テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
祈りの姫とツンデレ王子
王都ルミナリア.
白い石畳が続く大通りには,朝露をまとった花々が咲き誇っている.その中心にそびえたつのは,王家の居城「セレスティア城」.その高き塔の窓辺に,一人の少女が佇んでいる.
「……今日も,なにも思い出せない.」
ラベンダー色の髪が風に揺れ,ピンクの瞳が遠くを見つめる.彼女は–セラ・ルミエール.この国の姫である.しかし,前世はかつて”聖女”と呼ばれた存在の生まれ変わりである.
「セラちゃーん!朝の支度できたよ~!」
扉を開けて飛び込んできたのは,青髪のツインテールの少女.ミナ・アクアリス.セラの専属の侍女だ.明るく笑うその姿に,セラはふっと微笑んだ.
「ありがとう,ミナ.今日も,私を守ってね」
「もちろん!あんたが変なこと言い出さない限りはね~」
ミナが笑うその背後には執事たちが変な噂をしている.
「来るらしいで,あの”氷の王子”が....」
「隣国の王子様でしょ?なんでまた,うちの姫様に」
「政略結婚だって.姫様かわいそうに...」
そこに,特徴的な髪を持つ青年の乗った馬車がゆっくりと王都の門をくぐった.青年の名は–れる王子.
「静かだな.これが”光の王国”か」
冷たく,寂しげな声は誰にも届かなかった.
「ミナ,氷の王子って何?」
ピクッとミナの手が止まったのを感じた.これって聞いてはいけない奴だった...?
「セラちゃん...気にしないで大丈夫だよ!多分きっと,それは昔のかなちゃんと同じだよ?」
「昔のかなちゃん?かなめくんか~可愛かった?」
「いきなり振り向かないで!髪が乱れるでしょ?ま,可愛かったよ~そりゃーらみくんとからいむくんくらいにね」
「いいなぁ...見てみたい」
「写真あるけどいるか?」
扉の前には近衛騎士のカイがいた.カイ・ストレイだ.
「ほしい!ちょうだーい!」
「セラ様,王子が到着されます」
「セラちゃん,行くよ?」
「うぅ...カイ!後でちゃんとそれ頂戴ね?」
「わかったよ...めんどくせーお姫様だこと」
「カイ?あとでかなちゃんと同じ目に合わせてやるぞ?」
「え,ちょ,冗談だって!ってかお前が処罰されないほうがおかしいからな!?ちゃん付け,ため口,魔法の許可なしでの使用!全部違反だからン...」
「カイ~?ミナをいじめちゃだ~め.さ,セラ,行こうか」
「お断りします」
速攻で断られたのは王子でセラの兄であるないこ.重度のシスコンである.とても迷惑だ.
「ミナ,私笑えてる?」
「うん.大丈夫.あんたはちゃんとした姫なんだから」
(あの王子...セラちゃんを傷つけたらーーー)
「れる王子が到着されました!」
氷のような気配があたりを凍らせる.特徴的な髪,整った顔立ち,そして感情の読めない瞳.
「初めまして,セラ・ルミエール姫.この度は,貴国のご厚意に感謝する.」
「こちらこそ,ようこそお越しくださいました.れる王子」
(この人,どこかで…思い出せない...)
城の屋根の上では
「ふーん.始まったね」
黒いフードをかぶった男が屋根の上から城を見下ろしていた.その髪は白く,引き込まれるような緑色の目をしている
「セラちゃん,君の物語,また動き出すんだね」