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第23話「深淵の戦場」
夜の空に爆発の閃光が走り、瓦礫の影に無数の銃口が向けられる。
ゼインは身を低くし、瓦礫の間を駆け抜けながら敵の陣形を観察していた。
「碧族反応、確認。目標を包囲。排除を開始する。」
ヴェール・バインドの通信が耳元で響く。
黒い強化装甲を纏った兵士たちは、アンチ・フラクタル兵装を構え、ゼインのフラクタルを封じる準備を整えていた。
「……へぇ、やる気満々ってわけか。」
ゼインはフッと笑い、手にした銃型のフラクタルを構える。
青白い光が銃身を走り、彼の瞳に戦いの興奮が宿る。
「なら、こっちも楽しませてもらうぜ。」
🔹 一瞬で決まる勝負
「撃て!!」
隊長の命令と同時に、銃声が響く。
だが、次の瞬間にはゼインの姿が消えていた。
「なっ——!?」
兵士が驚く間もなく、ゼインの足が地面を蹴る音が響き、彼の拳が兵士の腹にめり込んだ。
《オーバーライド》発動——
ゼインの視界には、兵士たちの装備のコードが浮かび上がる。
「……制御、解除。」
彼が指を弾いた瞬間、兵士たちの銃が暴走し、弾丸が誤射する。
混乱する敵陣の中で、ゼインは次の一手を仕掛けた。
「……遅ぇんだよ。」
彼の身体が低く沈み、跳躍と同時に兵士の頭部を蹴り上げる。
そのまま反転し、もう一人の兵士を銃のグリップで叩き伏せた。
「速すぎる……っ!」
ヴェール・バインドの兵士が叫ぶが、その声が終わる前に、ゼインの肘が彼の頬を貫いた。
——バキッ。
隊員が吹き飛び、ゼインは微かに笑った。
「……次はどいつだ?」
🔹 ヴェール・バインド隊長との対決
「……フラクタルを無効化しても、この速さか。」
ヴェール・バインドの隊長が、アンチ・フラクタルブレードを抜く。
それは碧族のエネルギーを遮断し、ゼインの力を封じるための特別な武器だった。
「フラクタルなしじゃ、さすがに勝てんだろう?」
隊長は冷静な視線を向けるが、ゼインはゆっくりと歩み寄りながら、笑みを浮かべる。
「……フラクタルがなくても、俺は強いぞ?」
隊長がブレードを振るう瞬間、ゼインの姿が消えた。
「!? どこに——」
気づいたときには、ゼインの拳が隊長の腹に突き刺さっていた。
「ぐっ……!」
骨の軋む音が聞こえる。
ゼインはさらに拳を沈め、隊長の意識が揺らぐのを感じた。
「悪いな、俺は”戦うのが楽しくなってきた”んだ。」
ゼインの膝蹴りがカウンターのように炸裂し、隊長の体が吹き飛ぶ。
彼が着地するより早く、瓦礫の影から新たな銃声が響いた。
🔹 戦闘後、ゼインの変化
ゼインは拳を握りしめながら、静かに息を整えた。
周囲には沈黙したヴェール・バインドの兵士たち。
血の匂いが鼻を刺す。
呼吸は荒くない。
身体はどこも痛くない。
だけど、心の奥が熱くなっていた。
「……戦うのって、悪くねぇな。」
ふと口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。
「はは……何言ってんだ、俺。」
ゼインは夜空を見上げた。
戦いに夢中になり、”戦うこと”そのものが楽しくなりつつある自分。
「……まだ、俺は大丈夫か?」
心のどこかで、その答えを探し始めていた——。