テラーノベル
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―気付いたときにはあいつに恋をしてたんだ。笑った顔も実は人見知りなところも、全部全部好きだった。かなわない恋をしてしまった。
相手はアイドルで、しかも男。こんなに不毛な恋あるだろうか。地球がひっくり返ったって叶いやしない。もしあいつにバレてしまったら、今の関係だって崩れてしまうんだろう。嬉しそうに話しかけてくれることだって、一緒にご飯に行くことだってできなくなってしまうと考えると、いてもたってもいられなくて、絶対にバレないようにしようと思った。まず少しドラマで共演しただけで好きになってしまうなんてどうかしているのかもしれない。いやそれだけ樹が魅力的だったということでもあるのだが。
別にこれ以上は望まない。それでいいと思っていた。思っていたはずだった。
撮影も終わって、あとはスタッフの確認を待つだけ。少し休もうと思って楽屋に向かった。楽屋のドアに手をかけたところで中から声が聞こえた。
「俺やっぱ関係持つなら一夜限りがいいわ。」
「週刊誌とかにバレたらめんどいけど、後腐れなく終われるじゃん。」
時が止まったように感じた。分かっていたはずだ。樹が好きなのはもちろん女で、あいつと結ばれるのなんて不可能だって。それでもショックだった。一夜限りってことはあいつは誰とも交際する気はないのだろう。あいつが誰とも付き合わないことを喜んだほうがいいのだろうか。
「樹はいつもそうだよね。女の子がかわいそうじゃん」
「かわいそうって言っても、あっちだってわかってるだろ。下手に関係持つほうが危険じゃね」
「そうかもだけどさー」
これ以上は聞きたくなくて、トイレへ駆け込んだ。スタッフの確認にそこまでの時間はかからない。楽屋じゃなくても待つことはできる。
これ以上あいつと関わったらだめだと思った。自分はもうこの感情を隠せない。あいつに嫌われるか不快に思われるかして、終わるくらいなら自分から離れてしまおう。
それから俺はあいつをさけるように動いた。
「間宮くん!この後空いてますか?」
「あー、わりぃ。このあとは用事あるわ」
「わかりました。じゃあまたの機会に」
あいつは優しいから俺をよく飯に誘ってくれた。前は喜んでいっていたが、今ではそれすら怖くて何かと理由をつけて断っていた。俺が断ると少し残念そうな顔をする樹にほんの少しの優越感と申し訳なさを感じた。
「じゃあまたな」
「はい、また今度!」
樹と別れてから、なんとなく歩きたくなって最寄りのひと駅前で降りて家まで歩くことにした。
気を紛らわすために、ドラマのこととか映画のことをとりとめなく考えるけれど一度樹のことを考えると、頭から離れなくなってしまった。
俺はあの時、あいつも俺が来ないだけで悲しんでくれるんだと喜んでしまった。
そんな薄汚れた考えをした自分に嫌気が差した。諦める諦める言っておいて、結局自分は諦めることさえできないのか。
そんな事を考えているうちに家に着いてしまった。
コメント
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えっ…と言わせてくださいすきです