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雫
32
🎀もちたん🎀
5,424
「――吉田さん、佐野さん、お待たせしました! インタビューの準備できました!」
ドアの向こうからスタッフの声が響いたのは、二人が息を整え、急いで衣装を着替え終えたまさにその瞬間だった。
楽屋の中には、まだ微かに熱いフェロモンの名残が漂っている。
太智と舜太が必死に空調のリモコンを操作して換気を強め、柔太朗がさりげなく消臭スプレーを空間に吹き付けた。
🤍「大丈夫、完璧に隠せてる。……行こう」
柔太朗が短い声で二人に合図を送る。
その冷静な瞳に、勇斗と仁人は深く頷いた。
仁人は鏡の前で前髪を整え、いつもの「M!LKのリーダー」としての凛とした表情を作る。
先ほどまで勇斗の腕の中で甘い声を上げて泣いていたオメガの姿は、もうそこにはなかった。
💛「お待たせしました。もうすっかり体調も良くなったので、よろしくお願いします!」
仁人が笑顔でドアを開け、5人でインタビュー会場へと向かう。
隣を歩く勇斗は、仁人の歩幅が少しだけぎこちないのを見逃さなかった。
自分の注ぎ込んだ熱が、まだ仁人の身体の奥深くに留まっている証拠だ。
勇斗は自身のαのフェロモンを今度は優しく、仁人を労るように薄く漂わせながら、並んで歩いた。
インタビューは何事もなかったかのように無事に終了した。
5人の息の合った掛け合いに、ライターもスタッフも終始笑顔だった。
楽屋でのあの絶体絶命の限界の時間が嘘のように、完璧なアイドルとしての仕事をやり遂げたのだ。
その日の夜。
すべてのスケジュールを終え、二人は再び勇斗の部屋へと戻ってきた。
静まり返ったリビングで、仁人はソファーに深く身体を沈め、大きなため息をついた。
💛「……本当に、一時はどうなるかと思った。みんながいてくれなかったら、今頃僕は……」
🩷「ああ。みんなのおかげだな。本当に感謝しかないわ」
勇斗はキッチンから温かいココアを二つ持ってきて、仁人の隣に腰掛けた。
マグカップを受け取る仁人の指先を、勇斗はそっと自分の大きな手で包み込む。
🩷「仁人」
💛「ん?」
🩷「俺さ、決めたよ」
勇斗の真っ直ぐな瞳が、仁人を捉える。
そこには冗談や迷いの色は一切なく、優性αとしての、そして一人の男としての揺るぎない覚悟が宿っていた。
🩷「もう、お前を一人で戦わせない。今回のことでよく分かった。お前のヒートは、もう薬じゃ抑えられないレベルにきてる。……俺の『番』になってくれ、仁人」
『番』になる――。それは、αがオメガのうなじにある腺を強く噛み、一生涯のパートナーとして血の契約を交わすことを意味する。
一度番になれば、オメガのヒートは特定のαによってのみ完全にコントロールされ、今回のような突発的な暴走は起きなくなる。
しかしそれは、お互いの人生を完全に縛り合うという、引き返せない運命の選択でもあった。
💛「勇斗……いいの? 僕はオメガで、グループのリーダーで……僕なんかを番にしたら、勇斗の人生だって……」
🩷「何言ってんだよ。俺はお前だからいいんだ。本能とか、オメガだからとかじゃねえ。俺が心の底から愛して、一生守りたいって思ったのは、吉田仁人、お前だけだ」
勇斗の力強い言葉が、仁人の胸の奥に深く、真っ直ぐに突き刺さる。
仁人の目から、また一筋の涙が零れ落ちた。
しかしそれは、恐怖や孤独の涙ではなかった。
愛する男にすべてを委ねる、至上の幸福の涙だ。
💛「……うん。お願い、勇斗。僕を、君の番にして」
仁人は自らシャツの襟元を緩め、まだ誰にも傷つけられていない、真っ白で綺麗なうなじを勇斗の前に差し出した。
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コメント
2件

最高すぎます…!! ピンチを乗り切れてよかった…!!!
このお話好きすぎます。いつも本当にありがとうございます😭 続き楽しみにしてます!!