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(向井視点)
「ふんふんふーん♪」
なんやかんやあったけど、やっぱりみんなといる時間はたのしいんよな。
さっきの会議も、いつもの空気で、ホンマに楽しかった!!
あんなふうに、ずっと9人でいたいなぁ…
きっと、大丈夫や。
だって、ふっかさんここに戻ってきた。
てるにぃがどうやって助けたかは知らんけど…
2人は幸せそうやし、俺もみんなが幸せなら幸せやもん!
それに、今日はめちゃくちゃめめと目合った!
俺の勘違いかも知らんけど、めめは俺のこと見とったんやろ?
「…んふふ…」
自然と笑いがこぼれる。
最近、めめが俺に構ってくれる。
ほんまに嬉しい!
いつ、告白…しようかな…?
さすがに早すぎる!?
でも、めめ絶対俺のこと好きやん!!
最近、めめはたしかにみんなに優しいけど、俺に対しての視線が違う気がするもん!!
気のせい、かもしらん…
でも、今…
9人でいられて、めめに構ってもらえる…
「…すごい、幸せや…」
「…君、1人?」
「……?」
家まであと少しの距離で、後ろから声をかけられる。
なんやろ?
道に迷ったんかな?
でも、1人って聞いてくるなんて…
少し、少し危険を感じて、後ずさる。
なんやろ、この人…
すごい怪しい……
「すいません…俺、急いどって…」
とにかくここから逃げたい。
すぐに背を向けて、走り出す。
なんか、この人はあかん気がする。
勘違いやったら、ほんまごめんなさいやけど…!
「…いいね…その想い…」
「…っ…!」
逃げようとしても、腕を掴まれる。
この人は、何言っとるん…?
「……ふふ…その想い…もらってくね。」
「……?」
なんで、俺ここに突っ立っとるん?
家もう目の前にあるのにな…
なんやろー…
違和感は、あるんやけど…
なんもわからん。
「なんか、鳥でもいたんかな?」
でも、カメラ持っとる訳では無いし…
まぁ、きっと何かあったんやろ。
思い出せないってことは、しょーもないことやろ。
「よーし!じゃあ今日から見回りやってくぞー!!」
次の日の夜、早速見回りをすることにした9人。
佐久間の掛け声を合図に、カフェの外に出る。
「どうする?2チームに分けてもいいけど…」
阿部の提案に、ラウールも反応する。
「そっちのが効率的だね。そうしよ!」
誰からも異論が上がらない。
チーム決めとなるが、
「俺とふっかは一緒で。」
岩本と深澤は、まず同じチームに。
それはそうだよね、と言った顔で誰も異論をあげない。
普段ならここで、
『じゃあ、俺はめめと一緒な~!!めめ~♡♡』
と発言をする向井。
8人も、そうなることを確信して向井の言葉を待つ。
……が、
向井は何も言わない。
「……?みんなどうしたん?それ以外はジャンケンでええの?」
8人が、少し驚いてるのを感じ取り、向井はキョトン、とする。
「…え、うん。そうだね。じゃあ、ジャンケン!」
少し、おかしな空気になったのを感じ取って、阿部はすぐに次の行動に移す。
他7人も、たまにはそういう日もあるよね、と思うことにした。
ただ、目黒は…
(なんだよ、それ…)
少し、モヤモヤした感情を抱いていた。
チーム分けは、こうなった。
岩本、深澤、ラウール、宮舘、目黒。
阿部、佐久間、渡辺、向井。
向井は、目黒と離れたにも関わらず、平然としていた。
目黒と一緒になれなかったことを悔しがる素振りも見せない。
「こーじ…もしかして、めめとなんかあった?」
チームで別れてしばらくして、阿部がおずおずと向井に問いかける。
