけど。
今でも、おらふくんの机の上には雪だるまくんの人形が飾られている。
もう、人形に触れても雪女病にはならないそうだ。
でも、おらふくんの綺麗な漆黒の髪と、ルビーのような真っ赤な瞳は無くなってしまった。
おらふくん自身は「白髪も結構良いけどなぁ。」なんて呑気なこと言ってるけど、実を言うと俺は前のほうが好きだった。
でも、もちろん今のおらふくんも好きだ。
コメント
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ハピエンだぁぁぁぁ! 完結おめでとうございます!お疲れ様でした!めちゃめちゃ良かったです!