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「おかしくない?」
そんなことない。俺達の画面は普通だもん。
「よし!」
勘違いやめろ。俺の方が圧倒的に早いわ。
「もう……」
不機嫌にすぐなるの禁止ね。
「キヨく…」
その顔、俺にしか見せちゃ駄目だよ。
ーーー
「独占欲って知ってる?」
そうアニメで問われたとき、正直言って知らないと心の中で答えた。まだ小さい時に見ていたものだし。
どこでその言葉を覚えてきたのと言われても普段は「分からない」と答えるしかできないが、この言葉だけは印象深く、よく覚えてる。
「…ぅえ」
フラッシュバックした記憶をかき消すかのように神経を逆撫でてくる気持ち悪いものを宣伝で見て声まで出てしまった。
『ねぇ、烏のお肉だよぉ…あーん♡』
上っ面の照れ顔で俺の大嫌いなものを差し出してくる図が映し出されるなんて誰が予想できただろう。
本当に気分が悪い。なんだよ、烏の肉って。
けれど、今日は家に彼が来る日。古い玩具が彼が集めている物に似ていたので「いる?」と尋ねると目をキラキラさせていた。
あの男も現金なものだ。……俺よりも物って…。
誘えば来てくれるし、俺も呼ばれたら行きたいとは思ってる。けど、彼氏としては突然来てほしい所存でもあるんだよなぁ…。
彼は一人でも二人でもいいマイペースな男。自分をちゃんと持ってるっていうところは結構好き。
そんなこんなとぽやぽやしているとチャイムの音が鳴りドアを開けてやる。
ゲーム、いいのあったかな。それぐらい付き合ってくれるだろう。
もう一度音が鳴ったので迎えに行くと「お邪魔します」と言って丁寧に靴を脱いだ。
「待ってて、持ってくる」
「俺も行く。」
「え?」
「他のもあったら俺が可愛がる」
そう言ってとことこと俺の後ろをついてきた。その部屋に到着するまでの間は静かで、何分にも感じてしまうほどゆっくりと時が流れた気がした。
「ん」
例の物を彼の手の上に置いてやる。「おおぉぉ!」となんともまぁ嬉しそうな声を出した。
「他には?」
「んー…蟹とかないの?」
「えー……ない」
「……ちっ」
「舌打ちすんな」
ムスッと顔を曇らせてパッと今度は光らせて、変なやつだなぁと思った。
けど「ゲームしよ」と、さも当たり前かのように誘ってくれたのでもうそんなことは忘れた。
楽しい気持ちとともにぐるぐると自分の勝手な期待と想像、不安が心の中を弄る。
「…ねぇ、レトさん」
「はい」
「……今日、いい?」
軽口はいくらでも叩けるのに、好きな人を目の前にすると、言葉として表してみると流石に恥ずかしい。
BGMの音が聞こえたまま沈黙が続く。今日はね、ちょっと期待しちゃってたんだよ。
久々にできないかなって。
「ん……まぁ……うーん……」
「……駄目かー」
彼の曖昧な返事が聞こえたと同時にへへっとへらへらした顔で微笑む。うまく笑えてる気はしない。
「…べつに…したくないとかじゃなくて……。」
気まずくさせてしまった中、レトさんが口を割る。
「……久々にする…わけじゃん?…だから下手になってたら格好悪いじゃないですか」
「……キヨ君?聞いてる?」
「あぇ…あ…」
レトさん、俺達そんな過干渉じゃないでしょ?だからさその言葉は…
「…かわいい」
「は?」
「…今の、かわいい」
小さい距離まですり寄って、耳元でふふふと笑ってやる。
「なんだよぉ……気持ち悪い」
「ふ……ひっでぇ」
イヤイヤと髪をくしくしと弄っている。耳を真っ赤にしてるのバレバレだなぁ。馬鹿だなぁ…
「それに、レトさん別に上手ってわけじゃないし」
「え?!おれ、頑張ってるでし」
「ん〜??そっかぁ…じゃあレトさんの上手いテクニック見たいな〜」
「……はぁ…いいよ。見せたげるよ、俺の力。」
「ふふ……ちょーう楽しみだわ」
その呆れた顔も、火照った顔で快楽に善がる姿も俺にだけ。
ぜーんぶ、俺に見せてね。
「他の人に見せたら、いくら俺でも怒るから」
「なんか言った?」
「んー?…なーんも」
貴方が真っ黒になるまで俺は愛し続けるから。欲が溢れてごめんね、レトさん。
fin.
ーーー