テラーノベル
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黄/……っ゙、(ぐずっ
深夜の公園。
当たり前だけど、辺りには人影もない。
ただ一人の空間。
静寂に包まれた住宅地に響かないよう、小さな嗚咽を漏らす。
自分の情けない泣き声のみが耳に入ると、大人のくせにみっともない自分に、自嘲の念が込み上げてきて、なんだか笑えてくる。
黄/…、ばか、(苦笑
今更後悔しても意味のないことだって分かってる。
明日からまた大学がある。
今日のことを学校生活にまで引き摺りたくない。
家に帰って心の整理をつけようと、ベンチから立ち上がった時だった。
水/…おにいさん、泣いてんの?
黄/へ…?
誰かの呟きが、夜の静けさに溶け込んだ。
声のした方を振り向くと、さっきまで俺が座っていたところに、男の子がいた。
被られたフードの影から、夜の色が映った深海のような瞳が覗く。
水/こさめっていうの
水/おにいさんの悩み、こさが聞いてあげるよ
偽りない目が俺を射抜く。
いつの間にか、流れていた涙は止まっていて。
こさめ、というその男の子に促されるまま、俺は再びベンチに座り直した。
黄/…今日、偶々中学の友だちと会ったの
黄/久々だったから、流れで一緒にご飯食べに行って、お互いのこといっぱい話して、
水/うん
黄/楽しかったの、今日、一緒に過ごせて
黄/…でも、その子、来月結婚するんやって
黄/おれ、結婚式呼ばれちゃった、…笑
黄/彼女さんの写真、見せてもらったら
黄/すっごく、綺麗な人で、
黄/ほんとに、幸せそうやったなあ…(笑
目の奥がまた熱くなる。
唇に水滴が触れた感覚がして、少ししょっぱかった。
黄/初恋だったのに……っ゙(ぽろっ
中学からの初恋を今でも引き摺ってるって、我ながら重いのかな、って、
何度も考えて、諦めようとしこともあった。
でも、忘れられなかったから。
おれのこと、好きなんかなって、自惚れたことだってあった。
二人きりの時間で笑顔を向けられる度、頭を撫でられて、その温もりを感じる度、二人だけの遊びに誘われる度、
全部、おれだけの特別って感じがして、
頭の何処かで、両思いかもって、期待した。
だからこそ、今日、会って、彼女さんがいるって聞かされた時、
「ずっと、待ってたのに、」なんて、
そんな最低な言葉を、口にできるわけがなかった。
今になって、自分勝手な期待にうんざりする。
黄/5年前にもね、その子と会ってたんよ
黄/やけどっ、その時は、何の話もできんくて、っ(泣
黄/連絡先とか、っ、聞いてたら、…
おれがもっと、ちゃんと頑張ってたら
黄/隣にいるの、俺やったんかなって…(苦笑
水/うん、(ぎゅう
ひととおり俺が話し終わるまで、そばで聞いてくれた。
抱きしめられると、その優しさが胸の苦しみを少しは和らげてくれた。
水/…なるほど、
水/つまり、おにいさんは、5年前の日のことを後悔してるってことやね!
黄/……?(ぐずっ
水/よしっ!
水/こさに任せて!
そう言いガッツポーズを見せると、勢いよく立ち上がって、俺の前に立ちはだかる。
水/おにいさんを5年前のその日に連れて行ってあげる!
黄/……ぇ、?
戸惑っているおれをスルーして、彼は俺の手をそっと握った。
水/ちゃんと、後悔なくしてくるんだよ?
黄/……ぁ、えっ、_____
彼の笑顔が見えて、目の前が一気にホワイトアウトした。
黄/……っ、??(目開
外の喧騒がだんだんと耳に戻り、恐る恐る目を開く。
黄/…、へ、、?
さっきまでとは打って変わって、世界が明るかった。
スーツや制服を着た人がたくさん歩いていて、道路も通勤する車で混雑している。
黄/…ぅわっ、!?