「?めめと?なんもないで?」
一方で、向井は目を丸くして答える。
「今日のお前、なんかおかしいよ。」
渡辺が単刀直入に言う。
だが、向井はそれが理解できない。
「何言っとるん?俺は、いつも通りやんか。今日のみんなおかしいでぇ?なんで変な空気になってるん?」
向井は、不思議だった。
自分が何か言う度、周りが変な反応をする。
戻ってきたばかりの深澤の発言に気をかけるわけではない。
“向井”の発言に注目が集まるのだ。
それが、不思議でしょうがない。
「めめ、こーじくんと何かあった?」
岩本のチーム側でも、ラウールが目黒にそんな質問をしていた。
「…いや、なんも……」
目黒は、そう答えるしかできなかった。
本当に何も知らないのだ。
「うーん…知らない間にこーじになんかしちゃってたりしたのかなぁ…?」
深澤も、目黒に問いかける。
「…いや、ほんとになんも……」
だが、目黒は本当に知らない。
何かしたと言われても、何もしていないのだ。
昨日までは、一緒に宮舘のケーキを食べていた。
その時は、いつも通りのひっつきたがりの向井だった。
それから、今の今まで、1度も会っていない。
心当たりなど、何もないのだ。
「…めめはなんもしてないんだよね?」
宮舘が、確認のように問いかける。
「多分…」
自信が無さそうに、目黒は答える。
そのまま、うーんと、顎に手を添えて、とあるワードをつぶやく。
「……“恋愛泥棒”…」
「……ぇ…?」
今の今まで、本当に忘れていた。
宮舘だけは、渡辺の話を覚えていたようだ。
「こーじ、さ。なんかあったんだったら言えよ?」
佐久間が、心配そうに向井を見つめる。
佐久間だけじゃない、阿部も渡辺も心配の瞳を見つめる。
「…え、えぇ?ほんまにどうしたん?みんな、変やで?」
向井は、困惑する。
なぜ、自分がこんな目で見られないといけないのだ?
自分は、いつも通りなのに…
「こーじ、めめに対して、冷めちゃった?」
阿部が、少し言いにくそうに聞く。
「……へ?」
向井の口から、間抜けな声が出る。
「お前、めめのこと大好きじゃん。」
「いっつも蓮に引っ付いてるのに、今日はなかったなぁって思ってさ。」
渡辺と佐久間も、そんなことを言い出す。
(俺が、めめのことが好き…?)
「何、言っとるん?めめは…“ただの仲間”やん…
?」
その一言で、3人は凍りつく。
「…ってことがあってさ…」
阿部は、見回りが終わったあとに”目黒”に電話をかけていた。
向井の発言を、全て…
『…なんだよ…それ……』
スマホ越しの目黒の声は、怒りと悲しみを帯びていた。
阿部は、申し訳なく思う。
実際、伝えなくていい事だった。
むしろ、伝えない方が良かっただろう。
それでも、伝えた。
伝えないと、良くない気がしたから。
(目黒視点)
『…めめ、こんな時間にごめんね。ちょっと、話ときたいことがあって…』
阿部ちゃんから、任務後、急に電話がかかってきた。
俺と阿部ちゃんは、結構よく電話するけど…
今はもう深夜1時過ぎ。
俺ももう寝ようと思ってたから、こんな時間なんて珍しいなって思った。
それに、阿部ちゃんの声が、いつもと違ってたから。
『今日、こーじが言ってたことなんだけど…』
そっか、阿部ちゃんとこーじは同じチームだったな。
そんなこと、ぼーっと思いながら阿部ちゃんの話を聞いてた。
『”ただの仲間”だって…』
その一言で、手が止まる。
今、なんて……
『なんか、まるで最初からめめに興味ありませんよ、みたいな感じで言うから…』
阿部ちゃん、それ、本当なの?
本当に、こーじがそんなこと言ってたの?
