テラーノベル
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翌朝。私は迷った末に、いつもよりほんの少しだけヒールの低いパンプスを選んだ。
「完璧な桜川栞」はまだ捨てられない。
でも、足元を少し軽くするだけで、朝の景色が違って見えた。
「おはようございます、桜川さん!」
出社すると、美咲が昨日よりも明るい笑顔で駆け寄ってきた。
「おはよう。……昨日のことだけど」
「あ、日比谷さんのことですか? 私、SNS見つけましたよ! まだフォロワー少ないですけど、ネタ動画、めっちゃシュールで笑いました!」
美咲の言葉に、私は内心で冷や汗をかきながらも、余裕を装って頷いた。
「そう。……まあ、まだ磨けば光るかなって、思ってるんだけど」
「うわ、プロデューサー目線! 素敵です!」
からかわれるのが、今はそんなに苦じゃない。
光がついた嘘が、私の鎧の継ぎ目を、少しだけ柔らかくしてくれた気がした。
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