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自室のドアを開け、真っ暗な部屋に明かりを灯す。
脱ぎ散らかしたパンプスを揃えようとして、手が止まった。
(……趣味、か)
光の言葉が、耳の奥で何度もリピートされる。
今まで「デキる女」という記号でしか私を見てこなかった世界に、あいつは土足で踏み込んできた。
それも、一番見られたくない、ボロボロの足元の隙間から。
私は洗面台の鏡に映る自分を見つめた。
髪は乱れ、メイクも少し崩れている。
でも、不思議と嫌な顔じゃない。
昨日まで感じていた、何かに追い詰められるような焦燥感が、今は少しだけ和らいでいた。
ふと、隣の部屋から微かに音がした。
光が戻ってきたんだ。
いつもの、あの「生きてる」音が壁を越えて伝わってくる。