テラーノベル
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刑務所の爆炎を背に、俺と松田は深夜の原生林をがむしゃらに駆け抜けた。
冷たい枝が頬を打ち、雪に足を取られるが、止まるわけにはいかない。
上空では三和会のヘリが巨大なサーチライトで森を舐めるように捜索している。
「……あそこだ、兄貴。あの廃工場です」
松田が指差した先、蔦に覆われた巨大な影が見えた。
かつて製材所だったらしいその建物は、静かに俺たちを待っていた。
錆びついたトタン扉をこじ開けて中に入ると、埃っぽい空気の中に、かすかにタバコの匂いが混じっていた。
「……二分遅れだ、黒嵜」
工場の奥、作業用ライト一つで照らされたテーブルに、志摩が座っていた。
その隣には、顔の半分を包帯で巻いた男……山城もいた。
「山城、生きてたのか」
「……地獄の底から這い上がってきましたよ。中臣の野郎に売られた仲間の、弔い合戦をしなきゃ死ねませんからね」
志摩が地図を広げる。それは、新宿の地下に広がる三和会のサンクチュアリの構造図だった。
「お前が持ち出したICチップには、三和会の会長・大河内が握る、政財界への『上納金リスト』のパスワードが入っている。これさえあれば、連中の資金源を根こそぎ凍結できる」
「……だが、ただのデータじゃ大河内は殺せねえ。あいつの喉元に、直接ドスを突き立てなきゃ俺の腹は収まらねえんだ」
俺は懐から、刑務所で奪ったタクティカルナイフを取り出し、テーブルに突き立てた。
「いいだろう。三和会は明日、新宿再開発の『起工式』を行う。大河内も、中臣を操っていた黒幕たちも全員揃う。…そこが、俺たちの戦場だ」
志摩が、テーブルの下から重厚なアタッシュケースを取り出し、開いた。
中には、磨き上げられた二振りのドス……
親父が遺し、霊園に置いてきたはずの、あの「魂」が並んでいた。
「…志摩。あんた、これを……」
「……落とし物だ。しっかり持ってろ」
俺は迷わず、その柄を握りしめた。
馴染んだ重み。
親父の、拓海の、そして散っていった仲間たちの想いが掌を通じて全身に流れ込んでくる。
寄せ集めの四人が、今、この国の巨大な影を討つために立ち上がった。
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