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俺の視線に気が付いたのか、月の光を閉じ込めたような瞳がこちらを向いた。
月や星は好きだ。
俺の妹にも見せた事がある。
空を埋め尽くさんとばかりの大きな満月に、ゴールデンベリルを砕いたような星。それらを際立たせるかのようにそこにあるベルリンブルーの夜空。
その光景が、唯一妹で、後継者である独華と共に見た、幸せで穏やかな光景だった。
その大きな月の光を閉じ込めた瞳から、俺は何故か目を離せなかった。
俺はその瞳の奥に、もう二度と目にする事の出来ない独華の笑顔と、兄さんの優しさと温かさを幻視してしまった気がしたからかもしれない。
「目が覚めたか。お前、丸2日も寝ていたんだぞ」
その瞳は僅かに心配と安堵に揺れていたような気がした。
—-コイツは、何を考えているんだ……?
一本調子の声に、何一つとして動いていない表情筋。
そっと書類と思われる紙束の横にペンを置く黒の手袋で覆われた手。
俺は、何一つとしてコイツのことがわからない。
椅子からそっと音をたてずに立ち上がって、俺の方へ歩いてくる。
「気分は、どうだ…?」
単調な声で主炎は俺に尋ねる。
「えっと、だいぶ良くなりました」
急な問い掛けに戸惑いながらも、しっかりと答える事ができた。
しかし、主炎の眉間にはシワが寄った。
何故だ?
「晩飯を持ってくるまで時間はある。もう少し寝ていろ」
そう言いながら、主炎は俺の肩に手を乗せてベッドへ強制的に寝かされた。
だと言うのに、主炎の眉間のシワの数が増えた。
主炎はまた、何かを考え込んでいるような仕草をする。
「まぁ、取り敢えず寝とけ」
暫しの静寂の後、主炎はそれだけを言って、俺に土色の毛布を頭から被せた。
その毛布の重圧感が、妙に心地よい。