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一度一線を越えてしまうと、なし崩し的にそういうことになりやすくなるのでしょうか。
結局私はあのままよく分からないうちに宗親さんとまたしても肌を重ねてしまって……。
飽きることなく一晩に何度も求められて、「明日もお仕事だって言ってらしたのにっ!」と思いながらも、私はついつい宗親さんの手腕に溺れて求められるままに彼の行為を受け入れてしまった……。
――ひょっとして……宗親さんは精力絶倫……?
とか思いながらも、それが嫌じゃない――ばかりかむしろ嬉しいって思っちゃったとか……。冷静になると恥ずかしすぎるよ、私!
それに。
あんなに身体を――と言うより胸を見られるのが嫌だったはずなのに、今回は全然気にならなかった。
もしかしたらそんなゆとりがなかっただけかもしれないけれど、そもそも宗親さんとの行為はそういう不安を全部吹き飛ばしてしまうんだもの。
こんなの……ますます宗親さんから離れられなくなるじゃん。
宗親さんに飽きられてしまったらって思うと、すごく怖い。
困るよ――。
***
一時間眠れたか眠れないかの朝なのに、シャワーを浴びた宗親さんはいつも通りクールなイケメンで。
対して私は身体中がしんどくて、お風呂場にも一人では行けなくて宗親さんに抱き抱えられて脱衣所まで連れて行かれてしまった。
さすがにやり過ぎてしまったと反省なさったのかな。
そんな私に、宗親さんが「春凪。今日はお休みしていいよ?」と言ってくれて。
「僕が有給休暇を申請しておくから印鑑貸してくれる?」
とまで提案されてしまった。
明け方までエッチしてしんどいので今日はお休みします、って社会人として許されるのでしょうか?
もちろん有給休暇には取得理由なんて書かなくていいから別に堂々としていて構わないのだけれど、何だか後ろめたいことは確かで。
「……あの、私、お休みしても、宗親さん、困りませんか?」
休ませてもらえるのは嬉しいけれど、私がサポートしなくても宗親さんは大丈夫なのかな。
思わずそんな自惚れたことを問いかけてしまったのは、私がいなくても平気だって思われるのは何だか寂しかったから。
宗親さんにベッドに押し込められながら問いかけたら
「もちろんすごく困ります。――ですが、春凪がいま動けないのは僕のせいですからね」
そっと労わるように頬のラインを撫でてくれた宗親さんの指先に、さっきまでの情事をふと思い出して、恥ずかしさに思わずギュッと目をつぶったら唇に柔らかなものが押し当てられた。
えっ?って思って慌てて目を開けたら
「まずいなぁ。僕も仕事に行くのが嫌になってしまう」
吐息混じりにつぶやいて、宗親さんの顔が眼前から離れていくところで。
(もしかして、いま、キスされたの!?)
まるで甘々の新婚さんみたいなことをされた私は、真っ赤になって布団を被って丸まった。
(む、宗親さんっ、一体何を考えていらっしゃるのっ!?)
本当に愛されていると錯覚してしまいそうだから、出来れば甘さは控えめでお願いします……!
***
「朝食、食べられそうですか?」
あの後、お言葉に甘えてラフな格好に着替えてベッドの中でうつらうつら惰眠をむさぼっていたら、宗親さんにそう問いかけられて。
潜り込むように被っていた布団を少しめくり上げられた。
「朝、ご飯……?」
寝ぼけた頭でぼんやりつぶやいた途端、グゥ〜ッとお腹が鳴って、私は一気に覚醒する。
「しっかり食べられそうですね」
クスッと宗親さんに笑われたのが恥ずかしくて、もう一度布団を引っ張ろうとしたら、彼はそれを許してくださらなくて。
「ひゃわっ」
布団をバサリと取り払われて寒さに縮こまったと同時、宗親さんにいきなり抱き上げられた私は、驚いて変な声を出してしまう。
「いくら何でも布団の中で食べるわけにはいかないでしょう?」
さすがにそこまでは甘やかしませんよ?と言わんばかりの冷ややかな表情の宗親さんに間近で見下ろされて。
恥ずかしくなった私が「じっ、自分で歩けますっ」って眉根を寄せたら「お風呂場までも歩けなかったのに?」って意地悪く微笑まれた。
うー。宗親さんの意地悪ぅー!!
確かにさっきはそうでしたけど、アレはあんなことやこんなことの直後だったからであって、今は大分回復してるはずですっ!
そう言いたかったのに、不意に宗親さんが身に纏うマリン系のコロンの香りがフワッと鼻腔をくすぐって。途端、そのままギュッと彼にしがみついていたいような気持ちになってしまった。
宗親さんはもう作業服に着替えていらっしゃるし、もうじき家を出て、私、一人ぼっちにされちゃうんだ。
そう思ったら離れたくないって思ってしまって。
「春凪、その格好であんまり強くしがみつかれると、ベッドに戻りたくなってしまうんだけどな?」
今日はお休みだからとラフな格好に着替えていた私は、ノーブラなのをすっかり忘れて宗親さんの首筋にしがみついていて。
宗親さんに苦笑混じりにそんな牽制をされてしまう。
「ご、ごめ、なさっ」
慌てて腕の力を緩めた私に、宗親さんがポツンと「春凪、いい匂いがしますね」って、リビングの扉を抜けながらつぶやいていらした。
リビングに入った途端、部屋中が美味しそうな匂いにあふれていたから、私も彼に同調するように「そうですね。すっごく香ばしい香りがします! お腹空きました!」って目をキラキラさせて。
何故か宗親さんに盛大な溜め息をつかれてしまう。
むぅー。何なのその反応! もしかして「そんな匂いしませんよ?」って否定するのが正解だったの?
共感されて嫌な顔するとか、本当宗親さんってば意味わかんないよ!
***
アイランドキッチン前に置かれた椅子に下ろされた私は、宗親さんが目の前に並べて下さったプレートに目を輝かせる。
イングリッシュマフィンの上に乗っかっているのは、少し焦げ目を付かせてとろけさせたチーズを纏った、厚切りトマトと目玉焼き。
リビングに入ってすぐ香ってきた香ばしい匂いの正体は、プロセスチーズが焼けた香りだったみたい。