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#白血病
しらすのお部屋
ーー病室。
重い沈黙が流れる。
「白血病」
「レウコイド因子」
大我の言葉が残る。
永夢は視線を落とした。
思っていたよりも、状況は複雑だった。
レウコイドは倒した。
だが、終わったわけではない。
自分の身体には、まだ二つの問題が残されている。
しばらくして。
永夢が口を開いた。
「……白血病は」
全員の視線が向く。
永夢は真っ直ぐ飛彩を見る。
「どのくらい進行しているんですか」
飛彩は手元のデータへ視線を落とした。
「戦闘前と比較して、それほど悪化はしていない」
永夢がわずかに息を吐く。
飛彩は続けた。
「レウコイドによる異常増殖が止まった影響だろう」
「少なくとも、今すぐ命に関わる状態ではない」
貴利矢が肩の力を抜く。
「それは朗報だね」
大我も小さく頷いた。
「だが安心はできねぇな」
その一言で空気が引き締まる。
「白血病細胞は残ってる」
「今後も治療は必要だ」
永夢は静かに頷いた。
それは理解している。
むしろ、その程度で済んでいることが幸運なのかもしれない。
飛彩がカルテを閉じる。
「抗がん剤治療を継続する」
「そして、根治を目指すなら骨髄移植だ」
永夢が小さく呟く。
「骨髄移植……」
貴利矢が頷いた。
「白血病を根本的に治療するなら、有力な方法の一つだな」
「一度今の骨髄をリセットして、新しい骨髄を作り直す」
だが。
大我が低く続けた。
「だが今回は事情が違う」
飛彩がモニターへ視線を向ける。
「お前の骨髄には、レウコイド因子が残っている」
永夢の表情が曇る。
「GVHDのリスクが、あるんですね 」
「ああ」
短い返答だった。
その一言だけで十分だった。
永夢は視線を落とし、飛彩もまた何も続けない。
しばらく黙っていたパラドが眉をひそめた。
「待て」
全員の視線が向く。
「俺にも分かるように説明しろ」
「結局、何がまずいんだ」
貴利矢が苦笑した。
「簡単に言うとさ」
「新しい骨髄を入れても、レウコイド因子が邪魔するかもしれないんだ」
「邪魔?」
「ああ」
大我が頷く。
「せっかく移植した細胞が定着しねぇ可能性がある」
飛彩も続けた。
「それだけではない」
「免疫反応が異常に強くなる危険性もある」
パラドが怪訝な顔をする。
「つまり?」
貴利矢が肩をすくめた。
「体の中で大喧嘩が始まるかもしれないってこと」
大我が淡々と言う。
「最悪、移植そのものが失敗する」
沈黙が落ちる。
永夢の指先がわずかに動いた。
飛彩は真っ直ぐ永夢を見る。
「白血病を治療するためには、骨髄移植が有効だ」
「だが今のままでは危険性が高すぎる」
一拍置いて続ける。
「レウコイド因子は現在、増殖していない」
「だが骨髄の中に潜伏している」
「移植された細胞への干渉」
「異常な免疫反応」
「GVHDの増悪」
「予測不能な反応を引き起こす可能性がある」
静かな説明だった。
だが、その重さは全員に伝わっていた。
大我が腕を組む。
「要するに」
「骨髄移植をしたせいで、逆にエグゼイドが危険になる可能性がある」
永夢の表情が固くなる。
飛彩が結論を告げた。
「だから」
「白血病の根治を目指すなら」
「まずレウコイド因子をどうにかしなければならないということだ」
病室が静まり返る。
病室に重い沈黙が落ちる。
貴利矢が苦い顔で呟いた。
「しかも厄介なのはさ」
「前例がないんだよね」
永夢が顔を上げる。
貴利矢は肩をすくめた。
「白血病細胞とバグスター因子がここまで複雑に絡んだ症例なんて聞いたことない」
その言葉に。
永夢の指先が、わずかに動いた。
視線が落ちる。
自分の体を見る。
「……そんな……」
かすれた声。
胸の奥が、ざわつく。
永夢が小さく呟いた。
「……じゃあ」
かすれた声。
