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月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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鷹槻れん

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究さんの提案はこうだった。
・柳川の前では、わざとラブラブなふりをする。
・キスや肉体関係は一切なし。
「でも……究さん、それじゃぁ……」
究さんに何のメリットもないし、もっと言うと私自身も柳川にますます誤解されそうで全然嬉しくない。
究さんは、「柳川は言凛ちゃんのこと満更じゃないと思っているはず」とか言って下さるけれど、私自身は柳川が、自分のことを異性として見てくれていないの、痛いほど分かっているつもり。
そんな状態で究さんと付き合うフリなんてしても、柳川は何にも感じないはずだ。
そればかりか、ますます私を恋愛対象から圏外に弾いてしまう気がして。
究さんだって、私と進展するはずのない恋人ごっこをするくらいなら、他の女の子に目を向けた方がいいに決まってるのに。
そんな、思っていることを全部ぶちまけたら、究さんにクスクス笑われた。
「俺さぁ、こう見えても結構観察眼ある方よ? 柳川のあの雰囲気、全く脈のない女の子への態度じゃなかったっちゃ。だって現に――」
そこで白衣のポケットからスマホを取り出して、「こんなに待たしちょるのに田中から何の連絡もこんし」って言うの。
究さんの言動の意味が分からなくて「え?」ってこぼしてキョトンとしたら、「だから、田中が呼んどるっちゅーのは柳川のでっち上げじゃったと思うよってこと」ってスマホを振るの。
「自分の言葉で言凛ちゃんが傷付いたっちゅーのはアイツも気付いとったんじゃないん? 俺がそんな言凛ちゃんを追いかけて行ったのも知っとったし、相当気になったんじゃろ。なのにさぁ待てど暮らせどなかなかどっちも戻ってこん。じゃけぇアイツ、業を煮やして探しにきたんと思うよ?」
そこまで言って「柳川も素直じゃないよね〜」って八重歯を見せてニヤリと笑うと、
「――やっと探し当てたと思ったらラブシーンじゃん? 絶対アイツ、焦ったんじゃって。すぐバレるような嘘までついて俺と言凛ちゃんの間に無理矢理割り込んできたんが何よりの証拠じゃと思うよ?」
そこで私をじっと見つめると、小さく吐息を落として、
「それにさ、俺だったらどうでもいい女の子のこと、めちゃくちゃ良い女とは言わんし、大切にしてやってくれとも頼まんわ」
言って、どこか寂しそうに淡く微笑むの。
「ねぇ気付いちょる? 言凛ちゃん。アイツ、言凛ちゃんのこと、〝良い女〟じゃなくて〝めちゃくちゃ良い女〟って言ったんよ?」
――無意識って怖いね。
ククッと笑ってそう付け加える究さんに、私、少しは期待してもいいの?って泣きたくなるぐらい胸が苦しくなった。
彼の言葉に救われた気持ちがして究さんをじっと見上げた私に、
「それにさ、もし違ったとしても――」
言って私の手を握ると、
「ごっこ遊びしよる間に言凛ちゃん、ホンマに俺のこと好きになってくれるかも知れんじゃん? 本音言うとさ、俺、かなりのトコ、それに期待しちょるんよ。だってほら、俺って自分で言うのもなんじゃけど結構ええ男じゃと思うし」
ニッと八重歯を見せて笑われて、私は瞳を見開いた。
確かに究さんはすごく優しいし、人をよく見ている凄い人だ。
私を好きだと言ってくださったのが嘘みたいに素敵な男性だと思うの。
きっと柳川のことを好きじゃなかったら私、究さんとお付き合いすること、厭わなかったと思う……。
そう思える人――。
だからこそ、余計に私のために彼が時間を使ってくださると思うと、やっぱり申し訳ないと言う気持ちがふつふつと湧いてきて。
「でも……あの、やっぱりそれは究さんに悪いです……」
それで、尚も難色をしめそうとしたら、究さんが私の唇に人差し指を当てて、スッと言葉を封じて、
「ことり、年長者の意見は黙って聞いておくもんよ?」
とか、ずるいです。
先輩の言うことは聞くべきだと言われたら、私、逆らえないじゃないですか。
***
「分かり……ました。でも……あの、究さん……。こ、恋人の真似事の間はホントに……」
「――大丈夫。ホンマ、誓ってフリだけしかせんけぇ」
眉根を寄せて究さんを見上げた私に、
「先に提案したように、キスもせんしおっぱいも揉まん! 約束する!」
って、もう、それ――。
「セクハラです!」
真っ赤になって言ったら
「ん。ええ顔。元気になったみたいでよかった」
って、心底優しい笑顔で頭をポンポンってソフトタッチで叩かれた。
私はそんな究さんに、小さく「有難うございます……」ってお礼を言った。
コメント
2件
先輩いい人!、
ああ、もうこの回……胸がぎゅっとなりました。 究さんの「めちゃくちゃ良い女」の指摘、あれだけで言凛ちゃんの世界が変わったんじゃないでしょうか。自分を肯定的に見てくれる人が隣にいるって、それだけでどれだけ救われるか。しかも究さん、自分の気持ちもさらけ出して「ごっこ遊びの間に好きになってくれてもええんよ」なんて言うから……ずるいですよ、あの人(笑)。言凛ちゃんが「柳川じゃなければ厭わなかった」と思うのも分かるし、それがまた切ないです。 お互いの距離がこれからどう動くのか、続きが気になって仕方ないです!