テラーノベル
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「俺、リョウのことずっと前から好きで一番大事だから…これからも一番大切にする。絶対に会えないって状況にはしないでくれ。どんなお前も俺が支えるし救い上げる、必ず」
自分の頬が熱を持つのは決して芋焼酎のせいではない。
熱を確かめるように、指先をそっと頬に当てると
「ぶっ…そっちか」
颯ちゃんが少年のように笑う。
「…そっち……?」
「熱いの確かめたんだろ?俺‘夢?現実?’とかって頬っぺたつねるのかと思って見てたから」
愉しそうに笑って肩を揺らす颯ちゃんを見てると、私も愉しくなる。
「支えると言ったが、何も辛い時だけ一緒にいるんじゃない。楽しいことも全部一緒にして、リョウは俺のリョウになるんだ。今からゆっくりと俺のことだけを考えるようになって‘颯ちゃん、好き’って言う」
えっ…今のは私の真似……?
「似てなさすぎて…一生懸命聞いてた話が頭から出ていっちゃった」
「はぁーあ?俺の一世一代の告白を一瞬で忘れたと?」
「颯ちゃんが悪い。変なモノ真似するから」
「お前が自分で似てないと思うだけで、人から見たら絶対に似てるんだよ」
さっきのは絶対に違うでしょ…そう思うけど、これ以上颯ちゃんに口で勝てるはずもない。
「颯ちゃん、ずっと手紙で会いたいって…電話でも会いたいって言ってくれていて……私も颯ちゃんに一番会いたくなったよ」
颯ちゃんが口を開こうとしたとき
purururu………私のバッグの中から聞こえてきた。
見てみると
「佳ちゃんだ…」
颯ちゃんは、自分は何も言ってないという風に首を横に振りながら、手で出ろと示す。
「はい、佳ちゃん」
‘リョウコ、今どこ?’
「どこって…」
‘颯佑と会えたか?’
「え…颯ちゃん…?」
‘颯佑は何も言わなかったけど、昼飯も抜いてひたすら自転車を組み立てて、時々時計を見て…自分の台数だけ終えると‘出る’とだけ言って出たら、リョウコに会いに行ったと思うよ。ちゃんと会えたか?’
返事に困って颯ちゃんを見ると、何となく話がわかっているのだろう。
彼は小さく
「佳佑はリョウを傷つけない。大事にし過ぎるほどだから大丈夫だ」
そう言った。
「佳ちゃん」
‘うん?’
「会えたよ、颯ちゃん来てくれた」
‘良かったな、リョウコ。リョウコが頑張ったから会えたんだ’
「…ありがと……佳ちゃんにも今度会える?自転車忙しいの終わったら来て…東京なんだけど」
‘近いな、行く’
スマホを当てた右耳から佳ちゃんの声が聞こえ、左耳からは颯ちゃんの特大舌打ちが聞こえた。
舌打ちした颯ちゃんの長い腕が伸びてきたと思うと、スマホが抜き取られる。
即座に通話終了を押した彼は、そのまま自分の横に私のスマホを置いた。
「本当は電源を切りたいが、それは…もしおっちゃんや忠志くんから電話があった時に心配かけるからな」
そう言い、座ったまま一度大きく伸びをした颯ちゃんと
「出ようか?北川先生に申し訳ないほど遠慮なく飲み食いしちゃった」
「だな。何もかもうまかった。リョウと一緒だからうまい」
「結構飲んだよね」
「さすが持ってる肝臓が違うな。半年ぶりでも酔いそうにないな」
「肝臓とか言わないで…何か嫌だ」
帰り支度をしながら話をする。
個室を出る前に私のスマホを返してくれた彼は、そのまま私を抱きしめた。
「リョウ…本当に好きだから、俺」
「…うん」
「もうリョウも、半分以上俺のことを好きだと思うぞ」
「半分…以上?」
「俺だから夜中に電話できて、俺だからこうして会えたんだから…リョウ、俺に腕回して」
私は半分以上颯ちゃんのことが好き…その言葉が頭にぐるぐるしたまま、スマホを持った手ともう片方を颯ちゃんの背中…いや、腰かな?にそっと回した。
コメント
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思わず口もとが緩み、笑みが溢れて、うるうるニマニマ🥹 佳ちゃんの颯佑とリョウコを思う気持ちににもあたたくなる♡ᩚ