カポックのためにアクアプラントポットを購入した。
これからの季節を考えると水をため込む鉢の方がいい。
これならうっかり水やりを忘れても枯れないし、水のやりすぎが原因の根腐れも防げる。
晴子はバルコニーにしゃがむと、ぱっと広げた子供の掌のような葉っぱを見て、静かに微笑んだ。
悠仁からの連絡はない。
香代子の容態を気にしたふりをして一度だけメールをしたが【もう大丈夫みたいだ】と返ってきたきり、後が続かなかった。
「――――」
膝に肘をつき、掌に顎を乗せる。
もう潮時なのだろうか。
悠仁は今も魅力がないわけではないが、腰のたるみや首の後ろの体臭に年齢を感じるし、悠仁に言わせると自分もそうらしい。
晴子はため息をつきながら立ち上がり、サンダルを脱いでリビングに上がった。
あの頃。
20歳やそこらの時には確かにあった熱情は、もう二人の間にはない。
香代子の目を盗んで会うスリルも、自分のものだけにしたいという独占欲も、いつしか失せてしまった。
その代わりに―――。
紫音が城咲にもらった黒薔薇の脇にある写真立てを手にする。
スーツ姿の輝馬。大学の卒業式に撮った写真だ。
見れば見るほど、悠仁によく似ている。
香代子が輝馬を見たらなんというだろう。
「えー、なんか輝馬君ってうちの旦那に似てなーい?」
まず驚いて笑う。
「…………」
数秒後、その意味に気が付く。
「……ねえ。どういうこと?」
そして親友と夫の裏切りを察して、怒りにかられる。
想像しただけで口の端がニヤけてしまう。
香代子の悔しそうな顔を思い浮かべていたら、体の中心が熱くなってきた。
健彦は会社。
紫音も凌空も学校で不在だ。
晴子はソファに仰向けになった。
プリーツスカートを捲り上げながら、シルクのショーツに指で触れる。
足を軽く開いて、その柔らかい割れ目に指を添わせると、上下に優しく擦り始める。
「は……」
熱い息が漏れる。
指先を立てて、割れ目の中心にある突起を、すくい上げるように刺激すると、びくびくと内腿が痙攣した。
「あ……」
腰が勝手に上がる。
指で少し強めに刺激するとその突起はたちまち硬くなり、シルクのショーツはヌルヌルと湿ってきた。
たまらなくなり、ローテーブルに置いていたスマートフォンを手に取る。
宛先をスクロールする。
それは、【市川健彦】と、【市川凌空】の間にあった。
迷わずタップする。
すると数秒もしないでコールが鳴り始めた。
『……もしもし』
輝馬の顰めた低い声がした。
この声だけで達してしまいそうだ。
悠仁の若い頃にそっくりなこの声でーー。
「輝馬?今、大丈夫?」
そう言いながら、背中の後ろにクッションをはさみ、再びスカートを捲り上げる。
『ああ、大丈夫だけど。まだ仕事中だから早めに済ましてくれると助かる』
スマートフォンをクッションで耳に押し当てながら、すでに濡れそぼった秘部に再び指を這わせる。ぬるぬると滑るそこは、たちまち熱を持っていく。
「日曜日に来た時に……すごく、疲れていたみたいだから、気になって……」
『――?』
受話器の向こうの輝馬に当惑の色を感じる。
何か気づかれただろうか。
晴子は指を止めた。
『ああ、大丈夫だよ。あんなの一晩寝れば治るから』
輝馬のいつもと変わらない声が聞こえてきた。
よかった。バレてない。
「そう?ならよかったけど……」
再び指を動かす。
硬く尖った突起に、爪の先が当たりピンと弾いた。
「んッ……!」
明らかに艶の混じった声が出てしまう。
『どうしたの?』
輝馬がまた困惑している。
聞かれたくない。
でも、
聞いてほしい。
「あん、それから……この間、パンツゥ、忘れていったから……アッ、大丈夫かなと……ああッ、思って……」
指は割れ目の中の、一番いいところを押し込んでいく。
『パンツなんて何枚もあるから大丈夫だよ。……何言ってんの』
少し苛立った輝馬の声。
似てる。
本当に――。
だって、
輝馬は―――。
晴子の指は、突起といいところを往復する。
強く。
そして早く。
『ごめん、マジで仕事中だから』
輝馬が通話を切ろうとする。
もう少し。
もう少しでイけるのに……!
「ごめんなさい……!最後にこれだけッ」
晴子は掠れる声で言った。
「……愛してるわ。輝馬……!」
『ッ……!』
輝馬が息を大きく吸いこむ音がする。
その息遣いを聞いた晴子は通話を切った。
「ああッ!は……ッ、あああッ、輝馬……ッ!」
晴子は足を大きく開き、太ももの付け根から指を直接滑り込ませて、ヌルヌルのそこを擦った。
突起を引っかき、奥まで指を突き入れた。
スマートフォンの代わりに写真立てを掴み、輝馬の笑顔を見ながら、指に合わせて腰を振る。
「あああッ、アン、あ、アッ、いく……イくうう!」
晴子は腰を高く上げ、自分の指にそこを押し付けながら、尻を震わせた。
「はアッ、ああッ、はあ……あ……」
呼吸が少しずつ落ち着いていく。
キンと軽く耳鳴りがして、脹脛がヒクヒクと痙攣する。
びしょびしょに濡れたパンティが冷たくなっていく。
晴子はふらふらと立ち上がると、それをつま先から抜き取った。
写真立てを元のサイドボードの上に戻す。
パンティは冷たいのに、体の熱は収まらない。
自分の指なんかじゃ到底物足りない。
自分よりも大きくて硬い体に抱きすくめられたい。
首元を吸われ、胸を揉みしだかれながら、腰を引き寄せられたい。
男に。
夫以外の男に。
「…………」
黒薔薇が目に入った。
その脇におざなりにおいてあるパンフレットを眺めた。
「来週、か……」
晴子はそれを見ながら低い声で呟いた。
コメント
1件
とても面白いです!私の好きなシチュエーションで凄い好き👍🏻👍🏼👍🏽👍🏾👍🏿