「どうすれば……」
誰もすぐには答えられなかった。
今、全員の前にある問題は。
白血病だけではない。
レウコイドが残した”爪痕”だった 。
その時だった。
腕を組んでいたパラドが、ふと口を開く。
「……前例がない、か」
貴利矢が顔を向ける。
「ん?」
パラドは少し考えるように視線を逸らした。
そして。
「昔も似たようなことがあっただろ」
飛彩の目が細くなる。
「何を言いたい」
パラドは静かに答えた。
「ゲムデウスだ」
その瞬間。
貴利矢の表情が変わる。
「――あ」
小さな声。
だが確かな反応だった。
大我も視線を向ける。
パラドは続けた。
「ゲムデウスウイルス」
「人類じゃ対処できなかった」
「でも――」
視線が貴利矢へ向く。
「お前とゲンムが治療法を作った」
貴利矢の目がわずかに見開かれる。
記憶が蘇る。
あの戦い。
命を削りながら完成させたガシャット。
そして。
「……ドクターマイティXX」
思わず呟いた。
病室が静まり返る。
パラドは頷いた。
「そうだ」
「ゲムデウスウイルスに順応して」
「それを利用して抗体を作った」
病室が静かになる。
飛彩は黙ったまま考え込んでいる。
大我が低く呟く。
「なるほどな……」
貴利矢がゆっくり顔を上げる。
「つまり」
「レウコイド因子に対しても同じことができるんじゃないかってこと?」
「ああ」
パラドは即答した。
「レウコイド因子を解析する」
「そして」
少しだけ視線を落とす。
「対抗できる抗体を作る」
永夢が小さく呟く。
「そんなこと……」
だが。
そこで飛彩が初めて口を開いた。
「可能性は0ではない」
全員の視線が向く。
飛彩はモニターを見つめている。
「レウコイド因子も、元を辿ればバグスターウイルス由来だ」
「その抗体を生成できる可能性はある」
貴利矢が苦笑する。
「相変わらず無茶苦茶な話だな……」
大我も鼻で笑った。
「最初からまともな症例じゃねぇだろ」
永夢が顔を上げる。
「でも」
「ドクターマイティXXは、最終的に黎斗さんが完成させたんじゃ……」
病室が静かになる。
確かに。
あれは普通のガシャットではない。
ゲムデウスウイルスへの抗体を作るために生み出された、特殊なガシャットだった。
「黎斗さんがいない今、同じことなんて――」
だが。
貴利矢が小さく笑った。
「いや」
肩をすくめる。
「ガシャット製造なんて無理って話でもないだろ」
永夢が目を瞬かせる。
貴利矢は続けた。
「データは残ってる」
一拍。
「神が残したものがな」
病室が静まり返る。
大我が呆れたように眉をひそめた。
「お前、本当にあいつのバックアップ漁ってたんだな」
「だって使えるもんは使わないと損じゃん?」
貴利矢が悪びれもなく笑う。
飛彩は小さく息を吐いた。
「確かに」
「檀黎斗が残したデータは、今もCRに保管されている」
永夢がゆっくり顔を上げる。
「じゃあ……」
パラドが腕を組む。
「ゲムデウスワクチンを作った時のプログラムも残ってるはずだ」
貴利矢が頷く。
「そいつを応用すれば」
「レウコイド因子に対抗できる抗体を作れるかもしれない」
病室の空気が、わずかに変わる。
今まで見えなかった出口が。
ほんの少しだけ、見え始めていた。
コメント
2件

初コメント失礼します!! エグゼイドの二次創作作品で一番すきですほんとに!! つばささんの表現方法が好きですこれからも結末を楽しみに愛読させていただきます😭😭😭
いや、待って待って。めちゃくちゃ重い回だった……! 永夢の白血病とレウコイド因子が両方残ってるってだけで「どうすんだこれ」ってなったけど、パラドがゲムデウスの時みたいに抗体作ればって繋げたの、天才かよ。黎斗さんのデータを貴利矢が漁ってたってオチも「使えるもんは使う」精神で最高だわ。医療設定の重みと希望の配置が絶妙すぎて、つばささんの構成力に痺れた🔥