テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
テラーノベル始めたばかりで使い方よくわかってないので……
よければアドバイスいただけるとありがたいです。
本作品は1945年の日本を舞台としたないこさんととある少女の物語です。
プリ小説民でして、テラーノベルにも夢主設定があれば使いたかったのですが……。
少女を自分と置き換えてお読みください。
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空には雲ひとつない青空が広がっていました。
今年も、夏が来たのです。
私は今日も家で、家事を手伝っていました。
1945年7月20日。
長引いている米国との争いの影響でろくな食事もとれませんでした。しかし、戦地で命を懸けて戦っている兵隊様と比べれば、我々子供、しかも女の命ともなれば、軽視されるのは仕方ないと、17の私は理解しておりました。
洗濯をしている母を横目に、朝食を作りました。
少しの米粒にたっぷりの水を含ませたおかゆです。
食料がないにしても、これはあまりにも少ないでしょうか。
それなら、と私は家を出ました。
私たちの家の近くには小さな丘があります。
ここは子供たちの遊び場となっており、
今日も朝から、元気な子供の声が聞こえます。
走り回って遊ぶ子供たち。
戦争中の国とは思えないほど平和な空間。
今こうしている間にも、兵隊様方が戦っているとはまるで思えませんでした。
そんな平和な空間を眺めながら、私は地面に這いつくばり、生えている草を一つ一つ見ていきます。
とある幼なじみから教わったことです。
生えている雑草にも、食べられるものがあるのだと。
幼い頃教わった何気ない知識が、こんなところで役立つとは思いもしませんでした。
その雑草を塩漬けにしておかゆに入れれば、少しでも満腹感を得られるでしょう。
N 「ゆず!」
ゆ 「げ、ないこ……。」
雑草の知識を教えてくれた、例の幼なじみがやって来ました。
家も近いので、ここに来るとよく会うのです。
N 「何してんのさ。這いつくばって。」
ゆ 「食べられる雑草を探しているの。食料がもう……。」
N 「そっか。俺も手伝うよ。」
彼は昔から私に何かとちょっかいをかけてきて、
たまに面倒くさいこともあるけれど、
なんだかんだ面倒見がよくて優しい人です。
一緒になって食べられる雑草を探しました。
N 「この時期でこのあたりなら……ツユクサとかおいしいよ!」
ゆ「いつも思うけど、どこでそんな知識を……。」
幼い頃からずっと一緒にいるけれど、
本当に彼の博識さには圧倒されます。
文学少年で、小難しそうな本を好む。
そのくせ、年相応の鬼ごっこやかくれんぼも大好きですから、よくわかりません。
N 「ほらあった!ツユクサ。新芽はクセがなくておいしいんだよ。おひたしとかおすすめ!」
ゆ「ありがと!」
彼の手の中にはツユクサの新芽。
ツユクサの花は目立つ青紫色だけれど、この草むらから芽を見つけ出すなんて……。
相変わらず彼はすごい。
近くに生えていた新芽を採って、籠に入れました。
ゆ「ってか、私に教えてくれていいの?ないこの家は食料足りてる?」
以前と比べて、少し頬は痩せこけています。
それは私も変わらないのだけれど……。
優しい性格ですから、今回のように食料を他の人に恵んで、自分は食べないなどといった損ばかりしていそうで少し心配になります。
でも彼は変わらない笑顔で言いました。
N 「大丈夫。もう少ししたらたっぷり食べられるから。」
ゆ 「え?配給ではそんなに貰えないでしょう?」
N 「違うよ。戦争へ行くことになっただけ。」
ゆ「え……?」
まるで何事も無かったかのようにさらっと言われた言葉に、理解が追いつきませんでした。
N「知ってる?兵隊になっても、すぐに戦地へは送られない。まずは訓練を受けるんだ。でも、十分な食事を取れないと厳しい訓練に耐えられないから、今よりはたくさん食べられるらしいよ。」
ゆ「まぁそりゃ……兵隊様に多くの食料が注がれるのは理解できるけど……。」
たくさん食べられるから、兵隊になることを受け入れられるというのでしょうか。
たしかに名誉ある兵隊様になれるということは、喜ばしいことなのかもしれません。
