「うんうん。ルカは髪の毛長くてヘアアレンジのやりがいがあるってものね」
「絵名は器用なのね」
「別にそんなんじゃないけどね。いやールカは素直で良かった。ほら、リンは論外だとして。奏ってあんまり乗り気じゃないから、中々結んだりできないんだよね。髪質似てるし、奏にやってるみたい。髪の毛も長いしね」
「絵名が楽しそうでよかったわ」
「ほんとにありがとね、ルカ」
編み込みをしてハーフアップや二つ結び、普通にポニーテールも。することもなく暇だったから色々なヘアアレンジを楽しめた。
こうやって、普段アレンジしない人の髪の毛をいじるのって楽しいんだよね。違った姿が見れたりするし。
コンセントがあったらコテで髪の毛巻いたりできたんだけど、そんなものないし。あ、でも跡いちゃって直せなくなるから、やれなくてもいいのか。
「何してるの?」
「あ、まふゆ!」
ルカの髪を梳かしているとまふゆに声をかけられた。今ならゴムもピンも沢山ある。ヘアアレンジし放題だ。私は早速誘うべくまふゆに近寄る。
「ルカの髪の毛で遊んでたの。写真見る?」
「ずっと?」
「そう。ねえ見て、ポニーテールめちゃくちゃ似合うんだけど、ハーフアップも大人っぽくて、ていうか何でも似合うんだけど。どう思う?」
「うん、いいんじゃない」
「二つ結びもさ、めちゃくちゃ可愛いくて、もうほらこれ見てよ──って、見てる?」
「ああ、うん。見てるよ」
自分の手を触っていたまふゆは、そう言ってから画面を見た。それ、ルカにも私にも失礼じゃない?
「……興味ないの?」
「そんなつもりはなかったんだけど」
「人間性出てきたね。悪い部分」
「そんなに態度悪かった?」
「うん」
「そっか」
気にしているのかはわからないが、今度はちゃんと腕を組んでこちらを見た。
「……絵名が結んでたの?」
「まあ、そうだね。他に人いないし」
「そっか……絵名が」
「何、上手だって言いたいの〜?」
「…………」
……そこで黙られると困るのだが。
まふゆは右足から左足に体重を掛け直し、目線を下にやった。
「あー……」
「え、何?」
「私も、それ、やって」
言葉の意味を理解するのに時間が必要になった。このルカの髪型のことだろうか。二つ結び……。
「…………えっと、この髪型にしたいってこと?」
「絵名が、やって」
「……うん。分かった。これでいいの?」
「絵名にやってほしい……だけ?」
「……あーそう、そっか。やるからやるから」
「うん」
伝えて満足したのかまふゆはもう目を合わせてきた。
「座っていればいい?」
「そうだね。この髪型がいいの?」
「絵名なら何でもいい」
少し足をふらつかせご機嫌な様子。昨日の電話といい、今日のまふゆもよく分からないな。
ルカの存在を思い出して、姿を探す。遠くには行っておらず、生暖かい視線と微笑みを浮かべこちらをただ見ていた。そしてそれから何も言うことなく歩いて行った。
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