律の背中に支えられるようにして、華は一歩踏み出した。
震える膝を必死に堪えながら、父の鋭い眼差しを正面から受け止める。
「……お父様」
声はかすれていたが、すぐに力を込めた。
「私はここで働き続けたいです。
失敗もして、迷惑もかけてしまうかもしれません。
でも、必ず成長して、自分の力で人を喜ばせられるようになりたいんです」
泰三の眉がわずかに動いた。
「“桜坂家の娘だから”ではなく、ひとりの桜坂華として、ここで頑張りたい。
どうか、それを認めてください」
必死に紡がれた言葉が、会長室に静かに響いた。