『…ってことがあってさ…』
阿部ちゃんの話、最後はほとんど聞いてなかった…
「…なんだよ…それ……」
無意識に、こぼれた言葉。
意味、わかんねぇもん。
今まで、ウザイくらい近づいてきたくせに…
うざいって言っても、そんなこと言わんといてや!って甘えてくるくせに…
東京に来た時だって、最初は1人で家に帰れなくて、俺に送ってもらってたくせに…
阿部ちゃんからの電話を終わらせて、寝ようとしても、寝れない。
なんだよ…
もっと、優しくすべきだった?
ウザがらずに、素直に受け止めればよかった?
でも、こーじはウザがられるのも好きじゃん。
……恋愛泥棒…
舘さんの声が頭の中に響く。
もし、もし本当にそいつが犯人なら…
「ぜってー、ぶっ飛ばす……!」
(渡辺視点)
「…スー…スー……」
プルルルル!!
「うわっ!?」
電話…?
なんだよこんな時間に…
最悪だ、ぐっすりだったのに起こされた…
佐久間とかこーじだっら許さねぇかんな…
「…めめ?」
着信の画面に表示された名前は、”めめ”だった。
「…もしもし?急にどうしたん…」
『しょっぴー、急で悪いんだけどさ…』
電話に出た途端、俺の言葉をめめがさえぎる。
ほんとに、急すぎんだろ…
でも、なんでこんな焦ってんだ…?
『”恋愛泥棒”について、教えて欲しいんだけど…』
「はぁ!?」
めめの要件に、俺は今深夜ってことを忘れて、大声で叫んだ。
いや、なんだよ。
それが要件?
深夜に?
ぐっすり寝てた俺の睡眠を妨げて?
意味、わかんねぇ…!!!
それが俺の極上の睡眠を妨げてんの!?
は!?ふざけんな!!
って、叫びたい気持ちを抑えて、とりあえずめめの話を聞く。
さすがに相手は目黒だ。
『翔太!起きてるか!?』
って、特に理由なく電話をかけるピンク頭でも、
『しょっぴー、寂しくなってもうたから、寝落ち電話しような?』
って、結局一方的に喋っといて結局俺は寝れないのに、あいつだけぐっすり眠るような関西弁とは違う。
怒るかどうかは、話を聞いてからにしよう…
『わかってるとこだけでいいから、教えて欲しい。』
なんで目黒が恋愛泥棒の話が聞きたいかは分かんないけど…
とりあえず、話してみるか。
後で、なんか奢ってもらお。
(深澤視点)
はぁ…
こんな時間に夕飯買いに行くとか…
こんなこと、照とか阿部ちゃんにバレたら怒られちゃうよなぁ…
でも、生活リズムなんてとっくに崩れてるし、なかなか直んねぇんだもん。
逆にちゃんと夕飯食べてることを褒めて欲しい。
「…にしても、静かでくらいよな~。」
深夜っていうのもあって、明かりがついてる家とか店は少ない。
別に怖いとかでは無いけど?
念には念をってことで大烏には着いてきてもらってるし、心配はないんだけど…
この街、やっぱりなんかいるなって感じてる。
目立った気配ではない。
でも、密かに感じてる。
それと、こーじのこと。
めめは、本当に何もやってないんだと思う。
だって、めめはちゃんと言葉と行動で伝えられる人間だ。
もちろん、こーじも。
そんな2人の関係が、急に変わるなんてありえない。
恋愛泥棒…
翔太と舘さんが言ってたけど…
ほんとにその可能性あんな。
考える時、左手を口元に当てるのが俺の癖。
人差し指と中指で、唇をふにふにいじってると、
「……君、1人?」
後ろから、声をかけられた。
チカチカと、点滅しながら光る街灯の灯りの下に、1人の男が立ってる。
なんだこいつ…?
こんな時間に急に話しかけてくるなんて、ナンパか何か?
暇だったりしない?この後ちょっとワンナイトしちゃわない?みたいな?
