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放課後の校庭は、夕陽に染まっていた。
友達と別れて一人で歩く帰り道、ランドセルがやけに重く感じる。
今日は図工で作ったメダルをお兄ちゃんたちに見せるんだ、と心の中で楽しみにしていた。
だけど、角を曲がったとき、三人組の同級生が道をふさいだ。
その中の一人が、僕のランドセルをつかんで引っ張る。
「なあ、お前んち、変だよな」
「兄ちゃん、いつも怪我してるし」
何も言い返せなかった。
手の中でメダルがカタカタ震える。
ランドセルを引っ張られて、バランスを崩して転びそうになる。
「やめてよ……」
声が震える。
笑い声が響く。
「泣き虫!」
ランドセルを蹴られて、膝がアスファルトにぶつかった。
痛くて、涙がこぼれそうになる。
でも、泣いたらもっとからかわれる気がして、必死でこらえた。
そのときだった。
前から走ってくる足音が聞こえた。
見上げると、滉斗お兄ちゃんが必死な顔で駆けてきた。
「元貴に何してるんだ!」
滉斗お兄ちゃんは僕の前に立ちふさがり、腕を広げる。
いじめっ子たちは一瞬たじろいだが、すぐにふてぶてしく言い返す。
「関係ねーだろ」
「やめろよ」
「うるさいな」
でも、滉斗お兄ちゃんは一歩も引かなかった。
「元貴に手を出すな!」
その声は、いつもよりずっと大きくて、僕の胸に響いた。
いじめっ子たちはバツが悪そうに顔をそらし、
「もう帰ろうぜ」と言って去っていった。
僕はしゃがみこんだまま、涙が止まらなかった。
膝の痛みより、心の中がぐちゃぐちゃで苦しかった。
滉斗お兄ちゃんがそっと僕の肩に手を置いた。
「大丈夫か?」
僕は首を横に振った。
涙がぽろぽろこぼれる。
滉斗お兄ちゃんは、僕の頭を優しく撫でてくれた。
「怖かったな。よく頑張ったよ」
「……でも、僕、なかないよッ…」
声が震えて、また涙が出てくる。
でも、滉斗お兄ちゃんは優しく微笑んだ。
「泣いてもいいんだよ。痛かったもんな」
「……でも、僕、強くなる。もう泣かない。だって、小学生だから」
涙を拭いて、ぐっとこらえて立ち上がる。
膝はまだ痛いけど、もう泣かないって決めた。
滉斗お兄ちゃんが僕の手を握ってくれる。
その手は、少しだけ震えていた。
二人で歩く帰り道、夕陽が僕たちの影を長く伸ばしていく。
滉斗お兄ちゃんは、何も言わずに僕の隣を歩いてくれた。
家が見えてくると、心が少しだけ軽くなった。
玄関を開けると、涼架お兄ちゃんが「おかえり」と迎えてくれた。
僕は、今日のことは言わなかった。
お兄ちゃんたちに心配かけたくなかったから。
でも、滉斗お兄ちゃんがそっと僕の頭を撫でてくれた。
それだけで、心がぽかぽかした。
夜、布団の中で目を閉じる。
「僕、明日も泣かない。強くなる」
そう心の中で何度もつぶやいた。