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🖤side
『今日ちょっと3人で飲まない?』
友人の誘いのメールがきっかけで彼と友人に会うことになった。
俺の家の近くの小さな居酒屋で、三人で飲んだ。
長い時間話していたが、夜遅くなってきた頃区切りをつけて会計を済ませた。友人は「反対方向だから先帰るねー」なんて呑気に言って帰っていった。やがて俺は彼と二人きりになった。
俺が「駅まで送るよ」と言うと彼はにこっと笑って「ありがとう」とだけ言った。
旧道沿いの居酒屋を出ると、少し湿った夜風が頬を撫でた。
店の明かりが背中で小さくなっていく。
「今日はありがとう。すごく楽しかった」
隣を歩く君はそう言ってふわりと笑った。
その横顔を見て、俺も「こちらこそ」とだけ返した。
それ以上、言葉は続かなかった。
言葉を必死に探しても、見つけられなかった。
今、「うちにおいでよ」なんて言ったらどうなるんだろう。引かれちゃうかな。でも君は優しいから笑って優しく断るんだろうな。
君を家に誘う口実は、いくら探しても見つからなかった。
結局、俺はずっと黙って君の隣を歩いていた。
3分ほど歩いていると、あっという間に駅に着いてしまった。
君は振り向いてにこりと笑うと
「めめ、またね」と言って手を振った。
俺も小さく手を振り返す。
彼の背中が遠くなっていくのを、俺はただ黙って見つめていた。
改札がピッと鳴って、君は中へと進んでいく。
するとまた振り返って「気をつけて帰ってね」と手を振った。
「阿部ちゃんも気をつけてね」
俺はそれしか言えなかった。
本当は呼び止めなきゃいけないのに。
「もっと一緒にいたい」って伝えなきゃいけないのに。
そんなことは、何一つ言えなかった。
終電が君を連れていく。
君は俺が知らない時間へと帰っていく。
もし俺が君の『恋人』と名乗れる存在だったら、どれだけ幸せなんだろう。
もっと長く、君との時間を共有できたのかな。
でも今の俺の肩書きだけじゃ、そんなの絶対に叶わない。
今、俺が君と一緒に居られるのは終電の時間まで。
ふと時計を見ると24時20分を過ぎた頃だった。
彼がいない虚無感を抱えながら階段を登って駅の外に出る。
そこに広がっていたのは、いつもの見慣れた風景だった。
ついさっきまでこの街に彼がいたんだと思うと余計に虚しくなった。
さっきまであんな近くにいたのに。
彼がいないこの街は、なんだかぽっかり穴が空いたみたいに寂しかった。
俺の隣を歩く彼を思い出す。
月明かりに照らされた綺麗な横顔。
ふわふわした黒い髪。
少し赤くなった頬。
形の整った唇。
その全部がたまらなく愛おしくて、好きだった。
思い出すだけで胸が張り裂けそうになるほど苦しくなる。
その全部を、彼自身を俺のものにできたら、この苦しさはなくなるのに。
君に降りかかる全ての嫌なことからも、守ってあげられるのに。
今度また君が会いに来た時には、
君のことを追いかけて
「もう遅いからうち来なよ」って。
そう言って引き止めるから。
絶対一人で帰らせたりはしないから。
だからまた、遊びに来てよ。
もう終電に間に合うように送るようなヘマはしない。
絶対に。
次こそは、
君と一緒にいたいって、ちゃんと伝えるから。
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コメント
1件
うおおおお第1話からエモすぎる…!!😭💚🖤 「終電が君を連れていく」とか「24時20分」のタイトル回収が切なすぎてもう胸がギュッてなった…。「もっと一緒にいたい」って言いたいのに言えないもどかしさ、めっちゃわかるよ…! あと、居酒屋出た後の夜風とか、駅の改札での「またね」のシーン、全部が青春の甘酸っぱさと切なさで詰まってて最高でした…。次こそはちゃんと引き止めるって決意してるところ、推せる!! 続きが気になりすぎます…次話も絶対読むね!!📖💕