いや、気持ち悪っ…
普通に有り得ないわ~…
まぁ、そんなこと考えつつ、こいつの正体は何となくわかる。
多分、こいつが恋愛泥棒だろ。
ちょうどいい。
ここでこーじのこと聞き出してやる。
それからとっ捕まえて、8人の前で晒しあげてやる。
人の感情を奪うなんて…絶対に許せない。
「…君、すごくどす黒い感情を持ってるね…」
男は、どんどん近づいてくる。
こいつの言葉に耳を傾けるな。
こいつの話は聞いてはいけない。
本能が、そう言ってる。
わかってる。
こいつの話なんて聞く気ないよ。
大烏を出す、準備しとくか…?
ただ、ここは普通に街の中。
万が一、一般人が起きてきたら、かなーりまずい。
大烏を出せる期待は潰しとこう。
それ以外にできること。
“逃げ”かな?
俺は男に背を向けて全力で走り出す。
たしか、この近くに目黒の家があったはず。
そこまで逃げ込めればいい。
悪いけど、俺逃げるのに関してはほんと上手いんだよ。
絶対、逃げ切ってみせる。
しばらく走り続けて、違和感がある。
あいつ、着いてきてない…?
諦めたのか?
後ろを着いてくる気配がしない。
単純に後ろを振り向いてないからかもしれない。
でも、気配が全然しないんだ。
「…どう?」
〖…カァ〗
烏に聞いてみても、気配を感じないって言ってる。
そんな簡単に諦めるか?
そんな疑問を感じた瞬間。
烏の気配も消えた。
いや、正確には、感じ取れなくなったんだ。
つまり、意識に干渉してくるクソめんどくさいタイプ。
だから、気配を感じてないだけで、ずっと後ろにいる。
足を止めるな。
目黒と合流するまで走り続けろ!
『…歪んだ関係を持ってるみたいだ。』
頭の中に声が響く。
意識に干渉すんな、気持ち悪い!!
全部、無視だ!無視無視!
『今は幸せかもしれないが、この先はどうなんだ?』
「……」
『もし、任務でどちらかが死んだらどうする?』
「……」
『もし、相手がこの世界から消えた時…君は』
「うるさいっ…!!」
照が死ぬ?
そんなわけない。
俺は照が死ぬまで生きるし、照も俺が死ぬまで生きるの!
だからこそ、お互い生きるの!
絶対に、俺を置いて照は死なないの!!!
死ぬ時は、一緒にって、
「約束…したもん…」
気づいた時には、走ってた足を止めてた。
「…っ!ふっかさん!」
前から、声が聞こえる。
「…めめ…?」
そこに、目黒が立ってた。
なんで?
こんな時間になんでいるの?
もう、深夜…2時くらいじゃない!?
「…ちっ…」
男は、軽く舌打ちをして逃げていく。
でも、めめはそれを見逃さない。
「…てめぇか!!」
めめが男を追いかける。
ぅええ?ちょっと待ってよ?
俺の事置いていっちゃったよ…?
とりあえず、家に帰ろう。
うん、それが1番だよね?
「ふっか!!!」
家に帰ってる途中、後ろから声が聞こえてきた。
その声は、何よりも安心する声。
「…照…!?」
なんでここにいんの!?
よく見てみると、焦る照の隣には、同じく焦っている烏…
もしかして、照を呼んできてくれたの?
烏の気配消えたって思ったけど、ほんとに消えてたんだ…
相当急いできたんだろうね…
照、めっちゃ寝巻きじゃんか…
てか、寝てるよね普通?
ほんと、過保護すぎるって…
でも、安心した。
「…よく烏が助け求めてるのわかったね。」
一緒に夜道を歩きながら、そんなこと思う。
一時期、大烏は喋れてたみたいだけど…
今はもう喋れない。
それに、俺がここにいることだって伝えるのは難しいはず…
「あー…なんか、わかるようになった。」
照もよくわかってないみたいで、不思議そうに、でも理解できるようになったっぽい。
「多分、あの時大烏と長く一緒にいたからだと思うけど…」
そっか…俺がいない間。
みんなのとこにはずっと大烏がいてくれてたんだね。
でも…
それだけじゃないんじゃない?
