テラーノベル
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「全部なくなって、知らない土地へ来て……ひとりだったのでしょう?」
「……そうですね」
ほんの少し考えてから、ナディエルは頷いた。
「最初の頃は、寂しかったです」
過去の自分を思い返すように、静かに紡がれる言葉。
「ですが、ブリジット様には随分と面倒を見ていただきましたし、セドリック様にも色々と教えていただきました。旦那様も、身寄りのない私が困らないようにと気にかけてくださいました」
ナディエルはそこで、ふっと懐かしそうに目を細めた。
「お嬢様がこちらへいらっしゃることになった時、旦那様から専属侍女を命じられたのも、私が弟や妹の世話をしていたことをご存知だったからではないかと思うんです」
「そうだったの?」
「はい。……もちろん、旦那様からそのように伺ったわけではありません」
くすりとナディエルが笑う。
「……ですが、あの頃の私にとって、お嬢様のお世話を任せていただけたことは、とても有難いことでした」
「ランディが……」
「あの方は、そういうことを決して口にはなさいませんから……あくまでも私の勝手な想像なのですけれど」
そこでナディエルはリリアンナを見つめた。
「だから私にとってお嬢様は何にも代え難い大切な存在です」
「私が?」
「はい」
ふふ、とナディエルが笑う。
「今はお嬢様のお傍が、私の居場所です」
あまりにも迷いなく言い切るものだから、リリアンナは何も言えなくなった。
「旦那様がおられて、お嬢様がおられて。ブリジット様もセドリック様も、お城の皆さまもいてくださる」
ナディエルは胸の前でそっと両手を重ねる。
「皆さまが、私の大切な家族になりました」
その言葉が、じんわりと胸に染み込んだ。
――居場所。
リリアンナにも、その言葉の意味はよく分かる。
両親を失い、いきなり家に乗り込んできた叔父一家のもとで肩身を狭くして暮らしていた頃には、自分の居場所などどこにもないと思っていた。
そんなリリアンナを受け入れてくれたのも、この城だった。
ランディリックがいて、ナディエルがいて、ブリジットやセドリックがいて。
いつの間にか、ここが掛け替えのない〝我が家〟になっていた。
「……私も同じ」
「お嬢様も?」
「私にとっても、みんなが大切な家族だから」
そう言って笑うと、ナディエルの目元が柔らかく綻んだ。
「でしたら、私とお嬢様は……」
「血は繋がっていないけれど……私、ナディのこと、本当のお姉さんみたいに思ってる」
「……お嬢様」
ナディエルの目が、わずかに潤んだ。
「だからナディも、私の家族よ」
「……はい」
二人で顔を見合わせて、どちらからともなく笑った。
ひとしきり笑ったあと、リリアンナは自分のお腹へそっと手を添えた。
――ここに、もうひとり新しい家族がいる。
まだ姿を見ることも、声を聞くこともできないけれど、いつかこの子も、ナディエルにたくさん世話を焼かれるのだろう。
それはきっと、とてもとても幸せなことだ。
「ナディ」
「はい?」
「この子が生まれたら、抱っこしてあげてね」
ナディエルは一瞬きょとんとして、それからとても嬉しそうに微笑んだ。
「もちろんでございます、お嬢様!」
#ギャップ
ひより
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#三角関係
霞花怜
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夕凪ゆな
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コメント
2件
血の繋がりより大切なものがあるよね。
ナディエルの「お嬢様のお傍が、私の居場所です」っていう台詞、すごく刺さりました……。血の繋がりじゃなくて、積み重ねてきた時間と想いが家族を作るんだなって。リリアンナが「本当のお姉さんみたい」って言った時のナディエルの表情が目に浮かんで、じんわり温かくなりました。最後の赤ちゃんの話も、未来が広がってて幸せな気持ちに。家族っていいなあ、って思える回でした🤍