一般的にはそうかもしれません。
しかし、怖くはないのでしょうか。
私の前にいるのは、兵隊様のないこではありません。
紛れもなく、幼なじみのないこです。
兵隊様は兵隊になると言われた時、喜ぶものである。
そういうものだという共通認識がありました。
けれど、いざ身近な人が往くとなると、とても喜べるものではないと思ってしまいました。
たくさん食べられるかもしれない。
名誉なことなのかもしれない。
しかし、それで亡くなってしまっては意味がありません。
大切な家族にも、友人にも会えず、離れ離れで、過酷な訓練を強いられて、残酷な最後を遂げることになるかもしれません。
それでも兵隊になることは喜ばしいことなのでしょうか。
初めて私は疑問に思いました。
それと同時に、とてつもない孤独感が私を襲いました。
私の父は戦争で亡くなり、
兄も戦争に行っている。
家にいるのは母だけ。
母はもちろん優しい人だし、頼りにしております。
しかし、信頼できる人が母だけというのはあまりにも寂しい。
戦争が始まる前までは友達や、父や兄など、頼れる人がたくさんいたのに。
また、行ってしまうのでしょうか。
頼れる幼なじみのないこも。
N 「めずらしいね。ゆずはそんなかわいげのあることしないと思ってた」
思わず隣にいたないこの服の裾をぎゅっと掴むと、
ないこは冗談めかして笑った。
彼はきっとわかっているのです。
私が本当は寂しいと思っていることを。
だから彼はしばらくの間、私のそばにいてくれました。
平和な空間の、この丘に腰掛けて、
何も言わず、ただ私の手を握って、隣にいてくれました。
暖かくて、安心する人肌。
ずっと、このぬくもりを感じていたかった。
私のような子供の女に、行かないでと言う権利などない。嘆くことも、悲しむことも許されないのでしょう。
しかし、彼のぬくもりに安心してしまうと、自然と涙が頬を伝いました。
心のどこかでは、わかっていました。
私はずっと昔から、彼のことを好いていると。
今更気がつくだなんて。
N 「ほら、お母さんが朝食を待ってるよ。早く帰りな。」
ゆ「……うん。」
そのぬくもりが名残惜しかったけれど、
たしかに母を待たせてしまっています。
母のため、私は足早にその場を立ち去りました。
彼と一緒にいられる時間は残り4日ほど。
それは、17年共に過ごしてきた時間を思えば、あまりにも短すぎました。
あと4日すれば、彼と会えなくなる。
兄のように、長い間会うことができなくなる。
父のように、帰らぬ人となってしまうかもしれません。
私一人では抱えきれない、大きな現実が私の目の前に立ちはだかっています。
あまりにも大きすぎて、実感は湧かない。
何年先も、ずっと近くにいる。
当たり前のように、一緒に遊んだり、ご飯を食べたり、
「おはよう」と挨拶したり。
そんな日々があるように思えてなりませんでした。
それなのに、涙だけは溢れてきた。
ないこのことを母に伝えると、「しばらく家事は休んでいいから、ちゃんとお別れをしなさい。」とだけおっしゃられました。
母は昔から無口で冷静な人で、ないこが赤ん坊の頃から面識があるというのに、その報告を受けても取り乱すことはありませんでした。
幼なじみが徴兵されたというだけで、こんなにも取り乱す私の方がおかしいのでしょうか。
それとも母はこの戦争で、感情をなくしてしまったのでしょうか。
私に母の気持ちはわかりませんでした。
しかし、母の優しさは感じられました。
家事の手伝いは続けましたが、私はないことの時間を優先することを決めました。
と、言っても何をするべきか、私にはわかりませんでした。
当たり前のようにそばにいる人が、突然いなくなると言われても、最後に何をすればいいのかなんてわかるわけがないのです。
ですから、何一つ特別なことをせぬまま、彼と、ただ日常的な遊びや会話をするだけでした。
彼の好きだった鬼ごっこやかくれんぼ。
17の男女がするようなことではない幼稚なことでも、
彼と一緒なら楽しいのです。
そんな日々はあっという間に過ぎ、気づけば、
彼と共に過ごせる時間は残りは1日となっていました。
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