みんなは、もう烏の声は聞こえない。
でも、照だけはわかる。
俺らは、本当に深い場所で繋がったんだ。
(目黒視点)
絶対、絶対に逃がさねぇ…!!!
てめぇだけは許さない…!!!
『ここ最近、急に噂が増えたんだけど…』
しょっぴーには、申し訳ないことしたと思う。
しょっぴーにとって睡眠妨害は、万死に値するレベル。
まぁ…佐久間くんとこーじのせいなんだけど…
それでも、しょっぴーは俺に情報を教えてくれた。
しょっぴーとふっかさん、阿部ちゃんがSnow Manの中での情報通。
前のふたりは、表での情報とかも詳しい。
阿部ちゃんは、裏社会の情報に詳しい。
それに、今回みたいにしょっぴーは、ちょっとマイナーな話題も知ってる。
しょっぴーがいてくれて良かった。
しょっぴー曰く、恋愛泥棒っていうのは結構前から存在はしてたらしい。
それが最近になって、目立ってきた。
恋愛泥棒って呼ばれてるのは、そいつの能力が意識に干渉してくるもので、何故か恋愛感情だけを奪ってくるから。
なんで恋愛感情を奪ってくかは分からない。
今になって、急に目立ち始めた存在。
『まぁ、あくまで噂だからさ…俺も詳しいことは知らないんだよな。』
しょっぴーは、少し申し訳なさそうにする。
たぶん、目も冷めてきて頭も回るようになってきたんだと思う。
「ううん、ありがとう。今度一緒にご飯食べに行った時…」
『え?まじ!?』
俺が言い終わる前に、しょっぴーのキラキラした声が聞こえる。
お礼にしょっぴーとのご飯の約束をして電話を切る。
そいつは夜の間に徘徊しているらしい。
ちょっと、外出てみようかな…
それで、外に出てみたらふっかさんがいた。
表情を歪ませたふっかさんが。
「…っ!ふっかさん!」
心配で、ふっかさんに駆け寄ろうとすると、後ろに、男がいた。
ストーカー?
いや、違う……
「…てめぇか!!」
逃げようとする男。
絶対に逃がさねえ!!!
ふっかさんのことを置いて走る。
ごめん。
優先すべきはふっかさんなんだけど、ちょっと、止まれそうにない。
“恋愛感情だけを奪う”。
ふと、しょっぴーの説明が頭の中を巡る。
…こーじは、恋愛感情を奪われた?
それから、俺らの距離が変わった……
こーじのあれは、そういう…?
相棒だからとか、ちょっとふざけてとかじゃなくて…
俺に、本気で…?
……俺は…どうなんだ…?
たしかに、こーじのことを嫌いじゃない。
むしろ、特別だと思ってる。
でも、これは恋愛感情なのか…?
そもそも、その感情はどんな感情?
分からない。
特別と、その感情は違う気がする。
でも、こーじはずっと本気で…
(ザニガニって…なんか可愛いな…)
「……?」
過去に、こーじに対して抱いた感情を思い出す。
可愛い…?
そうだ。
こーじは可愛い。
そんなこと知ってる。
dominatorとの戦いの時もそうだ。
一刻も早くこーじのところに行かないといけないって思った。
俺が、守らなくちゃって…
今だってそう。
こーじの恋愛感情が奪われたとして、こんなに焦るか?
