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ねえ、おじさん! これってな〜に?
それはね、魔物の肝臓の缶詰だよ。
わぁ! すごいや!
ワタクシ田中太郎……改めアルシュパは、現在メアルと共に近隣(徒歩1時間)の城下町に来ております。 ですが、正直に言うともう帰りたいです。いや、まだ5歳よ俺。5歳児に1時間歩かせるとか……ちょこちょこおんぶしてくれるとはいえ、鬼畜だって……。でも、なんだか現世の俺の体、少し軽い? 若さゆえなのか、はたまた……
「アルシュパ? どうしたの、ぼーっとしちゃって……」
「お、お店がいっぱいでびっくりしちゃった……ははは」
どちらかと言うとメアルの声に驚いたけどね!
「アルシュパは初めてだものね! それにしても、やっぱりすごいわね〜城下町! 見たことがないものがたくさん! 久しぶりに来てみたけど、前より更にお店増えてない? あっ! あそこのお店すごそう!」
ばてている俺に対して彼女、メアルは凄まじいはしゃぎっぷりである。不覚にも可愛いと思ってしまった。母親なんだよな……この人……。
彼女はまだ20代、前世が17歳だったから年の差はあまりないと思う。そのせいで年上のお姉さんみたいな印象が強い。だからなんというか、大人気ないというよりは可愛いと思ってしまう。だがしかし、何でもかんでも買ってくるのはやめてほしい。処分に困るし、なにより金欠だから! 最近妙に買い出しが多くて! ……さて、今日はどのくらい足が出るのやら。
「はぁ…」
俺は彼女に聞こえないように、小さな声でため息を吐いた。すると、遠くの方から微かに叫び声のようなものが聞こえる。
「…すけ…!だ…!」
声は……あの店の横の路地から聞こえているらしい。真っ暗な路地、そんなところで一体何を……。
「お母さん! あそこの路地から叫び声が!」
とりあえず、大人に報告をする。俺はまだ子供だからな。指示を促そう。
「叫び声? しかもあんな路地から…」
メアルは不思議そうに俺を見た後、何かを考えるように一度目を瞑った。 すると、何やら思い当たる節があったようで突然目を見開き、驚いたような顔をして
「お母さんちょっと様子見てくるから、ここでいい子にしててね!」
そう一言だけ残し、真っ暗な路地へと駆けていった。
「あの顔……」
人間、好奇心には抗えないものだ。適当な言い訳を模索しつつ、俺は例の路地へと足を向けた。
メアルが路地に入っていくのを確認した俺は、路地の入り口へ耳を近づけた。すると、何人かの話し声が聞こえた。女性の声と男性の声……男性の方は二人いるようだ。あとはメアルの声も聞こえる。何か言い争いをしているようだった。
「あんたにゃあ関係ないよ。お姉さん」
「あいにくそうもいかないの。さぁ、早くその子を解放しなさい!」
『あいにくそうもいかない』? どういうことだ? 俺がついていけていない間にも、会話はどんどん進んでいく。
「最近多発しているメイジュルプルス魔法学院生徒誘拐事件……もちろん、あなたも知っているでしょう?」
めいじゅる……なんだって? 学院とか何とか言ってたから学校の名前なのかな? 何というか出身校言う時に大変そうな名前だなぁ。
「……それがなんだ?」
誘拐事件……まさかコイツらが関わってるなんて言わないよな……?
「それって、あなた達の仕業なんじゃない?」
言っちゃったよ!見事なフラグ回収だよ!
えぇ〜……いや、ただカツアゲしてただけじゃない? 普通こんな真っ昼間から誘拐なんてするわけ無いでしょ……。第一そんな簡単に犯人が見つかるわけ……
「……チッ、バレちゃったか〜」
「やっぱりね……さっさと自首しなさい!」
バレちゃったじゃねぇよ!……というか
「見事に犯人じゃねぇか! またフラグ回収だよ!」
……あ。
めっちゃこっち見てる、どしよ。