小川Side
「あっ‥しまった!藍の部屋にゲーム機忘れてるじゃん!」
「こんな時間にいくの?藍、寝てんじゃね?」
俺の部屋に遊びに来ていた智さんが、携帯で時間を確認し、明日にしたら?と‥。
確かにもう遅い時間か‥。明日でもいいかなと思ったが‥妙に気になり‥
「やっぱ行くわ!取りに行ったらすぐ帰ればいいし‥なんか‥藍が気になる‥」
お前ほんと藍が好きだなと茶化す智さんに‥ばかかと笑い‥とりあえず藍の部屋に行ってみることにした。
アイツの事だから‥寝てるかな‥。
そう思いつつもノックする。
‥‥‥‥‥‥。
応答がない。
まぁ、寝てるかと思い、試しにドアノブを握るとガチャッと開き‥鍵がかかっていなかった‥。
「らーん?おーい、不用心だぞー!」
一応気にしつつ、ゆっくりと中に入るとベッドには誰もいない‥
あれ?いねぇじゃん‥
そう思った時‥
‥‥ん?シャワーの音?‥水音が気になり行ってみると‥
濡れたまま床に座り込んでいる藍がいた。
「はっ?お前また風呂入ったの?‥って、どうした!?」
俺の言葉にびっくりしたのか‥呆然と座っているようだった藍が、慌てて俺の方を見上げる。
その顔を見て‥‥‥‥
「藍!?何があった?」
藍の‥表情は‥
どう見ても普通じゃなかった。
泣いた後なのは明白だった。
慌てて濡れている藍の身体をバサバサと拭き取り、服を着るよう促す。
そんなにキツくしたつもりはなかったが、藍を起こした時に、顔が歪んだ事を‥見逃しはしなかった‥。
服を整え、ベッドに座ってもらう。
「小川さん?‥どしたんすか?‥こんな夜に‥もう寝てる時間やない?」
俺に気遣っているのか‥無理して笑おうとする藍の頰をペシッと挟む。
「んな事はどーでもいい!何があった?それだけ話せ!」
「‥な‥なんにもないっすよ」
「藍!!」
俺の声に藍がビクッとなる‥
「ちゃんと話せ‥お願いだから」
真っ直ぐに藍を見つめると、泣き腫らしたような瞳からまたポロポロと涙が溢れ落ちた。
頰を挟んでいる俺の手にも涙が伝い落ちていく。
「誰か‥きた?さっき‥お前様子変だったし‥歩き方が‥」
「‥‥誰にも‥言わへん?」
涙を流しながら俺をみつめる‥。
内容次第では無理‥‥と言いたかったが‥思い詰めたような表情の藍を見ると言えなかった。
分かった、そう頷くと‥静かに話してくれた‥。
「‥それで、祐希さんは帰っていったよ‥後は見てないから知らんけど‥」
‥ボソボソと話す藍をずっと見つめていた。涙は止まったが‥表情は暗い‥
「‥まじかよ」
ベッドに座り俯いている藍の周りを見渡す。よく見ると‥シーツも剥がされ‥乱れた後がある‥
情事の後なのだとわかる程に‥
「でも、なんで!?祐希さん、お前のこと振ったんだろ?」
「‥‥‥‥‥」
「その後に結婚だってしたのに!なんで今更来るわけ!?」
「‥わからへん‥俺にも‥わからんよ‥」
思わず怒鳴ってしまった俺の声に‥藍の声が震える。
やばい‥俺、いま冷静じゃないな‥
ふぅーっと深く深呼吸をして‥何とか落ち着かせる。
「藍‥悪い、大きな声出した‥お前に怒ったわけじゃねぇから‥」
‥本当は腸煮えくり返ってる‥だが、今は藍が優先だ。
「キツイのに話してくれてありがと。大丈夫、誰にも話さないから、心配すんな‥」
俯いている‥藍の肩をポンっと叩くと、コクンと頷いてくれた。
「今日は、とりあえず寝ろよ、しっかり休め‥俺今夜ここにいてもいいけど‥」
そう伝えてみるが‥大丈夫って藍が言うから、無理強いはしなかった‥。
「遅かったじゃん、藍、起きてた?」
部屋に戻ると、まだ智さんがベッドで寝転んでいて‥。その隣にドサっと横になり‥ギュッと智さんにしがみつく‥
「えっ?どしたの?なんかあった?」
「‥‥‥」
智さんの温もりに触れながら‥さっきの事を思い出す。
‥言えないよな‥
藍と、約束したから‥
「ん‥いや、ただ智さんにくっつきたいだけー」
「何それ?笑」
笑いながら俺の頭をポンポンと叩いてくれる‥。
幸せだなと思う‥
‥藍も祐希さんと付き合っているときはあんなに幸せそうだったのに‥
なんで‥‥
「なぁ智さん?」
「んー?」
「‥祐希さんってさ、なんで藍と別れたか知ってる?」
「理由?聞いた気がするけど‥教えてくれなかったな‥お前は?藍に聞かなかったの?」
「聞いた‥でも、なんか理由も言われず一方的に振られたって‥」
そう、泣きながら話してた藍は、いたたまれないぐらいに憔悴していた。泣き腫らした表情は今でも忘れられない‥
「そっか‥。でも、急だったよな‥結婚したのも急だったし‥なんか気になるよな‥」
智さんがブツブツと話している‥。
確かに急だった。
どうして何も言わず別れてしまったのか‥。
どうしてこんなにも早く結婚したのか‥。
‥俺が考えたところで‥答えは出るはずもなく‥。
‥堪らず、抱きしめていた智さんの首筋にキスを‥する。
「智さんは‥俺と一緒にいてくれるよね?」
「どしたの?らしくないじゃん‥」
‥らしくない‥そう言いつつ、智さんが優しく撫でながらキスを‥してくれた。
ずっと一緒にいるよ。
甘い言葉を聞きながら、俺は目を閉じる。
もう智さんのいない生活は考えられない‥。
求めてくれるなら、きっと、どんなことだってするだろう‥。
藍も‥
そうなんだろうな‥‥
甘いキスをされながら、意識は次第に与えられる愛撫に夢中になる‥。
明日のことなど考えることなく‥
ただひたすら智さんを感じようと思った‥。
この快感に身を委ねてしまおう‥
でも、
やっぱり‥
頭の片隅に
泣いていた藍を思い出す。
泣くなよ‥
ああ‥‥‥
今だに藍の‥心をとらえて離さない祐希さんが‥
俺は嫌いだ‥
コメント
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コメント失礼します☺️ 毎日毎日投稿してくれてありがとうございます😊 今日のもお話がとても良かったです! これから頑張ってください! 応援してます☺️