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ふたたび『かわいい』と言いそうになり、宮本は慌てて口をつぐんだ。いい雰囲気にはほど遠いものの、橋本を感じさせようとしている行為はそれなりに卑猥なので、緊張を解すべくそのまま続行する。


「だったら、どこを舐めてほしいですか?」


宮本が投げかけた質問に、照れながら怒っていた橋本がぴきんと固まった。金魚のように口をパクパクするだけで、5秒待っても返事が返ってこない。しょうがないなと宮本は躊躇なく後孔に顔を寄せて、舌をにゅるりと差し込んでやった。


「やめっ! ぞわぞわするっ」


橋本は叫びながら、顔を隠していた手でベッドのシーツを掴み、首を左右に振っていやいやを示す。下唇を震わせつつ、眉根を寄せる様子は、本当に嫌がっている姿なれど――それが宮本の中にあるサディスティックな気持ちに、ぽっと火をつけた。


「陽さんが希望を言ってくれなきゃ、ここをずっと舐め続けますよ」


普段は隠しているこの性格は、峠のバトルのとき限定で現れるものだった。相手の車との駆け引きや、コーナーをどこまで攻めることができるか。失敗したらそれこそ大事故に繋がるような極限状態に追い込まれた際に出てくる、もうひとつの性格をした宮本が、恥ずかしそうに頬を染める橋本を責めたてようと、爽やかに微笑みかける。


「……ま、さき?」


目の前の異変に気がついたのか、橋本の掠れた声が虚しく寝室に響き渡る。


「ほらほら早く言ってくれないと、陽さんの嫌がることをどんどんしちゃいますよ」

「嫌がることって、おまえ……」

「言わないのなら、ここをこうして――」


右手で持っていた橋本の足を肩にかけてから、舌を出し入れしてしっかり濡らした部分に、ゆっくりと人差し指を挿入していく。


「くうぅっ!」

「まだ1本しか挿れてません。音(ね)をあげるには、まだ早いですって」


何度も目を瞬かせて歯を食いしばる姿に、宮本は心底嬉しそうに頬を緩ませて笑った。


「まだ1本……」


苦しげに短く息を吐き出しながら呟く橋本を見つつ、楽しげに話しかけてみる。


「陽さんが舐めてほしいところは、ココでしょう?」


言うなり舌先を使って、裏筋を真ん中辺りから上へと思いっきり舐めあげてみた。


「あっ、ンンっ」

「ね、気持ちいいでしょ?」


ぴくんと躰を震わせた橋本を見ながら、感じやすい部分を狙って、わざと音が出るようにキスをしてやる。リップ音が鳴るたび小刻みに腰が上下する橋本を見て、宮本は感じさせている喜びを噛みしめた。


「陽さん、これでお終いにしますか?」

「ぃ、嫌だ。もっと……」

「もっと――何ですか?」


自分がわからないことを示すために、宮本はわざとらしく太い眉をへの字にして、首を傾げてみせる。演技じみたその態度を見て、橋本は小さく舌打ちした。


「陽さんがはっきり言ってくれなきゃ、俺わからないですよ」

「そっ、そんなの……言わなくてもわかるだろ」

「わかりません!」


しれっと答えた宮本に、橋本は微妙な表情を浮かべて、さらに顔を赤くした。怒りで顔を赤くしたのか。それとも恥ずかしさなのかは、言わなくても一目瞭然だった。


「……雅輝の口で、もっと気持ちよくして欲しぃ」


いつもの橋本なら『グダグダぬかしてないで、とっととやれよ。このクソガキ!』なんて、強気の発言がなされると予想していたのに、終始受け身でいる様子に、宮本はうずうずした。こんな姿を見られるのが自分だけという、特別な行為に対して、いやらしさよりも神聖なことのように思えた。


「すみません。俺、両手が塞がっているので」


橋本に見えるように左手で支えている足を見せつつ、後孔に挿入している指の本数を一気に2本増やした。


「うっく!」


唐突な衝撃に、橋本の先端からぽたたと滴が零れ落ち、腹の上を濡らす。

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

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