この作品はいかがでしたか?
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ふと目が覚めるとそこは知らない場所。辺りを見渡すも、やはり自分の記憶にはこんな場所はない。
起きた場所はどこかの客間でベッドの上から起床し現状を把握することに徹する。
焦ることなくまず、今に至るまで何があったのかをゆっくりと思い出す。
思い出した結果最後の記憶は自宅のベッドで横になり眠りに落ちたというところだった。つまり、今自分が見てるこの景色は夢である可能性が高い。
妙にリアリティある夢というのは誰しも経験があるはずだ。それが今日たまたま起きたのだと自分を納得させ、夢と分かったなら自分が起きた部屋を少し探索してみることにした。
先程軽く見渡してみたが内装は西洋風になっておりなんともオシャレな部屋ではある。しかし、何故か少し荒れていた。転がる数冊の本に、破り捨てられた何か書かれた紙。その中で一番気味が悪いと思ったのは窓の外に映る景色。光を通さぬ暗闇、夜というものではなく【闇】がそこにあったのだ。いくら夢とはいえ、こんな気持ちの悪い夢は生きてきた中で一度も見た事はない。そこに少しの疑問を感じつつも部屋を探索する。
探索して直ぐに机の上に置いてある一つのメモを見つける。それを手に取り文字を見てみると【やつから逃げろ】の一言だけが殴り書きで書いてあった。このメモひとつで様々な考えがめぐり巡る。まず1つは、『やつ』とは何者なのか?
2つ、逃げろと言うからにはその『やつ』が只者ではないこと。
3つ、このメモを書いた人物がいるということは、自分の夢ではない可能性があるということ。
4つ、自分の他に人間が存在する可能性があるということ。
5つ、『やつ』に捕まった場合どうなるのか。
たった一つのメモからこれだけの予想が生まれる。そしてそれら全てがただ事ではないということ。この世界が仮に【夢】でないとしたらなんなのか?気になることが多くあり、それを知るにはこの部屋を出なければ話は始まらない。そのメモをグッと握り自分のポケットに入れて部屋を後にする。
部屋を出るとレッドカーペットが敷かれた廊下に出た。一定間隔に立てられた柱にはあかりが灯るが、その明かりは光量が少し弱く淡く廊下を照らすのみとなっていた。視界も良いとは言えず、出た部屋を壁伝いで確実にかつ、ゆっくり右に進む。 少しして階段を見つけその階段を下っていく。降りた先はやけに広く作られており、そこはまるでエントランスそのものであった。エントランスらしきものを目の当たりにして確信したことは、今自分がいるこの場所は西洋の館のような造りをしている建築物で間違いないということ。
エントランスに着いたのならそのまま外に出れると思ったが、案の定館の出入口はビクともしなかった。仮に開いたとしても、外はきっと闇一色だろうからこの不可思議な世界からの脱出とはならない。むしろ、外の闇に飲まれてしまえば死んでしまうだろう。まだ、この世界が夢か否かは分からないが、夢だとしてもそんなリスクは犯したくない。
玄関から出るのは諦め館の探索に集中することにした。一応自分の中で地図を作るとして、この玄関を南とした時、東と西に扉が二つあり、正面には階段が二つ。その二つは二階に続いているだけ。他には受け付けとスタッフルームに続くであろう扉が正面に一つ。それとは別に扉が左右に一つずつ設置されてある。恐らくこれも中に入れば繋がっているというオチだろう。面倒だが、手当り次第調べていく必要があるようだ。
受付の机をチラッと見たら一冊の本がポツンと置いてあり、それを手に取り確認する。何か事務的なものかが書いてあると思ったが、どうやらそうでは無くこの世界に関わる重要な本であった。
本の表紙にタイトルが書かれておりそのタイトル名は【悪夢の館と亜人】というもので、内容としてはいわゆる都市伝説を題材としたホラーミステリー系の小説だった。しかし、この小説の初めに書かれた話、プロローグのようなもので【悪夢の館と亜人】というものについて軽く説明されており、その内容が今自分が置かれている状況とあまりにも似通っているのだ。
例えば、話し出しの気が付くと見知らぬところにいたというフレーズとその後に続く言葉の中には、【西洋風の館】と書かれており、実際今いるこの館を自分は【西洋の館のような造りをしている建物】と位置づけたのだ。もちろんその前にある見知らぬところで目が覚めた、というフレーズは自分も見に覚えがある。そしてこの館に住むのは亜人と言われる生物。この生物が、初めに見つけた【やつから逃げろ】の【やつ】にあたるはずだ。
この小説の物語と今起きてる事態があまりにも酷似している。もし、この小説通りのシナリオが今後も描かれるとなると……。考えただけでゾッとする。
けれども、今立てた仮説が正しかった場合はこの小説の世界観設定は事実となる。もしそうなら、気になる文を見つけてる。
『悪夢の館は亜人が創り出した精神世界のようなもの。この館に訪れる者に決まって話すひとつの言葉がある。それは、【先程まで自分は寝ていた】という言葉だ。これが意味するものは、亜人の創り出したこの世界と夢を見ている人の波長が奇跡的に合ってしまい、この館に誘われるということを指す。また、そして夢を見ている人は肉体から精神が離れている状態にある。何故なら、亜人の創り出した世界は【精神世界】なのだから。そのため夢を見る人間に限らず、人ならざる者もこの場に集まるのだ。その光景は地獄のようなものでいつしか【悪夢の館】と噂立ち呼ばれるようになる……』
ここから読み取れるのは夢を見る人間は肉体と精神が分けられていること。そして、亜人の住処である悪夢の館はその、夢の中に現れるということ。さらに、人だけではない【ナニカ】もここに来ることがある。つまり、波長さえ合えば誰であろうとここに訪れることができるのだ。亜人の創り出した精神世界はサーバーとなってる、とも解釈できる。
他に知りたいことがあったが、不思議なことにこのプロローグから先は白紙のページが続いている。そのため先を知ることは出来なかった。それを見て、あるひとつの可能性を見出した。それは、今自分が置かれている状況と酷似してるということは、自分の行動次第でこの小説のENDは変わるかもしれないということ。もちろん可能性の話だが、ない話ではない。これを受けて、今後の目標は決まった。この小説を完成させて、脱出の糸口を見つけるということ。そのためにも、リスクはあるが館内を探索する必要がある、か…。
彼はその本を手に取り、西側手前の扉に手をかけ扉の先にと歩を進めた……。
コメント
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ノベルとしての方が描きやすい……かも?