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早朝。コートを着て、長いブーツを履いて、待ち合わせの場所、外と国を仕切る外壁の出入り口へ向かう。
「…あ、おはようティファニ」
彼は門番との会話を中断して私に挨拶をする。
「おはようございます、パーカーさん…」
「あー、スカートで大丈夫?ズボンとかの方が動きやすいんじゃない?」
「大丈夫です。それに、スカートの方が慣れているので」
彼は「そう」と言ったが、少し不満があるように見えた。
門が開く。久しぶりにでる外壁の外は、思っていたより落ち着いていた。 これから徒歩でヴェリアまで行く。凄く遠いわけじゃない、けど、決して近くはない距離。
私は気を入れ直し、パーカーさんの後を追った。
血吸蝶が飛び交う外をしばらく歩いていると、青い花畑が見えた。
「……青火草」
私の声に反応し、パーカーさんも花畑を見る。
「君も知っているのかい?あの花を」
「はい。私の友達が好きな花で、よく話してくれるんです」
パーカーさんは少し興味を示してから、また前を向いて歩き出した。
この人は今、研究書の事しか頭にないのだろうか。私も人のことは言えないのだけれど。
ヴェリアの家に着いたら、研究書が残っていたら、私の知らない父の事を知れるかもしれない。好奇心や不安が混ざり複雑な気持ちになっていると、ヴェリアの外壁が薄っすらと見えてきた。
「…ティファニ、先に言っておくが、ヴェリアにはたくさんの死体がそこら中に倒れている。その中には君の知人もいるかもしれない。パニックになられて帰りが遅くなるとこっちが迷惑なんだ、覚悟しておいてくれよ? 」
たくさんの死体。その言葉だけで、今まで見た知人の死体を思い出して吐きそうだった。
でも、この人に迷惑をかけてはいけない。私は深呼吸をし、心を落ち着かせヴェリアの門を潜った。
久しぶりに帰ってきたヴェリアは、私の想像を遥かに超える地獄だった。
蝶が群がる死体、強烈な腐敗臭、既に白骨化した人間。私は慌てて手で口を覆った。
助けを求めるようにパーカーさんの顔を覗く。彼は表情を一切変えず、死体の横を歩いて奥へと進んで行った。
私は足元に気をつけながら彼の後を追う。
「君の家ってこっちだっけ?あまり覚えていないんだ」
彼は辺りを見渡しながら言う。
「あ、えっと…案内しますよ」
私は彼の前を歩き、家まで案内した。家に着くまでの短い道のりに、一体何人の死体が倒れていただろうか。
私は早く死体のない場所に行きたくて早歩きで家へ向かう。
「ここです」
私は一度振り返り彼を確認する。死体の道を歩いたとは思えないほど余裕な顔をしていた。