宣言通り早起きをしてランニングに行った俺は、久々に健康的な一日を過ごせた。今日の儀式は夜から。
時間はまだまだある。……何をしようか。
「何も考えてなかった」
フランクやジュリーは今別々の儀式に出ていて、スージーはまだ寝てる…他のキラーに話し掛けれる様子は未だ無し。さて、どうしたものか。俺が悩んでいた矢先、あの声が頭上から響いた。
《おはよう、リージョン。今朝は早いな。》
俺たちをここに連れて来た張本人である邪神、エンティティが俺に話し掛けた。
一体何だと持ち前の変なプライドで反抗しそうになるが、コイツに逆らえば命が幾つあっても足りないと直ぐに察し、大人しく話を聞くことにした。
《早速だが、キラー達を私のところまで連れて来てくれ。》
「どうしてですか?」
《紹介したい者がいるのだ。分かったら早くしろ。》
紹介…ってことは新キラー?これは急がなくては!俺は寝ているキラーを殺されるのを覚悟で叩き起こし、エンティティの所まで連れて行った。
「ジョーイ…こんな朝早くから、ふわぁ…一体どうしたの?」
あくびをしながらスージーがそう言う。相変わらず能天気だなぁ…あざといと言うか、何というか。
「新キラーが来るらしいぞ。多分だけど」
「多分で起こしに来ないでよ〜」
「でもエンティティ本人が言ってたんだぜ?例え嘘だったとしてもプラマイゼロ!な?」
「うーん…分かったぁ〜…」
理解の早い奴で良かった。数分も経たず、エンティティは姿を表し、本当に新キラーを連れて来ていた。
《紹介する。》
「っ!」
奴には頭は無く、代わりに三角の形をした鉄をかぶっていて、キラーには似つかわしく無い白の服を着ている。そして何より目立つのがあの大鉈。ではなく俺はそいつの体型に目がいってしまった。
その鉈を振り回すのに相応しい逞しい腕、服の上からでも分かる胸筋、スリットが入った所からはみ出た脚はしっかりとしていて見惚れてしまう…俺もこんな風になれたら。
と思っていた矢先、彼と目が合ってしまった…気がした。だって奴には目がないから。俺の勘違いだと思うが…。何故だろう、一瞬ドキッとした自分に首を傾げたくなる。
でも、あんな俺の理想みたいな奴が現れるなんて…!早速話しかけて、どんな風に鍛えてるのかとか聞いてみようかな?
《彼の名はエクセキューショナー。喋れないが言葉は分かる。仲良くしてやってくれ。》
その瞬間俺には、恐ろしい課題を突きつけられた気がした。“話せない”なんて聞いてない!俺はこれからどうしたら…どうやったら強くなってみんなから慕われるキラーになるんだ?
《では世話役を…トラッパーに頼もう。》
「いっつもこき使いやがって…落とし前は付けさせてもらうからな!」
《分かっている。》
「…エクセキューショナー、ついて来い」
トラッパーがそういうと、三角頭はズルズルと鉈を引きづりながら彼の後を歩いて行った。
《以上だ。各自自室に戻るなり儀式に行くなりしてくれ。》
エンティティがそういうと皆はそそくさと部屋に戻って行ってしまった。しかし、三角頭の事が忘れられず俺はそのまま棒立ちしてしまった。
「……イ!ジョーイ!!」
「!な、なんだ!?」
「ボーッとしてどうしたの?」
スージーが俺に話しかけてやっと我に帰った。
「あ、いや…なんでも」
「そう?速く戻ろ、私眠たくなって来ちゃった」
「嗚呼…」
三角頭が話せないなら、俺が話しかけたところでどうにもならないな…。しかも初対面。
いきなりどうやって鍛えてるのか聞くのは流石に気持ち悪すぎる。
他に、あの三角頭の体型と似てるようなキラーに少し話しかけてみよう!きっと何かいいアイデアが生まれるはず!
「よし!」
「(ジョーイ楽しそう。良かった良かった)」