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第2話 『 空白の名前 』𓂃 ‧₊˚. ⸝⸝
yanくんが退院して1週間後
学校に戻った日のことを、etはきっと一生忘れない。
教室のドアを開けた瞬間、「yan!大丈夫かよ!」「マジで心配したんだからな!」とクラス中の声が一斉に集まった。
その中心で、yanくんは少し照れたように笑っていた。
「大げさだって。ちょっと頭打っただけ。」
ちょっと、じゃない。
etは思わず拳を握る。
——私だけ、消えたのに。
ふと視線が合う。
yan「あ、et。」
呼ばれただけで胸が跳ねる。
yan「おはよ。」
et「おはよ。」
それだけで終わる会話。
前ならもっと続いたはずなのに、
今日は静かすぎた。
机と机の間に、見えない線 が引かれているみたいだった。
昼休み。
hrくんが隣に座る。
hr「無理してるね。」
図星だった。
et「してないよ。」
hr「してる顔。」
小さくため息をついてから、hrくんは続ける。
hr「医者の話、聞いた。特定の記憶が抜け落ちてる可能性があるって。でさ、yanくんが言ったんだよ。“etって誰?”って。」
息が止まる。
自分の名前が、疑問形になる感覚。
hr「でもね。」
hrくんは窓の外を見た。
hr「etさんが近くにいると、yanくん落ち着くんだよ。無意識に探してる感じする。」
期待しちゃだめなのに。
その言葉が胸を揺らす。
放課後。
教室に残ったyanくんは、自分のノートをめくっていた。
事故前の日付の端に、走り書きで『屋上 放課後』とある。
yan「……俺、何してたんだろ。」
記憶はないのに、胸の奥がざわつく。
視線が自然とetに向く。
理由は分からない。
ただ、そこに答えがある気がして。
目が合う。
けれどetは微笑んだ。
et「何?」
yan「いや、なんでも。」
——友達でいい。
思い出さなくていい。
無理させたくない。
私はただのクラスメイトでいい。
そう決めたのに。
どうして、こんなに苦しいんだろう。