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#異世界転生
ひより
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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臣桜
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「……ねえ、陽一さん。女の子だし、ひらがなの名前って可愛くない?」
「ひらがな?」
「うん。柔らかい感じで。……例えば、『すみれ』とか」
ひよりさんは、腕の中で眠る娘の頬を愛おしそうに撫でた。
僕はその横で、お腹にいたときの強烈な回し蹴りとイケメン医師に対する娘のデレデレぶりを思い出し、少しだけ遠い目をした。
(……『すみれ』か)
「……すみれもいいけど、もう少し他も考えたいかな」
娘の小さな手を見つめる。
ふと思い出した。
(……そういえば、王子谷、今ごろどうしてるんだろう)
***
桜が、舞っていた。風に乗った花びらが、ひとひら、肩に落ちる。
――あの頃の俺は“偽装恋人”なんて妙な関係をやっていた。
***
バレンタインデー当日。俺は小森と、カップル御用達のダイニングバーにいた。理由はもちろん――インスタの写真撮影のためである。店内は薄暗く、キャンドルの灯りが揺れている。席は、肩が触れ合うほど狭いソファー。
(……うわ、ガチカップル用……気まずっ。てか動悸がやべえ)
「王子谷さん! 正直に答えてください! 彼女さん、本当にいないんですか!?」
「彼女……? ああ、高校のとき以来っすね」
断り切れず、告白してきた子と何回かデートした。けれど「王子谷くんは私のこと全然好きじゃないよね」と愛想を尽かされて終わったのだ。
「……そうなんですね……」
口調は丁寧だが、彼女はあからさまに引いた様子だった。
(めちゃくちゃ引かれてる!?)
(なんで!? 俺、事実しか言ってねえのに!?)
一方その時、小森は。
《高校からいないなんて! それって、“彼女いない”んじゃなくて……“作らない主義? つまり……相当遊び慣れてるってこと!?》
空気を戻そうと、俺は慌てて話題を変えた。
「……いや、マジで小森さんには感謝してるんすよ」
「え?」
「彼氏(仮)になってから、社内のストーカーが激減して。おかげで仕事の生産性、過去最高っすよ」
「お役に立ててるなら良かったですっ!」
ぱっと笑顔が戻った。
「私の方も、元カレからの迷惑LINE攻撃が止まって、めちゃくちゃ助かりました!」
彼女は「ここのお店、お野菜が新鮮なんです! ほら、いっぱい食べて栄養つけなきゃダメですよっ!」と喋りながら、サラダを取り分けてくれる。
「……だからこそ、なんですけど」
俺はフォークを置いた。
(小森は優しくて、社内でも人気あるし……本当にいい奴。だからこそ、早く幸せになってほしい。偽装彼氏の俺なんかと一緒にいるなんて、もったいなさすぎる……)
「もし小森さんに“本当に好きな人”ができたら――」
「……え?」
「この契約、いつでも解消してもらって大丈夫なんで」
コメント
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読み終えました。第215話、じんわり心に沁みました。 現在の陽一さんたちの柔らかい空気から、過去の王子谷の“偽装恋人”時代へ切り替わる構成が好きです。特に「もし本当に好きな人ができたら契約解消していい」という台詞、彼の優しさと奥ゆかしさがにじんでいて切なかった……。小森さんの「元カレからのLINEが止まった」というエピソードも、二人が互いに救い合っていた関係だと分かって胸が熱くなります。 娘さんの名前を「すみれ」と提案するひよりさんの声音も、何だか愛おしかったです。現在と過去がどう重なっていくのか、次も楽しみにしています🌷