店のガラスに映った自分の姿に驚愕した。
高校生に戻っていた。
あの時とても気に入っていた腕時計が、いま、おれの左手首につけてある。
何が起きたのか、分からない。
ただその場で立ち尽くすことしかできなかった。
その時。
翠/あれ、
翠/みこちゃん…、?
黄/…、っ(どくんっ
心臓が、痛いくらいに早く動く。
全然変わってない、聞き慣れた声。
優しくて、心にすとんって落ち付くこの声色が大好きだった。
泣きたくなる衝動を抑え、ゆっくりと振り返る。
黄/……、す、ちくん、、
口から微かな声が漏れる。
これを経験するのは二回目だ。
……おれ、ほんとに、5年前の、高2の冬に戻ってきたんや、、
翠/俺のこと、覚えててくれたんだ、嬉しいっ(微笑
黄/っ、⸝⸝⸝
昔と同じ、あったかくて、甘えたくなる笑顔。
胸が少し苦しくなる。でも、それがどこか心地よくて。
やっぱり、好きだなって、また実感して。
翠/久々だね、
翠/元気にしてた?
黄/っ、ぅん、、
妙に緊張した。
心臓の大袈裟になる音が鼓膜まで響いて、煩かった。
翠/よかった、
翠/高校はどう?
翠/楽しい?
黄/、うん、
会えて嬉しいはずなのに、今は結婚のことが頭から離れなくて、なかなか会話に集中できない。
桃/すち〜、
桃/もうそろ映画____
すちくんの後ろから、知らない子が顔を出した。
おれのことを不思議そうに見つめている。
桃/…すちの知り合い?
翠/うん、
翠/中学の頃からの仲
翠/ね?
黄/ぁ、…っうん
相手の子は、おれのことを下から上まで眺めて、すちくんに顔を向けた。
桃/すち、もうすぐ映画の時間
桃/あと15分だけど
翠/えっ!?やばいじゃん
翠/ごめん、みこちゃん!
翠/また今度、時間があるときにたくさんお話しよ?
黄/ぁ……、
離れていっちゃう。
また、前と一緒になる。
友達を追いかけるすちくんの服の袖を慌てて引っ張った。
翠/わ、っ
翠/…どうしたの?
黄/……連絡先、おしえてくださぃ、
震えた声で言葉を紡ぐ。
服を握る手が、ほんのり熱を帯びた気がした。
翠/あ、うん、いいよ
すちくんは手際よくスマホを取り出して、連絡先を教えてくれた。
翠/…、よし、これでおっけー
翠/いつでも連絡したいときにしていいよ
黄/うん、っ!
「いつでも連絡していい」
その言葉だけで心の底から嬉しかった。
あれから、たまに電話をするようになった。
中学の時みたいに、二人きりで遊びに行ったりもして。
そうして生活もいろいろ移り変わって、気付けばもう5年が経った。
ゆったりとした空気が流れる、日曜日の朝。
キッチンの戸棚から、おそろいのマグカップをいつも通り取り出して、コーヒーを淹れる。
朝ごはんのトーストを焼いていると、リビングの扉の開く音が聞こえた。
翠/…おはよ、、
黄/おはようっ(振向
翠/…ん〜、、(ぎゅう
黄/んわ、っ(びくっ
黄/…ぅすちくん、、⸝⸝⸝
翠/…今日、お休み?(肩頭乗
黄/ぅ、うん、
翠/じゃあ、ふたりでゆっくりできるね
翠/たまにはみこちゃんから甘えてほしいなあ
黄/ぅ……、⸝⸝⸝
黄/…じゃぁ、
黄/ぁさごはん、食べたら、⸝⸝⸝
黄/……ひざまくら、したぃ、⸝⸝⸝
翠/…んふふ(笑
翠/俺がみこちゃんの膝に乗っていいの?
黄/ぇ、っぁ……⸝⸝⸝
黄/っ…、えーよ、?(上目遣
翠/……それ、やば、⸝⸝
翠/…みこちゃん、後で責任取ってよ?
黄/んぇ…⸝⸝⸝
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