だって、ぶっちゃけ俺には関係ないことじゃん。
でも、こんなに焦ってる。
身体が先に動く。
「……岩本くん…起きてるかな…」
この感情の、ヒントが欲しい…
(岩本視点)
「送ってくれてありがとね。おやすみ。」
ふっかを家まで送り届けて、俺も家に帰ろうと思う。
でも、その前に言わないといけないことがある。
「ふっか…」
少し、怒った表情を作ってふっかの名前を呼ぶ。
多分、何言われるかわかったんだろ。
ふっかは、顔をひきつらせる。
「お前、まさかこれから夕飯とかないよな?」
「…あはは…いやぁ…まさかねぇ?」
圧をかけるように、ジト目で見つめる。
ふっかは、視線をキョロキョロさせながらわざとらしく笑う。
言い逃れ出来ねぇぞ。
はぁ、とため息を吐いて、ふっかの頭に手を置く。
そのまま、ポンポンと頭を撫でてやる。
「ほんとに、心配だからさ。これからは気をつけるようにね。」
「……ぇっと…それだけ…?」
ふっかは、驚いたように目を丸くする。
もっと怒られると思ったんだろうな。
「そりゃ怒りたい気持ちはあるよ?でも、今は安心のが大きいから。」
それを伝えたら、ふっかの顔が一気に真っ赤かになる。
え?何その反応?
ちょっと待って…!
「……お、おやすみ…」
「…ん…」
想定外の反応に、最後はちょっとぎこちない別れ方になった。
いや、わかんねぇ…!
あの反応…可愛すぎるだろ……
「あれは、反則だって……」
プルルルル
「…目黒から?」
こんな時間に、目黒から電話なんて珍しいな…
「もしもし?」
『あ、岩本くん…今、大丈夫?』
電話越しの目黒は、走ってたのか分からないけど、少し息が切れてた。
「何かあった?」
『うん…ちょっと、聞きたいことが…あってさ…今から、会えない?』
今から…
相当急いでるな。
「わかった。どこに行けばいい?」
『…今、雪谷公園の近くにいるんだけど…』
「今から行くね。ちょっとまってて。」
目黒からの急な誘い。
何かあったってことが伝わる。
急いで行きたいけど、寝巻きだと悪いよな。
着替えてから、すぐに向かおう。
「…岩本くん!ごめん、こんな時間に…」
俺が来たことに気づくと、すぐに駆け寄ってくる。
「全然いいよ。何があったの?」
今は、目黒の話を聞くのが1番だ。
「実は…」
目黒から聞かされた話は、康二に対する感情だった。
それに、恋愛泥棒に会った…?
じゃあ、ふっかを助けたのは目黒か。
そこ、ちゃんとお礼しないとな。
後で詳しくふっかからも話を聞こう。
俺から言えること…
目黒は、あえて俺を頼ってきた。
「…目黒はさ、康二とどうなりたいの?」
なら、俺から言えることはこれだよね。
(目黒視点)
「…目黒はさ、康二とどうなりたいの?」
岩本くんに投げかけられた質問。
どう、なりたい…?
俺は、こーじと…
「…まだ、難しいよね。焦んなくていいよ。ゆっくりでいい。」
岩本くんは、そんなふうに言ってくれる。
たしかに、焦っててもいい結論が出ないことが多い。
俺の場合、ほとんどがそうだ。
俺は、感情的になると一直線でしか動けなくなる。
そのせいで、上手くいかないことが多い。
こーじと2人でやってた時期も、俺は突っ走ってばっかだった。
だから、いつも1人で突っ込んでって、怪我したらこーじに怒られてたな。
でも、今は止まりたくない…
「岩本くんは…ふっかさんのこと、どう思ってるの…?」
恐る恐る質問してみる。
俺らは、岩本くんがどうやってふっかさんを救ったのか知らない。
何となく、触れちゃいけない気がしてるから。
でも、知りたい。
俺の感情に、繋がる部分がある気がするから。
「どう、思ってるか…か…」
岩本くんは、少し悩む素振りを見せる。
言いづらいことなんだろうな。
きっと、全部を話してくれない。
そんな感じがする。
それでも、知りたい。
俺は、知りたいんだ。
好奇心もあるかもしれない。
2人の関係性が好きだからかもしれない。
でも、何よりも…
この感情に、名前が欲しいから。
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