テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ああ、ああ…そうだな。千愛も喜ぶと思う。夏休みのイベントってことで…亜優ちゃんを呼んでくるから、中西さん、落ち着いて待ってください」
そう言って家の中へと消えた秋山さんは“ああ、ああ…”とか、立ったり座ったり、落ち着きなく見えたのは気のせい?
「ママー、千愛ちゃんがお泊りいいよ、って」
にっこにこ、の笑顔で走って出てきた亜優は、可愛いウサギがプリントされたTシャツを着ている。
「うん……亜優、どうしたい?」
「千愛ちゃんと寝る!ほんで、えにっき書くわ!」
「亜優ちゃん、偉いわね。夏休みの宿題のこと考えているんだ。じゃあ、今日は千愛の部屋でお泊りね」
「うん!」
「風子さん、すみません……亜優、ちゃんと千愛ちゃんのパパとママの言うこと聞いてね」
「はーーーい」
「千愛ちゃんの言うことも……」
「大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。亜優ちゃん、いとこの家に一人で泊ったことがあるって、今、言っていました」
秋山さんが出てきて言う通り。
「はい。私の姉の家に泊まったことがあります……寝るとかは心配ないですけど、調子に乗って悪いことしたら叱ってください」
「直美さん、押し付けるみたいだけど、亜優ちゃんの着替え、他にも千愛が着られなくなった物があるからそれでいい?」
「え、隣ですから届けますけど……いいんですか?」
「千愛が亜優ちゃんを着せ替えて遊ぶかも」
もうぶすりとしたままの夫には、誰も話しかけない。
亜優をお願いしてから、夫に引きずられるようにして家へ帰ると、無言のまま灰のニオイのする服を着替えて、また引きずられるようにして駅へ行く。
電車を待つ間、やっと動きが止まったので
「ハルくん……定休日やで」
と、言ってみた。
「関係ない。先輩を許せへん」
許せへんから辞めるんでしょ?
なんでわざわざ行くの?
そう思うけれど、夫の全身から出る怒りのオーラに、何も言えない。